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ポンコツストーリー1 ー『ライフ・イズ・ビューティフル』に憧れてー

私はポンコツだ。

これは、謙遜でも卑下でもなく事実である。


ふと思うところがあり、幼少期の記憶がよみがえってきた。
昔のことを頻繁に思い出すのは、死期が近づいているからとかなんとか見た記憶があるが、まぁあまり気にせず書いていこうと思う。


小学三年生の時だ。

お調子者かつ飽きっぽい性格だった私は、授業中に近場に座っていた友だち4,5人にちょっかいを出したくなった。
世界人口のの98割が経験あるであろう、消しゴムを細かくちぎり、先生の目を盗んで友だちと投げ合う「消しゴム戦争」だ。
戦争というものは、歴史を見るとわかる通り、些細なことから始まりやがてどんどん過熱していくものである。
「消しゴム戦争」も、退屈な授業を乗り切るため、何となく始めたものだったが徐々に過熱してくる。
前に座っている友だちにカスを投げ、自分ではないというフリをしてシラを切る程度だったものが、だんだん笑いを我慢することができなくなってくる。
声を出さないようにしていた笑いが、クスクス笑いに、クスクスの声もどんどん大きくなっていくし、投げる動作も爪先で飛ばしていたものが、どんどん肩を使って投げるくらいまでになる。

当然先生に気づかれる。

今回の「消しゴム戦争」も先生に見つかり終戦を迎えた。
戦争に真の勝者はいるのか、という根源的な考えを持つこともなく、先生が勝者となり、敗者となった我々兵士は廊下で正座するようにという罰を受けることになった。
全員がお調子者であることを知っている先生は、我々を距離を置いて配置させた。
小学三年生が廊下で一列になり正座をしている。
全ての教室は授業中なので、廊下はとても静かだ。
反省するにはもってこいの環境である。
静かな環境の中で真摯に反省し、自分の犯した罪と向き合う。

廊下を誰かが歩いてくる。
用務員さんだ。
用務員さんは、我々が授業中でも何かの仕事をしているのだ。
私は、感謝の気持ちでいっぱいだった。
私の前を用務員さんが通過しようとしたとき、正座したまま頭をたれ、額を廊下につける。
そう、土下座謝罪の格好だ。
正座している友人たちもそれを見て、私に続く。

最初は感謝の気持ちだった行為なのだが、これが我々のツボにはまった。
次、誰か来ないかな。

来た!

見たことはあるが、知らない先生だ。

みんなでタイミングを合わせて土下座謝罪する。

また来た!
さっきの用務員さんだ。

みんなでタイミングを合わせて土下座謝罪する。

用務員さんもニッコリ。
それを見て私たちもニッコリクスクス。

また来た!
今度は校長先生だった。

校長先生、いつも朝礼でのお話ありがとうございます。(ちゃんと聞いたことないけど)
そんな気持ちで、今度は全員でタイミングを合わせて頭を下げる。
我々の前で立ち止まる校長先生。

「君たちは、なぜここで正座をしているんだい?」

「授業中にふざけてしまったからであります」

「何をしたんだい?」

「消しゴムをちぎって投げ合っていました」

「そうなのか」

外から声が聞こえてきたことに気づいたのだろう。
教室から先生が出てきた。
校長先生と一言二言、言葉を交わしていた。

「ついて来なさい」

校長先生に声を掛けられ、私たちはついて行く。

付いた場所は校長室

そこでソファーに座らせてもらい、暖かい緑茶を入れてもらって校長先生とお話。
柔らかい雰囲気の校長先生だったので、何を話したか覚えてはいないものの和やかな雰囲気の中お話できた記憶がある。
最後にがんばって勉強してね!って言われて、授業終了のチャイムと共に教室に返される。
校長先生と話をする機会って、中々ないので今思えば貴重な経験だったなぁと思う。


私は、大変な状況になった時でもその中で何か楽しめそうなことを見つけるのが好きだし、恐らく得意なことだと思っている。

そんな私の好きな映画は、

ロベルト・ベニーニ監督
「ライフ・イズ・ビューティフル」

有名な映画なので、見たことがある方も多いと思う。
戦時中のユダヤ人としてベニーニ監督自ら演じる父親と家族がホロコーストの時代を生きるという重い話になりそうなテーマを軽やかに扱った映画だ。
戦争やユダヤ人迫害を、あたかも横断歩道の白線から落ちたら死ぬ的なゲームだと言い聞かせて、乗り切ることを子どもに教える父親の姿がとても好きだ。
現実を教えたほうが良いという意見もあるだろうが、私は自分の性格からこの父親の生き方は共感できるし、子どもと同じ状況だったとしても父親にそのようにしてほしいと願う人間だ。


きれいな感じでまとめようとしたが、本当に大変な状況下で「ライフ・イズ・ビューティフル」の父親のようにできるか分からないが、そのようなセンスだけは持ち合わせていたいと思うのだ。
ポンコツだけど、ポンコツならではの良さを活かした生き方をしたいのだ。

そんな事をふと思い、小学生の頃のエピソードを思い出したので書き留めた。

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