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『メジャーリーグをぶっ飛ばせ!』感想

《映画情報》

公開 1992年

時間 108分

配給 東北新社

監督 トミー・リー・ウォーレス

 これらの情報はVHSのパッケージに基づくものであり、IMDdのものとは異なる。補足するとこの映画はテレビ映画であり、アメリカでも映画館での上映はされていない。

《あらすじ》

 マリナーズのベテラン選手兼任監督スパーキーは思わぬ形でケガをしてチームを追い出された上に破産して全てを失う。そんな彼のもとに訪ねてきたのはロシア・スポーツ省の関係者、彼らはソ連崩壊直後のロシアの野球代表チーム監督になることを提案する。嫌々ながらロシアに向かったスパーキーはあまりにも劣悪な練習環境に嫌気が差すも選手やチームの関係者と交流を重ねることで考えに変化が生まれる…

《全体の感想》

・奇抜な設定と基本に徹した展開

 全体的に致命的な欠点はなく、十分楽しめる要素は揃っている作品。ストーリーは「個性的なメンバーが揃う弱小チームを鍛え上げる」「傲慢な主人公が指導者という立場を通して精神的に成長する」という王道的な展開で万人受けしやすい。奇抜な設定ながら良くも悪くも癖がなく、後腐れがないハッピーエンドの娯楽映画。

・登場人物が活きるストーリー

 登場人物の経歴や性格を活かしながら、ストーリーに影響を与えている点が良い。選手関係者共に個性豊かなロシア野球代表チームは見ていて愛嬌が沸いてくる。アメリカとロシアという2つの国の人間を描いた恋愛ストーリーは、スパーキーのロシアに対する心境の変化と合わせて見るとより楽しめる。

・アメリカとロシア

 前述の話と少し重なるが、アメリカから見たロシアのイメージ、逆にそれを利用したシーンも多いので、そこを意識しながら見ると面白い。例えば他の映画でもよく見られるが「貧乏な(旧)共産主義国家」というイメージを利用したシーンは随所に見られる。個人的にソ連と関係が深くアメリカとは仲の悪いキューバと対戦する際に、ロシア人選手がアメリカを連想させるヤンキースのキャップを被っていたシーンは印象的だった。

・スポーツ映画として肝心な部分が物足りない

 マイナスポイントは野球映画なのに試合のシーンで演技が躍動感や迫力に欠けるところ。ズームやスローなどカメラワークや編集などの工夫もあまり見られず、終盤の重要な場面で緊迫感を与えきれていなかったように感じる。音楽がチープな印象を受け、あまり心に残らないのも少し残念。

《細かい感想》

・3人のロシア人

 個人的に3人のチーム関係者が印象に残ったので細かく書く。1人目はスポーツ省の職員で野球代表チームを担当するターニャ、2人目はマネージャーであるミロフ、3人目はコーチのボロノフ。

 この3人が同じロシア人でありながらそれぞれ違う性格を持ち、その性格や自分の立場を活かして以下のようにチームの変化へ影響を与えている点が個人的に1番話を良くしていたと思う。

・ヒロインのターニャ

 ターニャは「変わっていく国を良くしたい」という思いを持つ若いロシア人女性で『ソビエト連邦から生まれ変わった国に希望を持つロシア人』として描かれている。ヒロインでもある彼女がスパーキーに与える心理的な影響は大きく、間接的に『チームの雰囲気』に変化を与えている。

・チームの鍵を握るミロフ

 ミロフは情報通かつ、裏市場など金銭的な話に強い『ステレオタイプなロシア人と対照的なロシア人』として登場する。この年代のアメリカ映画の視聴数が多いわけではないが、このようなロシア人が登場するのは珍しく感じる。彼はその金銭感覚を活かして『チームの練習環境』に変化を与えている。

・頑固だけど憎めないボロノフ

 前述した2人と対照的に『古い考えに拘る保守的なロシア人』なのがボロノフ。政治面で彼の意見が出ることはないが、ソ連と深い関係にあったキューバとの協力で作られたマニュアルに徹底的に拘る頑固者。決して悪人ではないが、頭の固い彼の指導によって『チームの実力』が停滞していた。しかしながらチームを良くしたいという気持ちは本物で憎めない人物。

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