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旅と私のちょうどいい距離感

この夏、色々な偶然が重なって約3週間の夏休みをいただき、ポーランドとチェコへ一人旅に行ってきた。

思えば、コロナ渦を経て初めての海外旅行だ。ポーランドもチェコも、コロナで行けていなかった場所だから、実に4年越し、ついに念願叶ってという感じでわくわくする一方、ちょっとドキドキもした。コロナ前は最低でも1年に1,2回は海外旅行をしていたから、こんなに長い間海外旅行をしないのは初めてだったのだ。もともと一人旅が好きで、できるだけ長く1つの場所に留まって、のんびり暮らすように旅をするのが好きなので、3週間思う存分ゆっくりし、羽を伸ばすことができた。

ところで、今回は3週間旅行したわけだが、これは自分史上最長記録である。社会人になって取れる休みとなれば1週間、長くても10日といったところだから、それを考えると今回の旅は本当に長い。「まだ半分ある」、「まだ3日ある」という感じで、旅がなかなか終わらないというのは初めての感覚だった。ゆっくり時間をかけて旅をしたい私にとってはまさに嬉しい悲鳴だったわけなのだけど、そこでふと、「もしも『このまま好きなだけ旅を続けてもいいよ』と言われたら、私は旅を続けるだろうか?」と考えた。そして割とすぐに、「ノーだな」と思い至った。

私は海外旅行が好きで、就活の時などは「夏休みに海外へ行けるくらいの休みが取れそうか?」を重要視していたくらいだ。それくらい私は旅行が好きで、ワークライフバランスを考える上でも欠かせない要素の一つになっている。その旅を、好きなだけ続けていいのだ。願ってもいないことなのに、なぜ「ノー」だと思ったのだろう。

思うに、私にとって旅は、「始まりと終わりがあるもの」で、日常から切り離された時間であることが大事なんだと思う。旅を旅たらしめるために必要なこと、とでも言えるだろうか。

私にとって「旅」とは、仕事とか友人関係とか、そういう「社会的な私」からスポッと抜け出して、身一つの私になる、そんな時間だと思っている。
モノや人との関係からしばし離れて一人になり、自分自身を見つめる時間。それは、海に深く深く潜っていくようでもある。自分の心の中に、静かに、ゆっくり、まっすぐ、そして深く潜る。そして色々なことを感じ、考える。やがてまた海面へ、日常へ戻っていく…。
そうやって区切りがあるから、いつか終わりがあるものだからこそ、旅という時間が、かけがえのないものになるのだと思う。

だから、旅をしながら生きることが普通になってしまうと、旅に日常がくっついて境目がなくなり、非日常ではなくなってしまう。それはもう、私にとっての「旅」ではないのだ。

私は旅をすることがとても好きだけど、それに毎日身を浸して生きるようなものではないんだと思う。今回長い時間をかけて旅をすることで、旅が大好きだけど、大好きだから、終わりがあるべきものなんだと気が付いた。

だからこうして、たまの休みに好きなところへ行って、のんびりする。
それが、今の、旅と私のちょうどいい距離感かな。


写真は、ポーランドのボレスワビエツという街で撮ったものです。私はポーランドの食器が好きなのですが、その生産地がボレスワビエツだということで、ずっと行ってみたいと思っていた街でした。この写真は、中心地から少し離れたところにある陶器工房へタクシーで向かうときに撮った一枚です。

1日もあれば十分回れるくらいの小さな街ですが、小さな花がそこかしこに咲いていて、ただの団地すらパステルカラーでとてもかわいらしく、ゆったりとした時間が流れるとても居心地の良い街で、結局1週間くらい滞在しました。それでも全く飽きず、まだこの街にいたいなと思ったほどです。不思議と心にじんわり染み入ってくるような、そんな優しい街でした。


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