【エッセイ】世界中の子ども達のクリスマスにはサイコガンダムを
≫ 拝啓 1988年のサンタクロースさま
拝啓 1988年のサンタクロースさま。
お元気ですか?
あれからもう何年が経ったでしょうか?
1988年4 月。
僕はお父さんを病気で亡くしました。
小学校2 年生の春でした。
それ以来。
僕は母親の大きな愛情のもと、母子家庭で育ちました。
しかし、今日の僕があるのは。
母親だけでなく、それまでたくさんの大人の「やさしさにふれて」のことです。
世界中には、たくさんのお父さん、お母さんがいました。
1988年のサンタクロースさま。
僕にとってアナタもその1人なのです。
そして、気付けば僕は。
2015年からアナタと同じサンタクロースになりました。
≫ クリスマスの思い出
クリスマスといえば、その人にとってたくさんの思い出があるだろう。
子どもの頃にもらったプレゼント。
学校でのクリスマスパーティー。
大人になってから過ごした恋人とのクリスマス。
良い思い出、悪い思い出。
きっとその思い出は人それぞれ。
そういえば。
昨年、2019年のクリスマスといえば。
僕は朝から。
ちくわ2 本しか食べずに過ごしていた。
これも思い出になるか。
そんな僕にとって。
一生、忘れられないクリスマスがある。
どれだけ家族と過ごしても。
どれだけ友達と過ごしても。
どれだけ恋人と過ごしても。
クリスマスの思い出といえば。
1988年のクリスマスが思い出される。
≫ 1988年 クリスマス
1988年4 月15日。
小学校2 年生に上がってすぐ。
僕はお父さんを病気で亡くした。
末期の胃ガンだった。
当時、お父さんは37歳、オカンは32歳。
若すぎるぜ、まったく。
お母さんは、オカンになったけど。
お父さんは、オトンになることなく他界した。
それ以来。
ぼんじりは、オカン、姉、僕、妹の4 人、母子家庭で育った。
そして。
どんな状況であれ。
どんな子どもにもクリスマスというものはやってくる。
§
1988年のクリスマス。
正直いうと、4 月からそれまでの記憶って何もない。
悲しみに打ちひしがれていたのか。
何もなく普通に暮らしていたのか。
良くも悪くも、全く覚えていない。
そんな中、クリスマスがやってきた。
早朝、母親が玄関に出ると。
玄関のドアノブにビニール袋がぶら下がっていた。
現在では、有料のあのビニール袋だ。
シンプルで白いそれには。
ただ、絵本と、ガンダムのプラモデルが入っていた。
手紙も何も添えられることもなく。
絵本は妹に。
ガンプラは僕に。
ということだろう。
母親は困惑するも、喜び。
僕たちは不思議にも、喜んだ。
実をいうと。
僕は喜びながらも。
ちょっとガッカリしたのは内緒である。
§
当時、僕たちの間で流行っていたのは。
SDガンダムの「BB戦士」というシリーズのプラモデル。
ガンダムが2 頭身になった、可愛くもカッコいいプラモデルだった。
しかし、サンタさんがくれたのはそれではなかった。
そのBB戦士の裏で発売されていた「元祖SDガンダム」というシリーズのやつだ。
正直、この元祖SDガンダムはあまり人気ではなかった。
ってか、今思ったら、何が元祖なんかも分からん。
元祖って何やねん、元祖て(笑)。
何に対しての元祖やねん(笑)。
包装紙を開けて出てきたのは元祖。
その時点でちょっと僕は。
「え?」
って、なっていたのだが。
さらに入っていたのは。
サイコガンダム
だった。
説明がめんどくさいのでシンプルにいうと。
サイコガンダムは敵側のガンダム。
主人公が乗るガンダムじゃないやつ。
小学校2 年生の男子が欲しくない方のやつ。
「え?」ってなる方のやつ。
2 度目の
「え?」
だった。
ともあれ、予期せぬプレゼントというのは。
中身がどうあれ嬉しいものだった。
何より、どこかの誰かが。
母子家庭になった我が家を思ってのプレゼント。
これを「やさしさ」と言わず何と言うのだ。
≫ チルドレン・スタンダード
僕はあのクリスマスの日。
人の「やさしさにふれた」。
人の「温かさを知った」。
これが今の僕を作っている。
それからもたくさんの大人たちが。
時に僕のお父さんとなり、時に僕のお母さんとなってくれた。
世界中には、たくさんのお父さんと、お母さんがいた。
だからこそ。
僕はチルスタを大切にしている。
あ、チルスタって何かって?
ぼんじりが言うところの、チルドレン・スタンダード。
通称、チルスタ。
バンドのハイスタみたいでカッコいいやろ(笑)?
要は、子ども基準で世界を考えるってこと。
この世界は大人が作り、大人が回している。
だけど大切なのは。
その世界を子ども達に受け継ぐことなんじゃなかろうか。
子ども達こそ、未来の宝である。
子ども達を守らなければならない。
子ども達を殺してはならない。
子ども達を自殺させてはならない。
子ども達に世界が美しいことを教えてあげなければならない。
これが、僕が常に生活する上での基準。
チルスタである。
あのクリスマスのおかげだ。
§
最近は、厨二病(中二病)という言葉がある。
ちょっと人をバカにしたような言い回しに使う。
いわゆるネットスラング。
僕はきっと周りから見れば。
幼稚、稚拙、ガキっぽい、ピーターパン症候群など。
きっと厨二病と思われているだろう。
自分でもそう思う。
そして、それでもいいと思っている。
子ども達の目線に立って物事を考える。
そうある為には厨二病ぐらいでちょうどいい。
むしろ。
僕は厨二病なんかではなく。
小学校2 年生だった、あのクリスマスから。
ずっと小二病なのかもしれない。
≫ 追伸 1988年のサンタクロースさま
追伸 1988年のサンタクロースさま。
アナタのおかげで僕は。
立派かどうかは分かりませんが。
無事に大人になれました。
2015年には息子が産まれ。
毎年、アナタと同じサンタクロースをしています。
オカンはアナタのことを。
「もしかしたら○○さんかなぁ?」
と、思ったみたいですが、真相は分かりませんでした。
何にせよ、アナタの「やさしさにふれて」。
僕はこの世界の美しさを知りました。
それは一生のクリスマスプレゼントになりました。
本当にありがとうございます。
あ、そういえば。
アナタは1989年のクリスマスにも。
同じようにプレゼントを玄関にかけてくれましたね。
中身を開けてみて驚きました。
そこには。
また。
元祖SDガンダムのサイコガンダム
が入っていました。
全く同じやつ(笑)。
まさか3 度目の
「え?」
が用意されているとは(笑)。
そんなオチ。
サイコすぎるやろ(笑)。
でも。
本当にありがとう。
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