業界分析 〜化粧品〜

◻︎ランキング

①資生堂
②花王
③KOSE
④DHC
⑤ファンケル

◻︎世界ランキング
⑴ロレアル
⑵P&G・STローダー
⑶資生堂

業界全体の動向 〜国内は衰退傾向〜

マイナスの前提条件変化

◻︎人口減少×消費増税

食品・トイレタリー業界と似ているが、消費増税の煽りを受けやすいのは、さらにその奥の化粧品やビールなどの嗜好品関連。
消費増税により客単価が下がる傾向にある
その一方で、顧客は「低単価×高品質」を求めるため、商品開発が課題

「低単価×高品質」のための突破口

⑴インターネットの普及 ・・・人件費削減し低単価で商品展開可能に
⑵医療・食品業界の参入 ・・・富士フィルム、ロート製薬など
 業界の垣根がなくなり業界横断的になっている。
 ⅰ 競争激化 → 商品価格下落
 ⅱ 革新の可能性あり → 他業界からの参入=勝算OR売れる商品がある
   安くて高品質の革新的商品が生まれる可能性に期待

◻︎化粧品の販路

1 百貨店 
2 専門店
3 インターネット(EC)
4 ドラッグストア

個別企業

1 資生堂

経営層

会長は以前まで40歳前半と若かったが、大企業のトップが務まらなかったのか変更。資生堂の社長は数年前コロコロ社長交代しており、安定していなかった。

日本コカ・コーラの会長まで務めた人が資生堂トップに就いた。
味はペプシが評判が良い中で、コカコーラの方が圧倒的な売上を誇るため、
マーケティング・ブランディングが非常に上手いことが伺える。
今後この強みが出していければ、良い方向へ行くと予測。

売上

国内は8期連続減少。海外でカバーしている。
国内で如何に歯止めをかけて、海外で成果を残して行くかが勝負。

国内の今後

◻︎販路選択 ①インターネット、②ドラッグストア

①インターネット ・・・「わたしプラス」
「”バーチャル”(ネット)で”リアル”(美容部員が色々教えてくれる)を体験できる」という、〇〇×ITの融合の形となったサービスで、
非常に画期的で流行るとおもったが、手法がイマイチ良くなく、化けなかった。考え方はよかったが、やり方がよくなかった。
この辺りは、ファンケルやオルビスのような元々ネット販売に強い企業が打ち出せば面白かったかもしれない。

「わたしプラス」限定商品の「いぶき」は全然知られていない。
このサービスのメインユーザーはおそらく、
①20〜30代の働く女性
②三越伊勢丹・化粧品専門店
この辺りのターゲット層は外していなかったはずだが、惜しかった印象。

②ドラッグストア
・美容部員:しっかりとした知識で高価な商品を販売することに強みが働く
・ドラッグストア・・・顧客が勝手に選ぶ(低価格売れやすい)

ドラッグストアのメイン商材は化粧品よりもトイレタリー商品
化粧品単体でなく、化粧品と日用品を広く扱う、2位の花王の方が、ドラッグストアの販路は強い。

資生堂が得意としていた対面販売に置いて、百貨店や専門店は業界自体が衰退傾向、ドラッグストアの特色に対して美容部員の特性がマッチせずうまく対応できなかった。対面販売が得意にも関わらず、生かせる場がなくなり、国内はインターネットにうまく対応できない限り、八方塞がりになる。

◻︎利益追求

前述は「売上」の話だが、利益についても課題が見える。
2位のKOSEの売上/営業利益の比率に対して、資生堂は営業利益率が低い。
→コストがかかっている。経営力に課題。

▼コスト
1位 人件費(:平均給与)
業界内給与1位:花王(トイレタリー色が強いため一旦置いておく)
業界内給与2位:資生堂 42歳で692万円程度(管理職:課長以上の給与を抜いた額。一定役職以上になると2000万円など、メーカー内でも高すぎる。

1人あたりの人件費が高い + 美容部員が大量(国内1万人以上)
「絶対数×高単価」という人件費が横行している。

実際、数年前、大規模なリストラに至ったいるが、
これは一時的な対策であり、抜本的体質改善には至っていない。

▼未改善要素
・美容部員にiPad支給
 リストラしているのに支給。「初期コスト+毎月ランニングコスト」
↓なぜ?
適正人件費にすれば、利益が500億円から600億円にまでなると言われている。
↓おそらく(予想)
ミドル層の権限が強い可能性がある。
数億レベルは部長クラスで決済可能などで、役員決済に上がるハードルが高ければ、リストラという会社決定に対して矛盾する動きである、現場へのiPad支給という大コスト策をとる行動も納得がいく。

◻︎国内結論

得意な販路(百貨店・専門店)が衰退傾向にある中で、重要となるインターネット市場・ドラッグストアが苦手なため八方塞がり。

人件費改善などで、利益率追求が求められる中での動きが不安定

国内での期待は現状では見られない。

◻︎海外の今後

まず海外市場の考え方について

海外をひとまとまりに捉えることはできない(広すぎる・状況違いすぎる)
①中国、②中国以外のアジア、③アジア以外の海外 に分けて捉えるべき。

▼GDPで読む
1人あたりのGDPがどのくらいあるかで、何を買うかが大体わかる。

1人頭で約1500ドル → バイク
1人頭で約3000〜3500ドル程度 → 車、家電  この辺りが大量に売れる

▼中国の市場にも陰りが今後見える可能性
・バイクが売れておらず、車は買い替えが多い→売れるとGDPが上がるが。
一番売れているのは「化粧品」これはGDPが下がる予兆の指標とも言われている。

