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騙し、騙され -その1 自転車でぶつかるおじさん編-

私は小さいころから警戒心が強い。
自慢だが小さな頃から現在に至るまで詐欺、スリなどの大きな騙しにあったことがない。
色々思い出したので書き綴ってみる。


-自転車でぶつかるおじさん-

一番小さな頃の記憶は、小学3年生に遡る。
これまでみんなには内緒にしていたが、私にも小さなかわいい子ども時代があったのだ。

その日は、一人で自転車で走っていた。
交差点に差し掛かったところ、交差点の左から走ってきた自転車と出合い頭にぶつかった。
ぶつかったといっても、どちらもスピードは出していなかったので転ぶでもなくお互いの前輪が当たった程度のもの。

「大丈夫ですか?」

心のきれいだった少年は相手を気遣うことができるのだ。
私は

「大丈夫だよ」

そういう答えを期待していた。
だが、帰ってきた言葉は、前輪が当たっただけなのに自転車の後ろの泥除けがガタガタになったとか、なぜか後ろのタイヤがパンクしたとか、ハンドルがとか色々言ってくる。
言いがかりである。

イメージしやすくするために相手について細かく描写する。
古びた、というより確実に古い自転車に、自分でペンキを塗ったような汚い自転車。
ハンドルや後部の荷台に変な人形とか、袋とか色々なものをぶら下げている。
顔もすすけた感じ、服装も汚らしく、子どもながらに感じた印象はゴミの中から金目の物を集める感じの人。
いわゆるホームレスの一歩手前、いやホームレスだったかもしれないが、何しろそんなタイプの小汚い感じのおじさん。
幸い、臭いは覚えていない。

「嘘ばっかり言ってる。お金を出せとか言ってくるだろうな」

「でもお金がなくてかわいそうな人かもしれない」

まだかわいいお子さまである心の中でダークサイドとライトサイドの私がそれぞれの持論を展開する。

ちょっとすごんだような声で

「修理しないといけない。いくら持ってる?ポケットの中を見せてみろ」

きた!やっぱりだ。
ダークサイドの勝ちである。

大抵この年代の子どものポケットにはくだらないものとたくさんの夢が詰まっているものである。
とりあえず、ポケットの中に入っていた家の鍵やら小さなおもちゃやらを見せる。
小学生なので大した金額は持ってないが財布はあえて見せずに。
家の鍵についていたキーホルダーに興味を示すも、金目でないものだと思うと秒で興味を失ったようだ。

「これ修理しないとだめだなぁ。500円くらいかかるなぁ」

金のない子ども相手だが向こうも食い下がる。

その時、いくつかのことを同時に閃いた。
 〇友達の家が近くにある。
 〇友達の家の大人に助けてもらえるかも
 〇いや、この人なら自分の方が自転車で速く走れる
 〇振り切ってやるか

これをどう伝えたらいい。
小さな頭をフル回転させる。
まずはこれからだ。

「友達の家が近くにあるからそこでお金を借りられるかもしれない」

と切り出す。

「どの辺りだ?近いな。行ってみよう」

食いついてきた。

「じゃぁ行きましょう。ついて来てください」

最初はおじさんを気遣いつつゆっくりと。
少し走ったところから全速で!

スピードを上げて数秒後、後ろを振り返るともはや小さくなったおじさん。
迷路のように入り組んだ細い道、いくつも道が分かれているエリアに入り縦横無尽に走り回る。
振り返るともうおじさんの姿はどこにもない。
無事に逃げ切った。

これが最初の成功体験だ。

結論
逃げ足は速い。
これは後の陸上部としての礎を築くものとなった(かもしれない)

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