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花組が最高でしかなかった〝うたかたアンシャントマン〟

花組さん千秋楽を迎えほっと一息しつつ色々と振り返ってみたいと思います。

思えばうたかたの恋とアンシャントマンの演目が決まった時、まだ観てもいない世界なのに絶対に最高セットだしもしかしたらこれ以上のセットに出会えないかもしれないと確信してしまうくらいに勝手に盛り上がっていました。

何故今『うたかたの恋』なんて昔の作品を引っ張り出したのか?そう思われてもおかしくない演目でした。新作の大作ミュージカルが来たらそりゃ泣いて喜びますが、それとは違う…不朽の名作のバトンを渡されるというある意味かなり責任のあるミッションを花組さんは見事に果たしてくれました。

新作というものは〝未だ知らない〟という最大の売りがある。何を観ても知らないだけで楽しめる。ガチャガチャを回して当たろうが外れようがワクワク楽しいのと一緒だ。しかし再演はそうはいかない。全て知っている故にまず行くか行かないかに別れる。過去にたくさん上演されていればいるほどに〝飽き〟が生じ、〝比較〟が生まれ、最悪〝つまらない〟に終わってしまう。再演は頑張っても初演のイメージがあるためそのハードルを超えることが出来ない。今回、再演こそ大変なのだと気付きました。

そして始まった花組の新うたかたの恋。初めて観た時に、再演なのにまるで初演のような感覚を抱いた。それは小柳先生が現代人のニーズにピントを合わせた演出をしてくださったおかげが大きいかと思います。

そして柚香さん率いる花組のカラーとしてクラシカルでありながらも現代的な華やかさがあり、その時代に合った魅力が〝新うたかたの恋〟に上手く反映されてより素敵に見えたのかもしれません。

古い作品なのに何の違和感もなく受け止められました。むしろ魅力が開花してこんなに素晴らしい作品だったのかと再確認しました。そして…

トップコンビがあまりにもルドルフとマリー過ぎました。

これに尽きる。

柚香さんのルドルフは幼少期からずっと王宮の箱に閉じ込められがんじがらめで育ち自らを閉ざし誰に対しても疑いの目でかかり本心を明かさずどこか魂を彷徨い続けていていつも〝死〟と隣り合わせにいるような存在。

まどかちゃんのマリーは純真無垢でお転婆で元気いっぱいに日の光をたくさん浴びて育った女の子。愛情をたくさん注がれて育っている故にルドルフに対する〝憧れ〟と同時に〝愛に飢えた同情〟が芽生えその二つが入り混じり幼く何も知らないからこその過激な愛情に変わり私があの人を守らないと!あの人には私が居ないと生きていけない!という強い使命感で漲っている。よって最後の結末に至る流れが自然。

二人の出会いは運命であり、共に死ぬことは宿命であることの説得力が素晴らしかった。ここまで役を掘り下げ相手を求め、相手のために生き、死ぬ、そのリアルな演技が出来るコンビはそうそう居ないと思ってしまった。

こんなにもヘビーな名作悲劇を演じて観客の心を掴んで離さない二人。ただただ凄かった。技術だけで人の心を動かすことは出来ないけれど技術が無いと勿論心は動かない。

れいまどの二人はそのバランスが最強。絶妙なんです。こんなにも全部がピッタリで文句なしに気持ち良く見れるお似合いなコンビ凄すぎるだろと毎回感動してしまうくらいにお似合いなれいまどコンビ。

最近、好きで好きで辛いですね…。

うたかたの恋からのアンシャントマン。

組み合わせが秀逸だ。


うたかたの恋があまりに悲しすぎてアンシャントマンが無ければ心が救われない。二つがセットで精神が統一する今回の公演。

あまりにも夢の世界でメリーゴーランドが回り出すような可愛いオープニング。それでいて妖艶さや色気が漂うのが花組。甘くてほろ苦くスパイシー。アンシャントマンは今の花組にピッタリ。

大人でアダルティな水美さんとほのかちゃんの場面から始まり、セクシーキュートでヘルシーなれいまどのニューヨーク、エキゾチックで美しく艶やかなアジアン中詰、爽やかでフレッシュなひとこちゃんみさきちゃんのシーソルト、れいまいのお色気大爆発客釣りタイムのムスク、まどかちゃんの声が星のように降り注ぎ柚香さんを筆頭に花組生が気持ちよく踊り出すグルマン、弾けるばかりの若手アイドルスター場面、ハーレムで華やかな柚香さん率いる花娘群舞からの男役群舞からの柚香さん、水美さん、永久輝さん、麗しの花男3人組が麗しの星風まどか様をお迎えしてからのデュエットダンス!(息ゼェゼェハァハァ…)

最後にトップコンビが出会い踊るその美しさ、ナチュラルな様、しなやかさ、多大なる多幸感、

うたかたの恋の悲壮感が全て浄化されます。

いや、うたかたの恋は悲壮感がなければいけないのです。そうでなければうたかたの恋ではないですから。それでもやっぱり、気持ちの切り替えが出来るデザートが欲しいんですよ。二本立てでショーがあって本当に良かった。

花組さんはとにかくスター性が高い。ドン!パッ!とした大胆な貫禄というよりはジリジリジワジワ攻めるような熱い光を放っていて気付くと骨抜きにされてしまうといいますか、なかなか怖い組なんですよね。

柚香さんのスター性は猛毒で一番危険な類。この魔力を纏った魔物のようなトップスターは今後出会えるかどうかわからないので今はとことん彼女に夢中になっていようかと思っております。

星風まどかちゃんは〝王道姫タイプ〟だったはずが、柚香さんの隣りに来てからは毒をお裾分けしてもらったのかわかりませんが小悪魔のように美しく妖しく存在しその可愛いさと艶やかさの融合が黄金比で目が離せない存在となってしまいました。

水美さんはもう〝完成〟ですね…。花男として、男役として完璧な姿にたどり着きました。圧巻の立ち姿。醸し出すエネルギー量の強さ、逞しさ、男役の憧れを全て備えたような立ち姿。これからは花組という枠を超えて、彼女にしか到達することのできない〝男役芸〟を他組の下級生たちにしっかりと伝授していって欲しいと願うばかりです。

永久輝さん。日に日に花男として開花し成長し華やかになる彼女。これからもっともっと勢力を増して昇り詰めてくるであろう。怖いよー。ひとこちゃんの本気を見せつけられるのは怖いよー。この先に彼女にとって人生の岐路になるような何か大きな当たり役が降ってくるに違いない。その時が来るのを今から楽しみにしています。

聖乃あすかちゃん。最近の彼女の殻の破り方が凄くてついつい目を奪われてしまう。花男上級生たちのオラオラを一身に受けて感化され脱皮しようと試行錯誤を繰り返し模索している彼女の男役像。まだまだこれからどのように完成されていくのかが楽しみで仕方がない。安全牌で保守的に見えて意外とギラギラ挑発的なほのかちゃん。眠れる獅子のような彼女がとても気になる。

そしてそして星空美咲ちゃん。まだまだ未知数でありながらとにかく芸事の上達が早い。猛スピードで仕上がってきている。劇団の強い勢力に一生懸命応えようと必死な彼女の健気な姿がなんとも可愛らしい。まだまだメイクや表情の作り方など課題があるかもしれないけれどその辺は学年や経験値、立場などでどんどん変わるのでこれからの御活躍が楽しみです。

花組はいいですね…いやいやまだまだ語りたいスターさんたくさんいらっしゃるんですよ…全然語り足りない!!!笑

次の公演もそのまた次の公演も楽しみですね…



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