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赤飯につかう豆はアズキじゃないって?

 物事を誤解したまま覚えているくらいなら、いっそ知らないほうがいいということがある。

 友人と話をしていて赤飯の話題になった。友人は、「赤飯につかう豆は、本来はアズキではない」と言う。これにはびっくりした。私はこれまでずっとアズキだと思っていたのだ。
 さらに友人は、赤飯にはダイカクマメ(大角豆)をつかうのが正しいと言う。いったいどういうことなのか詳しく知りたかったがだめだった。友人は別の知人からその話を聞いたというのだが、詳しくは聞かず、そのまま受け売りしていただけだったからだ。
 私はそもそもダイカクマメを知らなかった。あとで調べてみたらササゲのことだった。

 友人は、その知人は強い口調で「赤飯にはダイカクマメを用いるのが正道」という趣旨のことを言っていたという。強い口調というからには、確信なり特別な思い入れなりがあるのだろう。
 とにかく、アズキは私の思い込みで、これまでずっと間違っていたのかと、唖然呆然愕然となったが、そんな話ははじめて聞いた。現に、近所でもどこでもアズキをつかっているではないか。

 いったいどういうことかと思いつつ、赤飯について調べてみた。
 「赤いアズキまたはササゲと、もち米を一緒に蒸しためし」(日本語新辞典)、「小豆またはささげを煮汁とともに糯米にまぜて蒸籠で蒸した強飯」(広辞苑)、「もち米に小豆を入れて蒸した飯。(中略)ささげを用いることもある」(ブリタニカ国際大百科事典)、「糯米を小豆とともに蒸したこわ飯」(大辞林)、「糯米にアズキを混ぜて蒸したご飯(後略)」(日本大百科全書)というぐあいだった。

 ほかにもいくつか調べたが、いずれもアズキが主役で、ダイカクマメが使われることがあったとしても代理や次点のような存在であり、私が調べた範囲では、ダイカクマメが正道のごとく記述してあるものはひとつもなかった。
 ただ、地域全体でダイカクマメを用いる地域もあるらしい。だが、少なくとも全国の標準でないことは確かのようだ。

 それにしても、友人の知人はどういう根拠でダイカクマメ主役説を唱えていたのだろうか。前述のように、地域全体で用いるケースもあるようだから、そういったところで生まれ育ったのだろうか。
 ま、なんにせよ、私が間違っていたのではなくてよかった。めでたいから赤飯でお祝いするか。

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