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【読書感想文】ミミズクと夜の王、他

読んだ作品:
読んだ順に
紅玉いづき『ミミズクと夜の王』(電撃文庫)
     『毒吐姫と星の石 完全版』
     『MAMA  完全版』
     『雪蟷螂 完全版』
(メディアワークス文庫)

この作品たち、まずは構成について先に語っておくことにします。
まず、作中に明確な言及はありませんが全作『ミミズクと夜の王』と同じ世界観だろうと思います。同じ世界の、殆ど同じ時代の、別の国での物語のように思いました(読み返したら明確な言及が見つかるかもしれません)。

そして、『ミミズクと夜の王』の続編として、その後のお話が描かれているのが2作目『毒吐姫と星の石』です。

また、そこから少し離れて、今度は"人喰い三部作"と呼ばれるのが、『ミミズクと夜の王』『MAMA』『雪蟷螂』(ゆきかまきり、と読みます)の三作となります。

昨年2022年が作者の紅玉いづきさんのデビュー15周年らしく、完全版が出ており、2作目以降はそちらを読みました。

この、『ミミズクと夜の王』に関わる4作品全体で、感じたものを言葉にしようと思います。



***


僕とこの『ミミズクと夜の王』との出会いは、もう6,7年くらい前になります。ずっと知っていたのに、読んでいませんでした。でも少し前、白泉社(花とゆめ等)さんの漫画アプリでこの作品のコミカライズを見かけて、惹かれて読み始めると、とても面白くて(3巻分ほど読んでみましたが、原作に忠実な印象である一方漫画としての魅力もありコミカライズとしての完成度はかなり高いと感じています)。


なぜ、あの時あの子の前で、感想を伝えられなかったのかと悔しく思います。

あの子の優しさも強さも、きっとこの物語に現れていたのに。

好きな作品は何、と問うのが好きです。問うのが、好きでした。問うた後、読んだことは殆どなかった。ただ問うて、そこに滲む感情を捉えるのが好きでした。その人がよく現れるからです。

あの子は、『ミミズクと夜の王』という小説が好きだと言った。どんな話?と私は訊きました。「魔物の森に住む夜の王と出会う女の子のお話だよ。」
「…怖い話?」(読んでみれば全く見当違いの問いだとわかります)
「うーん、ちょっと暗いかも」

あの子の声を、今もよく覚えています。

語尾の最後の一文字を力強く発音するのが好きでした。はっきりと、あの子の声で言葉が蘇る。

あれからもう随分経って、やっとあの子の見ていた世界を知りました。

4作品とも、優しくて強い、少女のお話です。美しくひたむきに、時には歪でも精いっぱい、心から誰かを愛し運命を切り開いて戦った少女のお話です。

真っ当なファンタジー小説でもあります。真っ直ぐな愛の物語でもあります。心に小さな灯火をくれるような、美しいものを見せてもらいました。

各作品、どこかに私の心を打つものがあって、どこかで泣きそうになりました(実際泣きました)。ひねくれた欲はなく、ただ作者の思い描く世界を覗かせてもらった気持ちです。

今の、最新のライトノベルとはかけ離れたものだとも思います(どちらかと言うと児童ファンタジーに近いと思います)。今のライトノベルも面白いですが、これは読者と作者のために描かれている。売上も読み手を飽きさせないノウハウもそんなものどうでもいいんだと思える。

『ミミズクと夜の王』だけ、加筆修正と番外編を加えた"完全版"ではなく、最初に出版された方を読みました。
後書きには、高校生の時、たった2日でこの物語の元となる文章を書き殴って「大学生になったらこの物語を書こう」と決めたということが書かれていました。

本当に、そういう物語だったと思います。ひとりの心を照らした物語が、こうして多くの人に届いているという事実に、物語の偉大さと、この作品たちの気高さと、作者の描く世界の美しさを思います。



どうか皆様にも、こうして心を照らす物語が、言葉が、音楽が、世界がありますように。



最後まで読んでくださってありがとうございます。




**

ご紹介した作品たち(私が読んだもののリンクを載せておきます、書店では完全版が並んでいるのではないかと思います)


ヘッダーには、カモミールの写真を選ばせてただきました。あの爽やかな香りも、花言葉も、この作品たちとあの子のイメージによく馴染む気がします。素敵な作品をありがとうございます。



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