35 シューベルトを母に歌わす冬の薔薇
句集「むずかしい平凡」自解その35。
この句、とくに解説もいらないですよね。
冬の薔薇が咲いている。母がシューベルトの歌を歌っている。歌は上手いかどうか、それは想像におまかせ。ちょっと音痴ぐらいのほうがいいですかね。まあ、シューベルトと冬の薔薇というのはちょっとつきすぎ、と俳句の先生なんかには言われそうです。
でも、シューベルトはつきすぎでもいいじゃないかって思います。旋律に憂いがあり、ふっと明るくなるかと思うと暗くなり、シューベルトの音楽はとても内面性の深いものがあると思います。なにやら、孤独や寂寥を友にしているような響き。
ときどき、心が沈んでしまうときは、あえてシューベルトの音楽を聴くことがあります。特に好きなのは、ピアノ曲。即興曲集もいいし、ピアノソナタもいい。
とことん沈んだところに、きっと冬の薔薇が咲いているんじゃないかと、そんなことを思います。
べたな句ではあるけれど、捨てがたかくて句集に入れた次第。
たぶんこの句を作った時、けっこう気分が沈んでいたのかもしれません。
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