馬鹿さ加減

「名はスペンサーだ、サーの綴りは、詩人と同じようにSだ。ボストンの電話帳に 載ってるよ。《タフ》という見出しの頁にな」

僕はハードボイルドが好きでよく読むが、作中の主人公達はよくこんな台詞を口にしている。
彼らは、自分の「男性」を誇示せずにはいられない。
たいては、彼らが生きている世界ではそうすることが必要だからなのであるが、小説によっては男性誇示自体が目的になっているものもあって、おかしい。
男性誇示のことを「マチズモ」という。

僕も、これでも男らしく生きたいという願望は持っている。
ただ、日常的にそれを誇示する機会がない。
(機会があれば誇示できるのかと言われると、それはまた別問題なのだが)

そもそも何をもって「男らしい」とするのだろうか。
「男らしい」「女らしい」という区別や、ジェンダーという言葉の定義自体が論争になってしまう今の日本で「男らしい」を誇示することにどんな意義があるのだろうか。
誇示したければやはり三島のように肉体を鍛えるしかないのだろうか。

などと考えていて、昔、胃腸薬かなにかのCMでテーブルいっぱいに載った料理を食べきれずにギブアップした男に向かって安田成美が「オトコだろ!」と怒っていたのを思い出した。
そうだ。大食いは男らしいのだ。
これなら少し自信もある。

今日、コンビニにお昼を買いに出たところ、すごいものを見つけた。
「ペヤング ソースやきそば超大盛」だ。
仰天した。
とにかく大きい。少年ジャンプよりは小さいが、コロコロコミックよりは大きい。
男らしいので買ってみた。

中を見てさらに仰天した。
普通サイズが並んで2個入っているだけだった。

湯切りがうまくいかず、おいしくなかった。
男性誇示が流行らない理由と、自分の馬鹿さ加減が解った気がした午後であった。
本当に嫌になる。

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