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【毎週ショートショートnote】「2人用」「AI」

AIで、哀から愛へ。
故人の情報をインプットすると、機械学習や深層学習で表情や性格や話し方を学び、まるで本人のようにアウトプットするアンドロイド。かつては高級品だったが廉価版の発売により一般家庭にも普及していた。
とある3人家族の元にも1台。
「このときのサクラちゃんとっても可愛かったわ。覚えてる?」
写真を指差し語りかける母に対しても娘は何も反応しなかった。
「あなたは覚えてるわよね?」
「もちろん。入学式のときの写真だろう。ボクとキミの間に生まれた子なんだ。可愛いに決まってるじゃないか」
冗談を交えて流暢に語る父に対しても娘は何も反応しなかった。
「情報が足りてないのかしら。ねぇサクラ、何か喋ってみて?」
ダメだ。
娘は無言のまま首を横に振り、一粒の涙を落とした。
大好きだった父を事故で亡くしてから半年。悲しみを癒すために導入した母と娘のためのAI。今は無理だ。最後に撮った卒業式の写真もわからないそれを、父の姿と重ねるなんて。
(410字)

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前回のお題「朝」「逆転」

次回のお題「読書」「石けん」

以下、今回の本文作成に至るまでのアイディアめも。

アイディアの羅列
2人用:夫婦、親子、彼氏彼女、鍋、ライバル、ボケとツッコミ、
AI:愛、機械学習、自動化、プログラム、人工知能、artificial intelligence、哀、

アイディアの組み合わせ
2人で機械学習:亡くした家族をAIで再現する未来。夫婦で子供を再現するか。親子で片親を再現するか。夫婦用と見せかけてオチで親子であることがわかる仕掛けにするか。AIと愛と哀の言葉遊び。

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