見出し画像

【読書感想文】ドリルを売るには穴を売れ 著者:佐藤義典


はじめに

本の紹介

この本は、著者の佐藤 義典さん自身が「マーケティングの基礎をわかりやすく説明している、いい本ありませんか?」と聞かれた際に、答えに詰まってしまった経験から「売ること」に関する体系的な理解をしたい方が初めて手に取る入門書の位置付けとして書かれています。

入門書というだけあり、内容も基礎的なマーケティングのフレームワークを分かりやすく具体的に書かれています。また、理解を促進するためにストーリー仕立てになっているので、これからマーケティングの勉強を始めたい学生や社会人にぴったりな一冊です。

なぜこの本を読んだのか

私がこの本を読んだ理由はマーケティングの基礎について学び直したかったからです。
現在、日々勉強している中でマーケティングについての理解を深めており、主に学習を進めている無料のマーケティング学習オンラインプラットフォーム(MARPS)でおすすめされていたのが本書を知ったきっかけです。

本の内容紹介

主要なテーマやメッセージ

冒頭にもお伝えした通り、本書の位置付けとしては「売ること」に関する体系的な理解を深める入門書になっています。

本書では、マーケティングの基本4理論としてベネフィット・セグメンテーションとターゲット・差別化・4P(Product/Promotion/Place/Price)について記載がされていますが、メインテーマは「お客さまにとっての価値」です。本書の中でこんな台詞が出てきます。

「マーケティングは会議室で起きているのではなく、お客さまの心の中で起きている」

まさに、本書のメインテーマを体現する内容であり、マーケティングに長年従事している人ほどハッとさせられる台詞なのではと思います。

当たり前ですが、マーケティングをする会社(売る人)の反対にはお客さま(買う人)がいて、お客さまが購入を決める時に売り手にとってのマーケティングが起きていると言う事ができます。

本書の中でも、マーケティング的な思考や発想ができる力(マーケティング脳)を鍛えるためには、自分の身の回りから学ぶのが一番とされています。
何か商品を買った時に、「なぜこの商品を買ったのか」「なぜこの店で買ったのか」等を考えることで、マーケティングへの感度が高くなっていくといいます。

個人的な感想

学びや気づき

ここでは、私が各テーマで学んだことについて簡単ですが紹介させていただきます。

お客さまにとっての「価値」とは

本書のメインテーマにもなっており、マーケティングを行う上で一番大切なのが「お客さまにとっての価値」です。

忘れがちですが、お客さまは商品やサービスを通して得られる「価値」が自分が払う「価値」(時間やお金)より大きいと感じた時に購入します。つまり、マーケティングとはお客さまに「価値」を提供して、その対価としてお金をいただくことです。

お客さまが「価値」を感じる側面には、大きく分けて「機能的ベネフィット」と「情緒的ベネフィット」があります。例えば腕時計の場合、正確に時間がわかるのが「機能的ベネフィット」で、高級時計をつけることによる優越感が「情緒的ベネフィット」と分けることができます。
人によって何を「価値」と感じるか、どちらのベネフィットを重視するかは異なりますので、同じ腕時計であってもコスパの良いものを買う人と高級時計を買う人が同時に存在します。

セグメンテーションとターゲットについて

マーケティングを少しでも習った事がある人なら「セグメンテーションとターゲット」という言葉はよく耳にするのではないでしょうか。

まずは、「セグメント」について説明させていただきます。
一般的には、年齢や性別、住んでいる地域で顧客を分ける事と認識されているかもしれませんが、先ほど述べたようにお客さまによって求める「価値」は異なるので「価値」ごとにお客さまを分けてその「価値」を実現するのが正しいやり方です。

次は、「ターゲット」です。「ターゲット」とは、分けられた各セグメントの中で、自社の商品やサービスを売るべき顧客セグメントのことをいいます。
そもそも、なぜ顧客セグメントを絞らなければいけないのか?

