小説:夕暮れの友達

自作の短編小説。よければ楽しんでみてください。

『こちらは、防災○○です。16時になりました。
 地域の方々。いつも私達を見守ってくださって、ありがとうございます。
 外で遊んでいる子どもたちは、はやく、おうちへ帰りましょう。
 今週の担当は……』

夕方の放送が聞こえる。段々と陽の光も夕焼けになり始める頃。
窓辺から、うちに来客が来る。

にゃーん。

鳴いた声の方を向くと、窓ガラスを引っ掻く黒猫。開けると待ってたかのように部屋に入ってくる。入ったのを確認したら、カーテンを閉める。

「今日はどんな用なんだい?」

黒猫を見つめると、こちらに向き直った。

「なぁに、今日は大した用ではないさ。ちょっと鴉へのお仕置きをね。
 近くの雑魚を食い荒らして『力』をつけたやつらしい。
 今までは大したこと無かったから見逃して居たんだと。
 期限は、いつも通り、夜までに。夜を超えたら手出ししづらいからな。」

ニヤッと笑いながら、俺に向かって手招きする。俺は黒猫の前に右手を差し出すと、
黒猫は慣れたように指を1本だけ爪を立て、俺の手の甲に傷をつけ、滲み出た血を舐める。すると、俺の手の甲には赤く光る魔法陣が浮かび上がる。

「さ、狩りの時間だ。今日はどうする?」
「まずは、そいつの居場所を探さないとだね。鴉になって、他のやつに聞いてみようかな。」
「雀になって誘き寄せる方が早くないか?」
「ダメだったらそうするよ。」

そのすぐ後、カーテンを翻し、部屋から鴉が飛び立って行った。
夜までは残り数時間。黒猫は窓辺に上がり、鴉を見上げている。

「大丈夫だと思うが、ダメそうなら手伝ってやるか。」

誰にも聞こえないような声で黒猫は呟く。

この記事が参加している募集

よろしければ、サポートをお願いします。頂いたものは、クリエイターとしての活動費として使わせて頂きます。