20 人体に直線はない晩夏光

 句集「むずかしい平凡」自解その20。

 「人体に直線はない」なんていう感覚にどうやって至ったのか、今となっては思い出すこともできません。

 夏の終わり、夕刻、シャワーでも浴びて、自分のすこしたるみかけてきた体を鏡で見ながら、そんなことでも思ったのだろうか。

 美しい女体の曲線美を眺めながら、などということはないので念のため。でも、そんなちょっとエロティックな場面を想像してもらったほうがちょっと面白く読めるかもしれませんね。

 「晩夏」という季節が好きですね。「初夏」もいいけれど、「晩夏」には終わりゆく夏の、微妙な感傷を呼び起こすような響きがあります。そしてすでにどこかに秋の気配があって、去りゆくものを惜しむ気分が内包されていような。夏休みの終わりごろの、はやく宿題やらなくちゃ感、も入り込んできます。

 「直線はない」というフレーズをどう解釈するか。そこは想像にお任せしたいところ。

 ただ最近の世の中、ものごとが直線的に進められ、直線的にゆがめられている、そんな感想を持っています。

この句を読み返して、そんな自分の潜在的な思いに今気づいたところでした。

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