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人に甘えることは、良くないことなのか

ある日(というか2021年11月22日)、突然に無菌室での闘病がはじまり、私は病室から一歩も出られない身の上となりました。

コロナ禍で病院に不特定多数の人間を入れるべからずということで、Amazonなどへの発注なども禁止され、毎日15時〜16時の1時間だけ開かれる受付へ、誰かが私宛に差し入れをしてくれないと飲み水すらも断たれる、という状況。

一人暮らし歴、早20余年。

ほぼ全てのことを1人でやりおおせてきました。電球も自分で替えるし、虫も退治する。仕事に出ている間に洗濯物が雨に濡れれば黙ってもう一度洗うし、トイレが詰まったら業者を手配。地震が来たら1人で避難動線確認、オーブントースターが火を吹いたら1人でオロオロ。そして突然の入院宣告にもめげずに、1人で入院準備と手続き。

しかし、無菌室では無力

人に頼ったり甘えたりすることが苦手で、我慢することが得意だった私は、180度方向転換。人に甘えまくる生活が始まりました。

優しい仲間たちが「大丈夫?何か必要なものない?」と言って手を差し伸べてくれたら、その手をしっかりと握って「パジャマが欲しいよう」とか「お水が欲しいよう」とか「かっぱえびせんが食べたいよう」とか、しっかりと甘えました。「大丈夫!」なんてとても言える余裕はなかったし、優しく、そして力強く差し伸べてくれるその手を握り元気をもらいたかったのです。

人からもらった物、というのはその物体以上の価値があると私は思います。自分で買ったパジャマを着ている時よりも、誰かにもらったパジャマを着ている時の方が「あゝ、これ○○ちゃんにもらったパジャマだなぁ」と応援されている気持ちになります。身に付けるものだけじゃなく、化粧水やお菓子、本なども同様です。周りの友人知人が応援してくれている!と思うと闘病に前向きになることができます。

遠方に住む友人は、病院に届けることができないので、私の一人暮らしのマンションに送ってくれました。そこには看病のため急遽田舎から出てきた母が住み込んでくれています。母は、毎日のように洗濯物や必要な日用品などを持って病院に通ってくれているのです(感謝)。なので遠方の友人からのプレゼントは母が一旦受け取ることになります。

優しさに甘え続ける私に業を煮やしたように、数日前に母が言いました。

「あんた人に甘えるのもいい加減にしなさいよ。もう少し我慢したほうがいいんじゃない?」

その時は咄嗟に「人に甘える練習をしています」と答えて乗り切ったのですが(いや、乗り切れてはいない)、その後、考え込んでしまいました。

そうだ、甘えるのはいけないことだった。我慢しなきゃ…。え、でも我慢したら心身にストレスが出るな多分…。でも我慢しなきゃか…、甘えたらダメなんだもんね。

そこへ新進的な私がやってきました。

え、いいでしょ、甘えられる関係性がある人には甘えたって。今は甘える時でしょ、親切を受けたことを忘れずにこれから生きていけばいいじゃない。元気になったらいっぱい還元したらいいじゃない。甘えることの何が悪いの?我慢の何が美徳なの?そういう風に家庭や学校や社会で刷り込まれてきただけじゃないの?

戸惑う保守的な私

(保)え!?い、いいの!?甘えても…いいの?我慢しなくて…いいの?

(新)いいのいいの!今まで我慢しすぎて病気になっちゃったんじゃないの〜?無菌室の中で抗がん剤治療がんばってるんだから、いいじゃん、今は甘えようよ!周りのみんなはあなたが思ってるよりもずっと寛大で優しい心の持ち主たちだよ!

(保)え、そ…そうしようかな(ドキドキ)。でもォ〜…

と、ここへ我らがゲッターズ飯田が登場。

(保&新)そういうことだよ!

保守派の私と新進派の私は、手を取り合って頷きました。

甘えること自体が悪いわけじゃないお礼と感謝と礼儀を忘れると、それがよろしくない。相手はもしかしたらそんなもの求めてもないかもしれないけど、だから甘えっぱなしってのも人としてどうなのよと思う。大事な誰かが窮地に立たされたら(いや窮地ほどじゃなくても普通に困ってたら)、私は存分に甘やかします。甘やかされることのありがたみやパワーを今回痛感したのでどんどん還元したい。

我慢することは別に美徳じゃない。国語の時間に勝手に図画工作やられると秩序が乱れるから、そういう風に教育されてきたのです。自分のやりたいことを我慢して社会に貢献する方が生産性が上がるから、そういう風に刷り込まれてきたのです。人に迷惑をかけるのはよろしくないけど、迷惑のかからない範囲では我慢なんかしなくていい。むしろ我慢は体に毒。心にも毒。

そしてほんとに、ゲッターズ飯田はいつもいいタイミングで的確につぶやいてくれます。


P.S. 甘やかしパワーのおかげで白血病治療も第二クールが順調に終了し、明日から3泊一時退院です。







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