それは単純に絞らないと売れないからです。

あなたが20代男性だとして、万人向けに書かれた本と20代男性向けに書かれた本のどちらを手に取りたくなるでしょうか?
よく周りを見渡してみると世の中の商品は、顧客セグメントごとにターゲットを絞られているものばかりです。

「ターゲット」を決定する際の注意点はいくつかありますが、一つは「ターゲット」となるセグメントが市場として十分に大きい事が重要です。
極端な話ですが、数人しか顧客がいないセグメントではビジネスが成立しないのはお分かりいただけると思います。

差別化について

「差別化」とは、字の通り競合にはない「価値」で自社と競合との差を別けて自社を選んでもらうことを言います。

ここでは、「差別化」を考える上でのフレームワークについて紹介させていただきます。それが、「手軽軸」・「商品軸」・「密着軸」というものです。
著者曰く、どの業界どの商品でもこの三つのフレームワークで「差別化」を図る事ができるとのことです。

「手軽軸」は、ファストフード店に代表されるような「早い」・「安い」・「便利」という価値の提供です。

「商品軸」は、商品やサービスの質で差別化を図るもので高級レストラン等が挙げられます。

「密着軸」とは、地元の居酒屋やオーダーメイドのような自分の好みを知っていてくれて最適なサービスを提供するお店が挙げられます。

「差別化」戦略において三つの軸のどれをとるかによって絞るべきターゲットは変わってきます。なぜなら、それぞれの軸においてお客さまが求めている「価値」は全く異なるからです。

例えば、飲食店の場合で「手軽軸」で差別化を図ろう!と戦略を練ったのに、「商品軸」のターゲットが好みそうな貴重な食材や豪華な雰囲気の店構えにしていたら、「早い」・「安い」・「便利」という「価値」を求めるお客さまは来店されるでしょうか?

後述しますが、マーケティング戦略においてはそれぞれのフレームワークの一貫性が大切になります。そこがずれていると正しいお客さまに対して正しい「価値」を提供できないケースが出てきてしまいます。

4Pについて

ここまで、お客さまにとっての「価値」、その「価値」によってお客さまをわける「セグメント」、どこに狙いをつけるか決める「ターゲット」そして競合より高い「価値」を提供するための「差別化」について学んできました。

最後の「4P」とは、お客さまに「価値」を提供し対価としてお金をもらうための具体的手段、「価値」を現実化する手段のことを言います。

「4P」は、Product(製品・サービス)・Promotion(広告・販促)・Place(流通・チャネル)・Price(価格)の四つのPのことを言います。簡単に解説していきます。

Productとは、直訳すると製品ですが、売り物が「モノ」とは限らないのでサービス業の場合はサービスが該当します。ここで大事なのは、その製品・サービスが提供する「価値」まで含めてProductとして定義することです。
お客さまは「価値」を実現するために製品・サービスを購入するので、その製品・サービスを通してお客さまにどんな「価値」を提供できるのかという部分まで考える事が大切です。

Promotionとは、お客さまに「価値」を伝える活動のことを言います。いくら製品やサービスに「価値」があって競合と差別化していたとしても、知ってもらえていなければ購入には至りません。Promotionでは、キャンペーンや広告等を通して買った事がない人に「良さそう」と感じてもらう事が重要になります。

Placeとは、「価値」を実現する製品・サービスをお届けするものでざっくりいうとどこで売るかということです。近年、インターネットが普及したことでPlaceは増えてきています。どの場所で自社の製品・サービスの「価値」を売るのか考える事が大切です。

Priceとは、お客さまが「価値」を受け取る際の対価のことです。ここで大事なのは、必ずしも安ければ良いということではないということです。お客さまは、「価値」に対して対価の高い安いを判断するので、高い価値を提供する事ができれば対価が高くても購入いただけます。ここでも、お客さまにとっての「価値」を見極めるという事が非常に重要になっていきます。

最後に、マーケティングで一番重要なのは「一貫性」です。
これまで述べてきた各理論が一貫性を保っているからこそ、お客さまに正しい「価値」を提供できるようになるということを理解しておきましょう。

まとめ

総評

冒頭にお伝えしましたがこの本はマーケティングの入門書としてストーリー仕立てで、基本原則について理解しやすいよう分かりやすく書かれている本です。

マーケティングをこれから学ぶ人はもちろん、すでに長年実務を経験している人にもおすすめの一冊ですので、この記事が少しでも参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集