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日本シリーズ第7戦よりもアツい。GLIM SPANKYのライブは大阪を燃やした

2023年11月5日、日曜日。大阪は燃えていた。プロ野球日本シリーズは、大阪に本拠地を構えるオリックスバファローズと阪神タイガースが激突。4勝先取で日本一が決まるシリーズで、第6戦を終えて3勝3敗で全ては第7戦で決まる。その運命の日、私は京セラドーム近くのとある場所にいた。そこは、誰が何と言おうと日本シリーズよりもアツかった。

遡ること1年前。私は名古屋にいた。2022年12月3日、名古屋市公会堂大ホールで行われたGLIM SPANKYの「Into The Time Hole Tour 2022」に行くハズだった。正確に言えば、私は兵庫県から名古屋市公会堂の目の前まで行ったが、当日券の5,000円が現金で払えず涙をのんだ。唇をかんで公会堂を後にする光景は、今でも鮮明に覚えている。

1年前は壊滅的にお金が無かった。それなのに、異常なまでに行動欲があった。手元には一銭もないが、兵庫県から名古屋へ車を飛ばす。高速代はETCで払いガソリン代はクレジットカードで支払う。銀行口座は底をついているのに。目星のレコード屋に近い駐車場は、夜間の最大料金が400円だった。「安い」。何も考えずに駐車した。これが運の尽き。手元には400円が無い。どうにか工面できないかと、数時間頭を悩ませたが万事休す。

車に積んでいたipod touchを地下鉄を乗り継いで名古屋のハードオフに売りに行った。売却価格は4,000円。その足でレコード屋向かい、ジャマイカ産のレゲエのレコードを1,500円で買った。残るは2,500円。「駐車場代を払っても昼食代は残る」。そう思っていたが、現実は甘くなかった。駐車場に戻り目を疑った。精算機には2,500円と表示されているのだ。夜間の最大料金は400円なのだが、朝の8時以降はジャンジャン課金され、私のipod touchは儚く溶けていった。

御託を並べたが、名古屋遠征の目的はGLIM SPANKYのライブだった。「大人になったら」という曲をどうしても生で聞きたかった。だが、社会人3年目の25歳独身男性とは思えない程に金が無く、ライブにたどり着くことが出来なかった。大学を卒業して仕事をして5,000円を払えない日が来るなんて、夢にも思わなった。いつかリベンジしよう。必ず。そう思い続け、2023年11月5日を迎えた。

GLIM SPANKYのライブは難波の味園ユニバースで行われた。開演前、未開の地である心斎橋のレコードタウンへ向かった。お目当てのお店は5店舗。3時間かけてお店を回ったが、1枚も円盤を買わなかった。心揺さぶられるレコードはあった。浅川マキのサイン入りのライブ盤、ブルーハーツの段ボール盤。去年の私なら絶対買っていたであろう。それなのに、何も買わずに店を後にしたのは何故なのか。金が無いだけなのか。円盤への愛が冷めてしまったのか。レコードを大都会で買いたくないという昔からのポリシーが邪魔をしているか。理由は今も分からない。

GLIM SPANKYのライブは最高だった。「Velvet Theater 2023」は通常のアルバムリリースツアーとは毛色が異なり、万人受けしないライブだと松尾レミは言った。未発表曲を演奏し、アルバムの7番目か8番目の曲を演奏する。新参者の私にはハードルが高いかと思ったが、とにかく心地の良い最高なライブだった。ライブの序盤はしっとりとした曲が多かったが、後半からはボルテージが上がり「怒りをくれよ」で最高潮に。皆が拳を振り上げ、リズムに合わせて激しく体を揺らす。ロックが好きそうな隣の外国人も熱狂。会場は激しい音圧と閃光に包まれ、燃え上がった。

私はこの1年間、GLIM SPANKYの楽曲にとても支えられた。だから、松尾レミの歌声を生で聴けて本当に良かった。亀ちゃんのギターテクを見れて本当に良かった。「美しい棘」を生で聴けて本当に良かった。良かったとしか言うことができない。私たちはGLIM SPANKYの音楽友達だ。もし、ダメになりそうな時、私たちにはお守りのような、あの曲がある。「大人になったら」はみんなの曲。そう、松尾レミは教えてくれた。

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