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沖田君

「生徒諸君」というマンガにはまったのは小学校5~6年生の時。

ナッキーという女の子が田舎から都会の中学校に転校してきた。田舎の子だから何もかも都会の子供より少し劣ると思われていたら、その女の子はなんでもできる。随分昔に読んだのでうろ覚えだけれど「勉強なんてどこにいてもやろうと思えばやれる」と言った台詞を覚えている。周りの同級生や先生を巻き込みながら中学校生活を謳歌していく。その時に仲良くなった仲間とは親友になり共に成長していく、という話。その後「生徒諸君」はナッキーの年代によって「○○編」という風に展開していったようだが、その後ナッキーがどうなったかはわからない。

 本来5年生から持ち上がるはずだった担任の都合で6年生の担任が替わってしまった。「替わってしまった」というのはもちろん替わって欲しくなかったからだ。なぜなら5年生の時の先生はクラスのいじめも排除し、クラス全員一致団結させて学校のイベント、運動会、学芸会、スケート大会、マラソン大会等々、なんでも優勝できるように時間外の指導もし、運動できない子のレベルの底上げに尽力(私がそうされたからとてもよく覚えている)し、勝つ喜びを教えてくれた。

 クラス全員が仲良く、何をやるにも一生懸命やった。時には体罰もあったが当時の学校ではあるあるだ。そんなものだと思っていた。

 そんな「ぎゅっ!!」とまとまったクラスを、先生は置いて行った。捨てられた子供らはどうなるか・・・それは荒れる。荒れました。被害者は途中でそんなクラスを任された担任の先生だった。今となればわかるけど。「生徒諸君」を読んで「自分はナッキーだ」と思い込んだ私のタチの悪いことと言ったらない。荒れたクラスをまとめるのは私しかない、と思って、それを阻む目下の敵は新しい担任だと言わんばかりに反抗しまくった・・・

 とまあ、そのようなことを学校でコソコソしているつもりだったがそれらは全て母親に筒抜けで「あの時のあんた、生徒諸君に影響されまくってひどかったね」と言われた。ばれてたんだね・・・恥ずかしいです。そして当時の先生、同級生にも申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 それほど影響を受けた「生徒諸君」に沖田君というかっこいい男の子が出てきます。家庭環境が少し複雑で、複雑同士のナッキーとは心が通じ合い、最初は心を開かないけれど皆と少しずつ仲間になっていくというキャラ。ナッキーたちは「熱い」キャラですが沖田君はクールなのでかっこいいわけなのです。そんな沖田君は高校に入り「ワンダーフォーゲル部」に所属し山にのめり込んでいきます。そして「冬の穂高」でナッキーを思いながら命を落とすわけなのですが・・・・。

 山で死ぬことはいけないことです。命をかける山もあるのでしょうが、死んだらダメでしょう。多少なりとも山に関わったのでそれはわかっているのですが、生徒諸君を読んだ当時の私は「ワンダーフォーゲル部」「冬の穂高」「沖田君」に猛烈に憧れたのです。大学に入学し「ワンダーフォーゲル部」の名前を見たとき「これだ!!」と思いました。

 漠然とした憧れだった「山」と「ワンゲル(ワンダーフォーゲル部の略)」。「冬の穂高」は無理だとしてもいつかは穂高に行ってみたいなあと思って入部しました。でも、マンガの本がきっかけで入部したということはちょっと恥ずかしくて言えなかったのですが、数年経って、OBとお酒を飲みながら話した時のこと。このOBは偉ぶらなくてなんだかとっても正直に話してしまう方なのですが、その人との会話。

「おい、スギ。なんでワンゲルに入ったのよ」            「えーー、ちょっと恥ずかしいのですが、昔あるマンガの本を読みまして。それに出てくる人に憧れて入りました。」                   「!!???もしかして、それって生徒諸君???」            「そうです!!!」      

『沖田君だろ!(です!)』

その後、沖田君で盛り上がったことは言うまでもありません。私は北海道の山しか登ることは出来なかったけれど、冬山にも行っていたので、少しだけ「沖田君」っぽい気持ちを味わって満足しました。

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