【短編小説】絶望した人を
彼女がいつもトイレで泣いているのを知っていた。
ただいまと廊下の方に声をかけ靴を脱ぐ。蒸れた靴からの開放感を感じつつ、ネクタイを緩めて足早に自室に向かう。最近は帰るとすぐ着替えるようにしている。就職当初は格好いい、似合っていると言ってくれたスーツも、今は新人なりも仕事を任されて「上手くいっている」僕と何もできない自分とを比べてしまうらしく、少し前から、玄関で出迎えてくれるとき(本人は気づいていないだろうけど)辛そうに笑うのだ。
今日のように少し早めに帰宅すると、大抵彼女は