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その頃、ぼくたちは詩的に生きていた。歩いているだけで立派な画として体裁を保っており、散歩道は私小説そのものだった。他人の物語になぞらえた情景の美しさになんの疑問を抱くこともなく、訳もわからないまま酩酊していた。ぼくたちは生活の綻びに気づくこともなく、また気づく必要にすら迫られていなかった。(なんてすばらしい日々なんだ!!)

この頃、ぼくたちはやけに疲れ切って夏の夜みたいに生ぬるいやりとりを続けている。季節はもう7周半していて、さして目新しさもない夏の暑さはしつこく漫然と気だるい。溶けたチョコレートパフェと等しい関係性は廃品回収車に連れさられる日も近いように思わせる。

当たり障りのない言葉選びを優しさだと勘違いしたり憂鬱を愛情だと信じ切ったり、つくづく予め決められた感情に適当な理由をつける事務的な行為が上手な奴らだと思う。だいたいぼくに訪れるものは成長とは違った類の変化であり、がんじがらめの立場に身動き一つとる気力すら削がれている。

ぼくたちは考え、発信し、反響した言葉や態度を受け取る一連のプロセスを完全に放棄している。「汚いよ、でも自分を守るために必要だった」ただのツケ払いじゃないか。ぼくたちはこの世界を制御し共生する生き方を少しずつ諦めている。ゆっくり、ゆっくりと視界がぼやけていくことにもう抗うことすらなくなってしまった。



【訳】: 今日は冷凍ハンバーグを食べた。レンチンの時間配分を見誤ってパサパサのハンバーグを食べることになってちょっと悲しくなった。

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