・ちなみに化粧品が売れる前は、デジカメがよく売れる。
家電と比べて優先度が低く、ある程度揃ってから買うものという立ち位置。
デジカメ企業の売上現象→行き渡ってきた→次は化粧品

数年間中国での数字は圧倒的成長を見込まれるが、その後の伸びが危険。

◻︎そうは言っても相対的に見れば、中国市場がキーポイント

過去からの将来の「縦軸」で見れば先々危険信号もあるのだが、
競合他社比較の「横軸」で見れば、中国を制することがポイントにも思える。

▼世界1位ロレアルが苦手な市場である
独占率が5、6% → 中国以外で展開している市場では市場独占率10%以下の地域が全然ない。

現状は資生堂も5、6%で差がついていない。
→中国に現状は「圧倒的なマーケットリーダー」が不在。
 狙うべき市場なのは経営幹部もわかっているはず。ここを制する企業が伸びることは明白。

①資生堂の中国戦略の推移

▼過去の中国戦略の失敗
8年前程の社長(1年程度で辞めたが)が失敗している。

・中国の捉え方の失敗

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中国は山間部と沿岸部では繁栄度が全然違い、沿岸部の方がGDPが跳ね上がるため、売れるものがこの2つの地域では異なる。

また、当時物流効率も悪い中で資生堂は進出し、整っていない中で何もかもをやろうとして一度失敗している。
さらには反日感情と戦略ミスのダブルパンチで、社長交代にまで陥る。

②資生堂の中国以外のアジア戦略の推移

従来の資生堂の海外販促戦略;
資生堂社員ではなく、現地で販売代理店を契約して販売していた。

画像2

→現地企業と合弁会社設立により、自社の製品販売のスキルを活かしながら、販路の活用が行えるため、合弁会社設立が吉となる。

③資生堂のアジア以外の海外戦略

「美」の発信の中心地は”フランス” ここでもプレゼンスを発揮したい
こういった背景からか、フランスの高級化粧品企業を数十億円で過去2つ買収している。買収企業を大切に育ててきたが、ロレアル社に300億円程度で買収交渉をしていた。→海外自体も需要はあり、伸びる余地はある


2 カネボウ

◻︎トピック
化粧品業界において「営業会社」という評判の立ち位置

◻︎過去技術力の低さの露呈
新商品で”白いまだら”のようなものが生じて、何千人裁判沙汰になった過去。社外秘の資料がマスコミに流れるなど、将来性は▲な印象。

優秀な人材も流出し、長期的な成長は困難に見える


3 KOSE

◻︎印象
非常に堅実で技術力が高い。機運を逃していない企業。

「海外にそんなに強くない」×「国内市場は低下」にも関わらず、過去最高益を出した年も。その背景は、勝負所のM&Aの成功など(2014年)

◻︎国内

カネボウが問題を起こした際の恩恵を最大限受けた会社。
営業会社のカネボウに相反して技術会社のKOSEは、雪肌精など高品質でしっかり需要キャッチに成功。

◻︎海外(中国)

堅実な戦略。過去困難な海外開拓の場合はすぐに引くなど、引き際も良い。
雪肌精の客層=日本の中間層
この中間層=中国で言う”まあまあな層”
そのため、中国戦略は「上海」に経営資源を集中させた(上手い戦略)

◻︎海外(アメリカ)

中国戦略がいい兆しの中、次に目をつけたのはアメリカ。
アメリカは2010年に失敗し、完全撤廃している。
技術会社というのもあり、当時販路獲得などに失敗していたが、
合理的な買収をきっかけに、ブランド力・販路のある会社を用いて販路獲得。製品力は高いため、チャネルが確保できれば今後も期待できる。


4・5  DHC、ファンケル

◻︎トピック
プラスの業界変化に乗っかっていて追い風。ドラッグストアにも商品あり。
→個別企業の戦略というより時代の流れの上にいる為、うまく行きやすい。

とはいうものの、個別企業の戦略からは良いところが見られない。
基礎数字(主力製品の売上)の安定で経営安定を図りつつ、応用数字(新商品やトレンドなど)でいかに持っていくかなのだが、ここがない。


6 POLAオルビス

◻︎トピック
POLAとオルビスが合体。数字が上がる戦略がよく取れており、経営が上手い印象。営業利益も全体的には成長が期待できる。

オルビスはPOLAと合体するまで赤字続きだった。
POLAに買収された後もオルビス単体では赤字だったが、改善。

◻︎POLAの凄さ

POLAは”化粧品の効力”を最大限出している。
化粧品の良さの判断軸はズバリ「美しくなるか」だとした時に、
一般消費者は、どの分量でどう伸ばすかなどの手順もわからず、適当に使っていると、製品の半分程度の効力しか活かしきれていないなどがザラである。

”POLA THE BEAUTY”という店舗に"POLAレディ"と呼ばれる女性スタッフがいる。プロがいつでもお手入れ・メイクアップをしてくれる。

これはいわば、「究極のリアル営業」ともとれる。
デパートの中にいても、デパート自体の分母が少なく、活かしきれない。

→化粧品の100%の効果を発揮できる→製品効果が高い→顧客が離れない
こういった前提を作り上げている。
また、顧客が POLAレディヘ紹介すると割引がなされるなど、紹介でうまく広げていく戦略なども仕組み化されている。

POLAは”リアル営業”に強かった。
その逆にあるのが”インターネット”である。「究極のバーチャル営業」
そこで、インターネットに強いオルビス社を買収したのではないか。
こうすると両社の強みを活かして、成長が見込める。

◻︎化粧品企業の成長期待

・KOSE
・ POLAオルビス

この2社には期待がもてそう。
以上が化粧品業界の考察だ。


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