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イーディ、83歳、はじめての山登り

という映画をみました。
映画「エベレスト」の沼から抜け出せずにいますが、他の山映画を観てみるかと思って見たのがこれ。

長年介護していた夫が亡くなった途端、娘に介護施設に入れられそうになり
ふと出会った「何をするにも遅すぎることはない」という言葉に触発され
昔から行きたかった父親との思い出の山に登る、という話です。

まず、イーディの夫は全く話の通じない奴らしく、また彼女もそれに言いなりになっていた人生。
夫も看取って子供も育てて(娘はもうおばさん)
「私はもう義務を果たしたのだからいいじゃない!」と言うと
娘が「義務って・・・」と呆然とするシーン。

ところでこの娘、イーディが脂っこいお肉を食べることをよしとしていないのか
イーディは隠れてお肉を焼いているのですが、娘が来ちゃったので慌てて
熱いフライパンをシンクの下に隠す(笑)
まず、危ないんだけれど、それを匂いで見つけた娘は
「こんなの食べたらだめよ!」ってフライパンの中にあるお肉を直接ゴミ箱に捨てちゃうんです。

あ、油・・・・・・

とそこがもうどうにも身がよじれました。私何かが「こぼれる」とか苦手で
きーーーーっとなってしまうのですが、もうそのシーンはハンカチ噛みたいぐらい。まず熱いから危ないし、お皿にキッチンペーパーしいてそこにお肉だしてその後フライパンの油もふいてくれ!と叫びたかった・・・。
だって、直接ゴミ箱に捨てるからゴミ箱の蓋や側面にも油だれが・・・涙

で、そんな娘は母親に「義務(で子育てした)」と言われて呆然としていなくなっちゃうのですが。

義務ねえ・・・まあ考えました。義務といえば義務かも?
だって投げ出したいと思ったこと沢山あるもの。
いやー子育て大変、しかもうちの子どうなるの?誰か代わりに面倒みてくれないかな、と思ったこと1度や2度や50度じゃないわ。
子供が巣立っていくときに「義務は果たした」とは言わないけれど
私が年取って介護施設に入れられそうになったら怒って言うかもね、と。
だからイーディも本心じゃないと思うのです。まあ、半分は本心かもしれないけど、ちょっと怒って言っちゃっただけですよ。

というわけで、娘への留守電に「ちょっと出かけるから。帰ったら電話する」と言って、
たぶん話の流れから言うと1か月は軽くいなくなっていると思う。
まあ、まさか83歳のお母さんが山に登ってるとは思わないだろうねえ・・と思いました。

で、体も細くて歩き方もおぼつかない、荷物もちゃんと持てないようなイーディは山に向かいます。
途中で出会った若い青年が山のガイドをやってくれて、イーディのトラブルも色々解決してくれるのです。

イーディは気が強いおばあちゃん、とかそういう感じでもなく
酸いも甘いも知った人生の先輩って感じでもなく
なんというか、世間を知らずに生きて来て歳とっちゃった!みたいな人なのです。わがまま、とも違うかなあ。
小さい頃のお父さんとの思い出が一番幸せで
その間にあった60年ぐらいの結婚生活が全部不幸で(実際そうやって言う)そこは全部すっかり抜けて今に至る、みたいな感じでしょうか。

人生のほぼすべての結婚生活が「幸せなんかじゃなかったのよ!」と
言い切るイーディ。それを認めてしまったらたぶん辛いのに
しかもこの先取り返せる時間もそんなになさそう。

まあなにはともあれ、彼女は山に登るのです。
実際は無理だろうな・・・と思われるシーンはいくつもありましたが
まあそこはさておき。

この映画は今までの苦労とかがむくわれて「頑張ってきたかいがあったね」とか、いくつになっても何かを成し遂げられるとか
苦しかったことへの仕返しができるとか
そんな大きなテーマで書かれているわけではなさそうでした。
たぶん、この先、イーディと、出会った青年の人生はあまり変わらないと思う。

私がこの映画を観て思ったことは
「80歳になって、人生不幸だったと言うぐらいの旦那なら
早くに決断すべし」でした。

※写真は、たぶんイーディが登ったアイスランドの山
(冬山バージョン)です。
素敵な写真、使わせていただきました。

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