見出し画像

アメリカの大学食堂で働く人の休憩時間を観察してみた/アメリカ社会学留学

私のすきな言葉は、哲学者ヒルティの言葉、「真の休息は労働のさなかにのみ現れる」だ。

飲食のバイトをしたことがある人はわかると思う、あの辛さ。一つ一つの動作は特段難しくないんだけど、それを気が遠くなるほどに繰り返してゆくことの非人間さ。

アメリカの大学での学びは、授業中のディスカッションや、授業のためのリーディングには収まらない。毎日ご飯を食べにいく大学食堂では、たくさんの人種的マイノリティの人が毎日働いていて、その人たちとの交流や観察から、アメリカの社会のリアルが垣間見える気がするのだ。

休憩時間の使い方①:母国語での会話

人口比に対して圧倒的にアジア人と黒人が多い、というのが最初の印象だった。特に中華料理をその場で調理してくれる場所には、英語をあまり喋らないアジア系の従業員の人が多い気がする。アマーストの街自体は白人がとても多いはずなのに、大学の食堂で働いている白人は数えるほどしかいない。

そうなると、特に中国系の人たちは、母国語が通じる人たちで固まってご飯を食べながら休憩時間を過ごす。働いているときに英語を喋る時とは360度打って変わった、いきいきとした表情が印象的だった。

休憩時間の使い方②:窓の外を眺める

時々ハッとするくらいに絵になる休憩時間を過ごす人もいる。ある昼下がり、ご飯を食べていたら、流れゆく雲をただ眺めるヒスパニック系の従業員のお姉さんがいて、かりそめであっても、「労働の最中の真の休息」とはこれなんじゃないかとさえ思った。

休憩時間の使い方③:夫婦での時間

従業員の人と会話すると面白いのは、彼らは割と夫婦で働いているケースも多いことを知れることだ。例えば、私がいつも挨拶する台湾人のジョニーは、パートナーのサラさんと一緒に働いている。休憩時間が被ったら、一緒にご飯を食べているのを時々目にする。そして彼らの息子さんは確かカリフォルニアにいる、と言っていた気がする。

休憩時間の使い方④:親子での時間

親が大学食堂で働いていて、子どもがここの大学に通っているというケースもある。前しゃべった人は、子どもが看護学部に通っていると言っていた。休憩時間に一緒にご飯を食べる親子も目にすることがある。その多くは、移民一世の親と二世の子どもだ。

休憩時間の使い方⑤:完全オフ

目が合うと必ず笑顔で声をかけてくれるディズニーランドばりに愛想のいいお兄さんがいるんだけど、この人は意外にも休憩時間は完全オフ派だった。座ってるのが見えたので声をかけたら、笑顔だけどどこか疲れ切った弱々しい笑顔で手をあげていたので、もしかしたらこの人は私と同じでextroverted introverted(外交的に振る舞う内向的な人)なんじゃないかと思った。

ゆっくり休んでくれ〜と思いながらその場を後にした。ちなみに、このお兄さんが作る野菜炒めは世界一うまい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?