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【読書感想文】神さまのビオトープ

読んだ本:
凪良ゆう『神さまのビオトープ』(講談社タイガ文庫)

(僕が買った分は草原の写真のような爽やかな表表紙のものでした、そちらの方が作品のイメージにはあっている気もしてヘッダーを選ばせていただきました。)

2023/6/24 15:40 加筆
ヘッダーの作品が何らかの形で取り下げられたようだったので、新しく選ばせていただきました。素敵な作品をありがとうございます。



凪良ゆうさんの作品に触れたのは映画『流浪の月』以来の2回目。連作短編集の形で、様々な恋愛?の形が描かれている、という印象。


決して忘れてはいけないこの作品の前提は、主人公には理想があり欲があるということだ。その前提で様々な人々を通して愛の形について考えさせられる、という構図が、この作品の面白いところであり、この作品が美談で終わらず少し苦い名残を引く所以であろうと思う。と言いつつ僕はアンハッピーエンドは苦手なんだけれど、この作品は完全なハッピーエンドではなくても、恋愛の自由さみたいなところや、現代のよくわからんルール(を唱える人)に対してボロクソに痛いところつくような辛辣さがあって嫌いじゃないなと思った。

その全てを、その全ての余韻を、その全ての愛の自由さを、主人公は自分の防衛理論の為(と自覚しながら)受け入れる。亡くなった鹿野君の幽霊と暮らす、その幻を信じるために。その夢を否定しないために。


ロボット(の弟)がいれば友達なんかいらないんだ。それっておかしいこと?

ううん。おかしくなんかない。



僕は少女でないと恋愛ができないんです。みんな、女の子が男になったら恋愛対象じゃなくなるでしょう。それとおんなじです。それっておかしいことですか?手なんか出してません。法には触れてません。それってそんなにダメなことですか?

ううん。好きでいることは自由よ。



ーーだって、それを否定することは幽霊の鹿野君を愛して(一緒に暮らして)いることを否定することになってしまう。だから自分のために、愛は自由だと信じ続けるーー

流浪の月も少し似た雰囲気があったように思います。誰が何と言おうと、自分の幸福は自分で決める。誰にも文句なんか言わせない。

だからその言い分を貫く限りは、その幸せを感じることができる。信じることができる。幻と知りながら、幻覚から覚めてしまうのを日々恐れながら、鹿野君と暮らす様子は、今放送中のドラマ(死んだ幽霊の彼氏と暮らす恋愛要素とミステリー要素の混ざった作品?)よりもリアルで自然なものに思えました。



美しい彼、も買ってあるし凪良さんの作品を他にも読んでみたいなと思いました。BL出身作家さんをもち上げたい(区別したい)訳でもないですが、一穂ミチさんも凪良ゆうさんも、性別や年齢といった外側の条件によらない(ある種の)純愛を描かれる傾向にあるように思います。BLの本質には純愛がある、という僕の勝手な持論を証明してみたいだけとも言えます。




…読む本が偏ってるなあ。。本なんてそんなものですけれど。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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