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第8回「頭と身体の性別が一致している方々へお伝えしたいこと」

きょうは、頭と身体が性別が一致している方々へ、頭と身体の性別が一致していないことがどういうことなのか、どうして生きるのが困難なのかをお話したいと思います。

一致している人たちと同じように生きられない

私は、自分が自信を持って、「頭の性別と身体の性別が一致していない性別不合」だと言い切れます。
好き好んで、身体が女性なのに自分のことを男性だと言っているわけではありません。
おそらく生まれたときから、正常な男性、女性の状態ではないのです。

男性と女性の半々ずつで生まれた私ですが、小学校、中学校の途中まではとくに何不自由なく「自分らしく」生きていたと思います。
しかし15歳ぐらいになると、自分の周りの男の子や女の子がそれぞれ男らしく、女らしく身体や考え方もなっていくのに対して、私は女性の身体にも関わらず、考え方や性格が男らしくなっていき、自分が「女性」から離れていくのを感じました。

なんだか自分だけが置いていかれたような気がして、とても不安を感じていたのを覚えています。
この時からもう、私が「自分らしく生きること」が困難になってきてしまったのです。

「頭と身体の性別が一致しない」そんなことってあるんだと知ったときの衝撃

まさか「自分の頭と、身体の性別が一致していない」だなんて私自身思いもしませんでした。

「性同一性障害」という言葉を知っていれば、気づいたかもしれません。
何がおかしいのかずっとわからないまま、15年が経ちました。

15年が経って、自分が性同一性障害だと気づいた後、インターネットで調べていくと「脳の性分化」について研究しているページを見つけました。
脳にもオス型、メス型という男女に相当する性別があり、身体の性別と一致しないことが起こり得るということを知りました。

女性のはずの私が、なぜ女性にならなかったのか。
すべての謎が解けた瞬間でした。

私は愕然としました。それを先に教えてくれれば、あんなに苦しまないで済んだかもしれない。親を悲しませずに済んだかもしれない。
どうしてもっと早く、そういうことがあるのを教えてくれなかったんだと。

また私は、性分化疾患ではなく染色体に異常はありません。身体の作りは完全に女性なのです。
脳が男性の型をしている。しかし今の科学ではそれを証明することができないのです。そのため自分が性同一性障害であるという証拠を出せと言われても出すことはできません。

「こういう考え方の女性もいる」、「個性があっていい」、「自分らしく生きればいい」
そんな何気ない言葉にとても傷つけられています。
決して個性なんかじゃありません。

自分らしく生きられなかった時間を取り戻したい

自分が性別不合だと気づいた3年前の2016年、そのときの私は28歳。

いろんな人に自分のことを話しました。その中の一人の方から、
「まだ若いから取り返せる」
そう言われたのが一番うれしかったと思います。

思えば、性別不合に気づかなかった間は、自分のことを女性だと思いこんでいたので、我慢していたことがたくさんありました。

男性に変に思われるのが嫌で、違和感を持たれないよう女性らしくふるまったり、「自分は女性だから」男性の輪に入るのをためらったり、入れなかったり。

あれ、全部やらなくても良かったんだ。
15年もずっと我慢していた、あの時間はいったい何だったんだろう。悔しい気持ちでいっぱいです。

女性としての生活に慣れてしまった私は、いまさら性別適合をして男性になろうという意思がありません。
もう性同一性障害のことに振り回されるのはうんざりだ。少し休みたい。これまでの時間を取り戻していきたいのです。

本当にこれから自分の人生を取り返せるだろうか。不安でいっぱいです。
でも、「自分がそうだと気づいただけでもよかった」っていつも思います。

頭と身体の性別の不一致に気づいてから、私はすごく生きやすくなりました。もう自分がずっと悩まされてきた、男でも女でもないような不安定な感覚はもうないんだって。

15年も経ってしまったけど、頭と身体の性別が一致している人たちの「当たり前」がやっと手に入ったんだなって。やっと同じスタート地点に立てたんだなって思いました。

「本来の性別は男性ながら、女性として育ったしまった私」
今から完全に男性になるのは難しいと思っています。女性と男性の半分ずつで出来上がっているような私はこれから何になっていくのだろうか、何をしていくのだろうか。不安はたくさんあるけど、ただ前に進んで生きていくことだけを考えていきたいです。

28歳の時「ゴメン、本当の性別女じゃなくて男だった」を食らった性別不合の当事者です。日常的に男女の性別使い分けを強いられそのまま根付いてしまった奇妙な人生。サポートや紹介していただけるメディアさんも募集しています。