小説:くだらない願い

自作の短編小説。よければ楽しんでみてください。

今日は妹の誕生日。久々に家族で盛大にやろうって話をして、
大きいホールのケーキも買ったし、チキンも買った。
妹も、上機嫌で友達を誘ったらしい。
だけど夕方、時間になっても誰も来ない。1時間、2時間と経ち、
妹も悲しそうにしている。
俺はこっそり2階の自分の部屋に行って、布団に戻る。
流石にこのまま夜を迎えてしまうのはあまりにも不憫だ。
居るのなら誰でもいい、神様、どうかお願いだから、
妹の友達の誰か一人でいい。うちに呼んでください。
俺の誕生日には誰も来なくていいから。そう強く願った。
こんなに本気で念じて願ったことは今までないと思う。

暫くすると、妹の友達が1人、訪ねてきた。お誕生日おめでとうって。
1階の玄関と居間から、楽しそうな声が聞こえる。
もしかしたら、神様が叶えてくれたんだろうか。
ちょっとだけ安心したら眠くなったので、そのまま布団で寝る事にする。

他の人からしたら、こんなのくだらない願いだって言うかもしれない。
けれど当時の俺からしたら自分の事よりとっても大事な願いだったんだ。
今となっては恥ずかしいし、なんだって思うところはあるけれど。

それから何十年も経って、妹も俺も独り立ちした。
もう一緒に住んでないし、あの時の家も、もう無いらしい。
あまり連絡もお互いに取らなくなったけれど、
当時は異様と言われても仕方ないくらい仲が良かった。

今度また、食事くらいには誘ってみようか。当時を思い出しながらでも。

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