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踊ってばかりの国「解夏-GE GE-」大阪城音楽堂、関西で過ごす最後の夏

2024年7月20日(土)
昼11時に起床。最近、夜更かし気味で起床時間が後ろ倒しになっている。「この時間に起きると、朝飯なのか昼飯なのか分からない」なんて思いながら、寮の炊事場へ向かう。卵と米とニンニクを手に取り、何も考えずにガーリックチャーハンを作る。

調子が良ければ、ごま油で味を調えたり、冷凍のシーフードをぶち込んだりもするが、この日は頭が回っておらずシンプルチャーハン。実家に住んでいた頃は、中華鍋をぶん回して意気揚々と強火で調理していたが、社会人5年目ともなると弱火の極意を覚え、料理の幅も広がってきた気がする。開演前に少し梅田でもふらつくかと思い、チャーハンを平らげた皿も洗わずに部屋を出た。

「JR神戸線に乗るのも最後かもしれない」。そんな事を思いながら車窓を眺めていると、この4年間の記憶が走馬灯のように蘇ってくる。明石の海岸で夏に会社の同期とBBQをしたこと、元町で後輩と食べた中華や神戸牛。同期の送別会という事で、土曜に六甲山に登らされたこと。徳島の男たちに世話になったこと。俺たちのチャットモンチーも徳島出身。その全てが青春だったのかもしれない。

15時半。梅田に着いた。開演まで少し時間があるのでディスクユニオンに向かおうと、うろ覚えの道を辿っていたら何故かタワーレコードに到着。人間の記憶がいかに、いい加減なものかを痛感した。邦ロックとBritpopを軽く物色したが、シビれる程の円盤は無く店を後にした。大阪のレコード屋にも、もっと足を伸ばしておけば良かったなと思いながら、軽快な足取りで大阪環状線に乗り込む。向かうはJR森ノ宮。なぜなら、今日は踊ってばかりの国のライブに行くのだから。

踊ってばかりの国のライブは、今回が初めてでは無い。2023年11月25日、京都大学西部講堂で学園祭のゲストとして呼ばれた彼らを見たことがある。その時も今回と同じように、寮の部屋を少し早めに出てレコード屋に立ち寄って会場に向かった。人間の習慣というものは簡単に変わらないし、変えられないことが良く分かる。冬の始まりを感じさせる寒さの中、我々のヒーロー下津光史が優しく、力強く語りかけてくれた事を今でもよく覚えている。

大阪城音楽堂(大阪野音)に来るも、今回が初めてでは無い。カネコアヤノの公演に2度足を運んだ。この野音で彼女の大阪城ホール公演が決まったと聞いた時には「違う世界の人間なってしまうのだな」と、少し切なくなった。秋に聴くカネコアヤノときのこ帝国は、どうしてあんなにも人を感傷的にさせてしまうのか。誰かと語り合って結論を出したいけど、27歳になった今でも、その答えは出せないままでいる。

踊ってばかりの国の大阪野音は本当に最高だった。「ニーチェ」「!!!」「ghost」の定番曲から新曲まで、夏の始まりに相応しい曲の数々。下津光史にしか生み出すことできない表現に我々は酔いしれた。アンコールで演奏された「Boy」は本当に圧巻のパフォーマンスだった。日が沈み、風が吹き抜ける大阪野音にこだまする景色を、我々は一生忘れることはできないだろう。

「Boy」のアウトロで下津光史はアレンジを加えた。くるりの「ロックンロール」と、KANの「愛は勝つ」の歌詞を引用したスペシャルバージョンの「Boy」だ。踊ってばかりの国は、俺たちを照らしてくれる優しい光。そう思わずにはいられなかった。

『ほんとうのやさしさがあれば、あなたを思う本当の心があれば、僕はすべてを失えるんだ』

『どんなに困難でくじけそうでも、信じることさ必ず最後に愛は勝つ』

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