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騙し、騙され -その8 タイ・自称イタリア人編-

前回までのあらすじ
ぼくは、ひよこのぴぃだよ。みんなからは、からだがきいろいからきいろってよばれているよ。ぼくのおともだちのぽんくんとぱあちゃんとまちまでかいものにいくことになったんだ。うまくいけるかなぁ。


-自称イタリア人編-


コロナが騒がれ始め、バンコクがロックダウンされ街から次第に人も車も減っていった時期。
いつもは地面が見えないほど車で埋め尽くされている道路。
恐らくタイの渋滞といえば!でよく使われる場所。
カバーに使った写真は、まさにその日、その場所で撮った写真だ。
バンコクに来た事がある人ならあそこかと分かるかもしれないが、これが帰宅ラッシュがすでに始まっている夕方5時過ぎに撮った写真というのだから、ロックダウンにタイ人がどれだけ忠実に従ったのかが分かると思う。
真夜中や早朝でさえここまでにはならないであろう位までガラガラだ。
私もこんな状況を意外と楽しめるタイプなので、仕事帰りにこの状況を写真に撮っておこうと、大通りをまたぐ歩道橋の上からロバート・キャパのようにiPhoneを構えフォト・シューティングを楽しんでいた。

その私の撮影姿にほれ込んだのであろう。
きっと、あのプロカメラマンに頼めば素敵な写真を撮ってくれるだろう。
そんな会話がなされたはずだ。
男女のカップルに声を掛けられる。

「写真を撮ってくれませんか」

ホリの深い顔立ちの若い男女。
新婚旅行でもおかしくないであろう年代の二人である。
私の腕を見込んで頼んできたのだ、快く引き受ける。
彼らはスマホを渡してきた。
自分なりに構図を考え、車の少ない道路がうまく入るようにし、縦と横で数枚ずつ撮影した。
彼らは喜んでくれるだろうか。

「ちゃんと撮れているか確認してね」

しかし、彼らはその写真を確認することもせず私に質問してくる。

「私たちはイタリアから来た。このあたりにイタリアンのレストランはないか」

ん?イタリアから?
ホリの深い顔は、イタリアにも通ずるものがあるが…いや絶対中東やろ。
日頃からぼんやりしていると多くの方から大絶賛される私だが、渡されたスマホのカメラに表示されていたメニューの言語を見逃してはいない。
読めはしないが、アラビア語あるいはそれに類する言語だ。
イタリア語ではなかった。
もし、仮にイタリアからの観光客であったにしても、君が持っているそのスマホで調べたまえよ。
中々に新しい機種ではないか。
Googleというところに、君たちの言語で「おいしい イタリアン バンコク」とでも打ち込んでご覧なさいよ。
お店の写真に、星表示、みんなのコメントまで見れて良いお店を提案してくれるだろうよ。
それとも何かい?
そのスマホは写真しか取れないのかい?
私より若いのにスマホでの検索の仕方も知らないのかい?
と、水曜どうでしょう時代の大泉洋のような話し方になりそうなレベルだった。
それはともかく、一生懸命写真を撮ったのにその写真を確認してくれなかった事がフォトグラファーになり切っていた私のプライドをズタズタに傷つけていた。
そもそも、君たちそこから、一緒に食事をして何かを売りつけてきたり、ごはん代をおごらされたり、闇カジノに連れていかれたり、なんならワインに薬でも盛られて身ぐるみはがそうって魂胆だろ?
私は答えた。

「私は日本人だ。日本食しか食べないから日本食レストランしか知らない」

嘘である。
彼らの返答を待たずに、

「良い旅を」

そう告げて、ちょっとカッコよく彼らのもとを立ち去った。
嘘をついたのに。

その足取りは軽やかだった。
嘘をついたのに。


結論
タイにもスパゲッティというメニューがあるが、うどんのような給食に出てくるソフト麺のような麺にケチャップ味、もしくはトムヤム味などの激辛ソースがかかっているものがほとんどだ。
もちろんイタリアンのお店に行けばそれなりのものは食べられるだろうが、ペペロンチーノ系、トマトソース系、さらには和風のパスタまで結構作りこんだので、現地の材料だけで作れるのだ。
そして、自分で作ったパスタの方がその辺のお店に行くよりおいしいというのは秘密だ。

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