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見て見ぬ振り

大学を卒業して最初に勤めた病院は部活のOBが院長をやっていたところだった。右も左も上も下もわからない新卒獣医。
ほとんど勉強せずに卒業。国家試験に受かったのも
卒業できたのも「奇跡」と周りの人々に言われ
総代挨拶をした同級生には卒業式に「ミラクルを起こした人と
握手をしたい」と言われ握手を求められた・・・ある意味バカにされたのかもしれないけれど、まあ、良い人だったからそうじゃないと願おう。

そんな「なーーんも知らない」私が勤めた動物病院は
今思えばたぶんちょっと変だった。変だった内容は書かないけれど
院長はとにかく厳しい人だった。
すぐ怒鳴るし、自分の気持ち一つで機嫌もころころ変わるし
贔屓はひどいし。でも、そんなもんかと思っていた。なんせ昭和生まれ昭和育ち、学校の先生なんてそんな人たちばっかりだったから。

そんな厳しい院長はとにかく人の行動を細かくみている人で
しかもミスしたところをタイミングよく見られてしまうのだ。
仕事はほぼできないからミスも多かったし、それは見られても注意されても仕方がないのだけれど、よく目撃されたのは
私の行動のミス。言葉使いが悪い、とか
手が塞がってて足で戸を閉めちゃったとか、ゴミが落ちているのを気づいたのに拾わないとかだ。
自分で「あ、やばいかな」と思ったと同時ぐらいに「今ゴミ落ちてるの見たよな。なんで拾わないんだ」とすぐに指摘される。
・・・ですよね・・と思いながら拾う。
という日々を送っていたので、私もすっかり「人が見て見ぬ振りしたこと」にめざとくなってしまった笑
嫌だわあ・・・。

うちのお風呂ルール。
お風呂掃除をした人は基本何もせずにお風呂に入ることができる。
二番目の人は乾いた洗濯物をおろしてたたむ。
三番目はお風呂掃除をしてあがる
ラストはお風呂のお湯ホースを洗濯機に設置して
洗剤を入れる。となっている。

朝、洗濯物ができあがっているのでそれを干すのはたいてい夫か私だ。

私はお風呂ルールをしっかり守る。
やることはきちんとやる、かわりに
やらなくて良いことはやらない。果たしてそれが良いのか
悪いのか。
夫は割とゆるめで、やるべきことを忘れる一方で
やらなくても良い役割をやってくれることも多い。
気がついた人がやればいいんじゃない?という精神の下にあるのだろう。
もちろんそれがベストだ。
役割なんぞ決めずに気がついた人がやるべし。
でも気づく量って圧倒的に私が多かったりする。
だから「気づいた人がやる」ルールだと、ほぼ私がやることになる。
そんなの嫌だ。というわけで、きっちりしたルールの下で
生活をするようになってしまった。

さて、洗濯物の量。洗濯機を2~3回はまわすのだが
長男も減って子供も制服やジャージ登校になったのでこれでも大分減ったけれどサッカー男子がいるので、試合、練習がある日は
ほぼサッカー男子である次男の物が9割になる。
私と夫の洗濯物はほぼない。毎日同じジーンズ、
Tシャツと下着を着替えるぐらいだ。
なので洗濯物を干していると、ずーーーっと次男の洗濯物を干す羽目になる。
ここに夫のサッカーグッズが加わると
「私なんでこんなにサッカーの物ばっかり干してるわけ????」と
だんだん腹立ってきて途中で投げ出す。
夫は途中で投げ出された洗濯物を見て察して黙々と自分でやることが多い。

ルールはあるけれど
例えば私が山に行って帰って来た「私だけの」洗濯物とか
旅行から戻って来た時の「私と娘だけの」洗濯物は
お風呂ルールがあったとしても、全部私だったり娘がやる。
サッカーの試合があって夫のサッカーグッズしかないときは
夫がやる。
それなのに、毎日毎日大量に洗濯物を出す次男は
これを全くやらない。お風呂ルールには則っているが
「ほぼ自分の物だから自分でやるわ」という精神がないのだ。
これを甘やかしてしまったのが悪い。
朝が早いものだからついつい親切心で私と夫が
やってしまっていた。

ところが、昨日、お風呂ルールも守らず
おろした洗濯物を「自分の物だけ」たたんでしまいやがった次男。
朝起きたときに、数枚の夫の洗濯物が残されていた。たたまれもせずに。
夫の洗濯物を見て見ぬ振りをしやがったバカ次男。
上述の通り、夫はゆるくやるタイプなので
好意から人の仕事をやったり、人の物もたたんだりしまってくれる人だ。
その恩恵にあずかっているのは主に次男でアル。
ああ、それなのに。

お弁当を作ったあと、夫の洗濯物が出されっぱなしだったのを見た早朝。
一気にぶち切れた私。
「あっそう。毎日お父さんにやってもらってるのにこういうことやるんだね。わかった。お弁当はもう今日で最後。洗濯物は二度とあんたの物には手をださない」と宣言。
半分寝てた次男だが聞こえていたかどうかは知らん。
できあがった洗濯物。9割次男の物、濡れたまま。
この暑さと湿度。カゴにぶちこんでおいた。
もう許さん。
3人子供がいる中で1人だけ「まだまし」だと思っていた次男だが
見て見ぬ振りの母が育てた子供だもの。こうなるに決まってた。ましなわけがない。
また己の子育てを振り返って自分をぶん殴ってやりたくなったがやめた。

高校生の洗濯物をやってやってた私たちが悪い。
もう二度とやらない。雑巾臭くなった服でも着ていけ。バカ。

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