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パンの価格が上がる!?ケニアで今起こっている財政法案に対する政府VS市民の取り組みをまとめてみた。

ケニア政府は、2024年財政法案(Finance Bill, 2024)を通じて国家財政の健全化と経済成長を図るべく、さまざまな税制改革を提案しました。

しかし、この提案に対して市民の強い反発があり、首都ナイロビを含む各地でデモ活動が行われ、逮捕者も出る事態になっています。現在、いくつかの重要な税金提案が撤回されています。

本ブログでは、ケニア政府の財政方針と2024年財政法案の概要、デモの背景と内容、そしてデモ後に実施された変更点について現地ニュースを整理してみました。

政策の変更とその背景を理解することで、ケニアの未来の経済動向を見通す手助けとなれば幸いです。


ケニア政府の方針・予算

ケニア経済は2023年の最初の3四半期で5.6%の成長を示し、世界および地域の平均を上回りました。

2023年および2024年の成長予測は5.5%であり、民間セクターの成長、サービス部門、農業、BETAを支持する政策措置によって牽引されています。

この様な環境の中、ケニア政府は、2024年財政法案を通じて3,020億ケニアシリングの追加歳入を目指し、年間総収入を3兆3,432億ケニアシリングに引き上げることを計画しています。

ウィリアム・ルト大統領の政権下で行われたケニア・クワンザ議会グループの会議では、財政計画と市民の生活費上昇に対する懸念が議論されました。

政府は、インフレ圧力に対応し、公共の反発に対処するためにいくつかの税金提案を見直すことを決定しました。

特に、パンに対する16%の付加価値税(VAT)、モバイルマネー送金、食用油、自動車に対する税金が含まれます。

これらの変更は、国民の負担を軽減し、経済成長を支援することを目的としています。

2024年財政法案の概要

2024年財政法案は、ケニアの財政政策における主要な変更点を含んでいます。

デジタルコンテンツの収益化、環境税(エコ税)、そして社会健康保険基金(SHIF)への拠出金の税控除など、さまざまな変更が盛り込まれています。

具体的には、デジタルサービス提供者の税率が引き上げられ、アルコール飲料の物品税計算方法がアルコール含有量に基づくものに変更されました。

また、年金制度が税免除対象となり、退職後の貯蓄を奨励する措置も導入されました。

特に生活に影響を与える増税項目

デモの内容と背景

ケニア国民は、2024年財政法案に反対するためにナイロビの街頭でデモ活動を行いました。

特にモバイルマネー送金、食用油、自動車、パンなどの基本的な必需品に対する新しい税金提案に対して強い反発がありました。

6月18日(火)の朝、警察はデモを違法と宣言し、数十人の抗議者を逮捕しました。

これには、デモ主催者や人権活動家も含まれており、デモの主催者は「Occupy Parliament」と名付けたデモ活動を通じて議会に圧力をかけようとしました。

ケニア法曹協会(LSK)は、警察の干渉を非難し、違法な指示に対して法的措置を警告しました。

このデモ活動は、市民の生活費上昇に対する不満を反映しており、政府に対する強い圧力となりました。

デモ実施後に起こった変更点

デモ活動の結果、ケニア政府は2024年財政法案のいくつかの議論を巻き起こしている条項を削除することを決定しました。以下が具体的な変更点です。

  1. パンの付加価値税(VAT): 16%のVAT提案は、市民の強い反発を受けて撤回されました。

  2. モバイルマネー送金サービスの税: 銀行や金融機関、携帯電話サービス提供者による送金サービスの既存の税率を維持することが決定されました。

  3. 自動車税: 自動車の価値に基づく2.5%の税提案が撤回されました。これは実現可能性と消費者およびビジネスへの悪影響を考慮したものです。

  4. 食用油に対する物品税: 価格の安定性と家庭の経済負担を考慮し、食用油に対する物品税の提案は撤回されました。

  5. 社会健康保険基金(SHIF)の税控除: SHIFへの拠出金が税控除対象となり、医療プログラムへの参加を促進するための措置が導入されました。

  6. エコ税の調整: エコ税は輸入品のみに適用され、地元生産品は対象外となることで、おむつや生理用品の価格上昇を避けることができました。エコ税は完成品にのみ適用され、タイヤや自転車、三輪車(トゥクトゥク)なども除外されました。

  7. VAT登録閾値の引き上げ: VAT登録閾値が500万ケニアシリングから800万ケニアシリングに引き上げられ、中小企業の税負担が軽減されます。

  8. 電子税請求書管理システム(eTIMS)登録の免除: 1百万ケニアシリング未満の売上高を持つ農家や商人はeTIMS登録を免除されることが決定されました。

  9. 輸入オートバイや他の商品に対する物品税の維持: 輸入オートバイ、プラスチック、玉ねぎ、ジャガイモなどに対する既存の物品税率が維持されました。

  10. アルコール飲料の物品税計算方法の変更: アルコール飲料の物品税はアルコール含有量に基づいて計算されるようになります。これにより、ビール製品が安くなり、スピリッツが高くなる見込みです。

  11. 年金制度への税免除: 年金制度が税免除対象となり、退職後の貯蓄を奨励する措置が導入されました。

  12. インターン教師の雇用: 政府は46,000人のインターン教師と20,000人の追加教師を雇用する計画です。

  13. デジタルコンテンツの収益化: 収益を生むクリエイティブ作品のみが課税対象となるよう、デジタルコンテンツ収益化の範囲が拡大されました。

  14. 雇用ベネフィットに対する税の削除: 公務員の雇用ベネフィットに対する税の除外提案が削除されました。

  15. デジタルサービス提供者の税率引き上げ: デジタルサービス提供者の利益率が高いことを考慮し、推定利益率が20%から10%に削減されました。

  16. 航空機部品のVATの削除: 航空機部品に対するVATの提案が削除されました。

KPMGとBowmansの分析

KPMGの分析によると、2024年財政法案はインフレ圧力を考慮し、多くの変更点を取り入れています。

特に、生活必需品に対する新しい税金提案の撤回は、市民の生活費を抑えるための重要な措置とされています。

また、社会健康保険基金(SHIF)の税控除や年金制度の税免除など、長期的な経済成長を支援するための措置も評価されています。

KPMGは、これらの変更が国民の負担を軽減し、経済成長を促進することに寄与すると指摘しています。

Bowmansの分析では、デジタルコンテンツの収益化やデジタルサービス提供者に対する税率引き上げが注目されています。

特に、デジタルサービス提供者の推定利益率を20%から10%に引き下げることは、公平な税制度を維持するための重要な調整とされています。

また、エコ税の適用範囲を輸入品のみに限定することで、地元生産品の競争力を保護する措置も評価されています。

Bowmansは、これらの変更がケニアの経済環境を改善し、持続可能な成長を支えると結論付けています。

まとめ

2024年財政法案の調整は、市民の声に応える形で行われ、公平で経済成長を支援する税政策を目指しています。

ケニアでは増税と物価高などで人々の生活が苦しい状況にあります。これまでの新政府の方針により一般の人々の生活は本当に苦しめられてきたという事実があり、フラストレーションはピークに達しつつあります。

我々、外国人も例外でなくワークパーミット(労働許可証)の突然の値上げなどで対応を迫られてきました。

ケニア政府は、経済成長と国民の生活費負担軽減を両立させるために、財政政策の見直しと調整を続けてもらうことを期待します。

政府はケニア国民の信頼を取り戻し、平和的にケニアの持続可能な経済発展の実現を祈るばかりです。

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