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ウクライナ情勢、ロシア少数言語の保護にも影響

こんにちは。チュヴァシ語も研究するタタール語講師の boltwatts です。私は、「イデル=ウラル通信」というブログで、ロシア中部・沿ヴォルガ地域のメディアの記事を日本語に翻訳し掲載しています。詳しくは以下をご覧ください。


「訳者の視点から」コーナーでは、訳した記事に対する私自身の考えや、原語の面白い表現などを紹介しています。

今回紹介するニュースはこちらです。

ニュースの要約

ウクライナ情勢の影響で、チュヴァシ情報サイト Чӑваш халӑх сайчӗ が資金難に陥り、存続の危機に立たされています。管理人のニコライ・プロトニコフさんは、チュヴァシ語の保護・振興に消極的なチュヴァシ共和国政府の代わりに、チュヴァシ語辞書の電子化や、チュヴァシ語コーパスの整備、チュヴァシ語でのニュース配信などを行ってきました。サイトの運営は彼自身の収入によって賄われていますが、収入が著しく減ってしまい、ジャーナリストへ支払うお金や、サーバー費に充てるお金が足りなくなる可能性があるとのことです。

訳者の感想

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、西側諸国は対ロシア制裁を発動。ロシア国民の生活は困窮すると予想され、少数言語の保護・発展にも暗い影を落としつつあります。チュヴァシ情報サイトは、チュヴァシ語の保護・発展に大きく貢献してきました。電子化辞書コーパスがなければ、訳者はチュヴァシ語を学ぶことも、研究することもできなかったでしょう。金銭的支援はロシア国内からしかできないようなので、私は管理人のニコライさんに、チュヴァシ語でお礼と励ましのメッセージを送ろうと思います。

面白い表現

Малашлӑх пирки калама вара хӗнтерех.
Malašlăx pirki kala-ma vara xĕn-terex.
今後 について 話す-(不定形) 難しい-(比較)
「今後について話すことは(というと)、さらに難しい」

vara は、前の部分がトピック(話題)であることを表わします。この例では、「今後について話すこと」がトピックで、それが vara によって示されています。他のテュルク諸語にも似たようなものがありますが、形は全く違います。お隣のマリ語(ウラル系)では、全く同じ形の vara が、同様にトピックを示すために用いられることがあります。

前回とりあげた比較級の接尾辞には、-rax/-rex という短い形だけでなく、-tarax/-terex という長い形もあります。どちらが付くかは、単語の最後の子音によってある程度傾向があります。詳しくは、拙稿「チュヴァシ語における /r/ 始まりの異形態と /t/ 始まりの異形態の交替について」をご覧ください(今月中にこちらのサイトにアップされる予定です)。この研究をする際にも、ニコライさんが作っているコーパスを使用しました。

(トップ画像の出典:https://chuvash.org/news/31193.html)

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