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「汁粉カレー」はいかがでしょうか

 詳しい時期は覚えていないが、現役時代のあるとき、ラジオを聴いていたら、みそ汁に牛乳を混ぜて食べる、いや、飲むというのか、とにかくそういう食事をするという聴取者の話を紹介していた。
 どういうわけでそんなふうにして食べるのかまではわからない(たぶん聞き逃した)が、これはかなり珍しい部類にはいるのではないだろうか。

 古い話だが、20年ほど前の平成14年11月2日付の産経新聞に、「タブーない驚きメニュー」という記事が載っていた。こういうことに人一倍興味のある私はそれをメモしておいた。そして、それがいまだにとってある。せっかくだから日の目を見させてあげよう。

 それによれば、チーズの大盛りを乗せたとんこつ味噌ラーメン、梅干しを乗せたチーズケーキ、バナナの天ぷらとクリームチーズとアロエをトッピングしたカレーうどん、すしの串揚げ、柿やパパイアが入ったオムライス、ラムロースの磯辺巻、枝豆ヨーグルトデニッシュ、奈良漬けピザトーストといった、変わり種の食品が次々に登場していて、しかも売れ行きがいいのだという。これがメモの内容。

 冒頭で紹介した牛乳混合のみそ汁もそうだが、新聞で記事になったメニューなどはもう奇食といってもいいのではないか。ちなみに、大辞林では「寄食」を「従来では考えられない食材や調味料を組み合わせて食すこと。ご飯にチョコレートを掛けるなど」と説明している。下手物とまではいかないと思うが、それの遠い親戚筋くらいのことは言えるのではないか。

 これらのメニューが斬新なのか邪道なのか判断しがたいが、世間が受け入れれば市民権を得られる。新メニューは一過性のブームで終わるのか、みそパンや焼きそばパンのように定着するのか。
 このみそパンや焼きそばパンにしても、素材の相性がよくて消費者に受け入れられたからこそ定着し、確固たる地位を築き、盤石の存在感を示すにいたっている。ジャムパンやクリームパンなども同様だ。
 新メニューは相性が勝負。相性が悪ければ万事アウトなのだ。

 回転寿司でも、寿司種に果物やチョコレートなどを使った、昔の寿司職人が見たら卒倒しそうな〝新種〟が登場して定着している。外国のレストランでは、和食と称していても、本来の日本食とはかけ離れたものがわが物顔で横行闊歩している例が少なくない。
 奇抜であろうと道を外れていようと、そういったものがいつしか市民権を得てしまうことは十分あり得るのが現実だ。

 企業は生き残りをかけ、大ヒットをめざして懸命の努力をしているが、個人営業の飲食店だって同じなのは言うまでもない。新聞に出ていた驚きのメニューは記事掲載からずいぶん時が経過しているが、その後も堅調であることを願うばかりだ。
 そのうちに、カレーと汁粉をドッキングさせた「カレー汁粉」、あるいは「汁粉カレー」なんかが登場するかも。いや、いくらなんでもそこまでは。

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