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優木せつ菜役の楠木ともりさん、ありがとう、そしてお大事に。

2022年11月1日。虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会ファンに激震が走りました。

優木せつ菜役の楠木ともりさんの降板です。ラブライブ!シリーズでのキャスト降板は初となります。周りに比べるとそこまでどっぷりとは浸かっていない(と思っているだけかもしれない)私でもこの衝撃。虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会を、優木せつ菜を、楠木ともりさんをより熱心に応援されているファンの気持ちは察するに余りあります。

原因は主に脚に関する体調不良で、初めてパフォーマンスを制限すると公表された2022年5月の3rdライブのときはまだ「何だかんだ動けるじゃん」と思っていました。2022年10月のユニットファンミになると工夫しながらパフォーマンスをこなしているも、MCで椅子に座らなければならない、MCですら立ち続けることができない姿に違和感を覚えました。2023年2月の4thライブではメンバー12人が初めて揃うワンマンライブにも関わらず12人曲を歌わずソロ曲1曲を披露するに留まりました。この頃になると、楠木ともりさんの身体面はもちろん、12人揃ったのに揃えられなかった状況を彼女自身がどう捉えているのかという精神面も心配でした。それを察するかのように2日目のMCで「どんな形であれ楠木さんがせつ菜を表現することが大切」と誰かに説かれて葛藤しながらもステージに立っていることを明かしてくれました。先の台詞を言われるシチュエーションを想像するに、既に1度降板の申し出のようなものをしていたのではと私は考えています。

2022年9月の5thライブは最悪1曲も歌わないかもしれないという私の予想に大きく反し、フォーメーションからひとり外れてダンスをしない特別な配置ながら、ソロ曲はもちろん12人曲についてもほとんどフルでステージで歌ってくれました。不完全であったとしても同じ板の上で歌ってくれるだけでなんと嬉しいことか。アンケート等で楠木ともりさんと運営に優木せつ菜をステージに立たせてくれたことに対する感謝の意を記しました。MCで不完全であることに対しての不安や不満を吐露されてはいましたが、それでも楠木ともりさんが優木せつ菜であり続けられる可能性というか、語弊があることを承知で言えば「妥協点」を楠木ともりさんと運営が見出してくれたような気がしていました。ファンのひとりとしてはもうそれで十分で。やり方を工夫すればまだまだやれるじゃないか。そう思っていた矢先の降板の知らせ。これまでの経緯を踏まえれば寝耳に水というほど何も予兆がなかったわけではありませんが、希望が見えてきた(と私が勝手に思っていた)ところだっただけに、正直驚きました。もう決断していただろう2022年10月の公開録音ではそんな素振りも見せずに楽しそうにいつものゲラ笑いをしていたのに。

しかし事情を知れば納得せざるを得ません。楠木ともりさんの公式ページによれば2022年9月に確定診断が出ていたのです(これが5thライブの前なのか後なのかは5thライブの見え方が変わってくるので気になっています)。エーラス・ダンロス症候群関節型。聞き慣れない病名です。調べるとすぐに遺伝子変異が原因の根治療法のない進行型の難病であることがわかります。雑に調べただけなので正確な情報ではありませんが、エーラス・ダンロス症候群でない方に比べると将来車椅子生活になる確率は高そうです。そして過度な運動は車椅子生活に至るまでの期間を縮めます。未来ある20代前半で突きつけられるにはあまりにも重い。かつて仲のよかった先輩から希少がんであると告げられたときに近い悲しみを抱きました。優木せつ菜云々は一旦置いておいてまずは「お大事に」というのが私の率直な想いでした。病名確定により、根治は難しく進行を遅らせるしかないとわかったことで、これから楠木ともりさんは痛みと付き合いながら自身の身体を文字通り擦り減らしていることを自覚したうえで、役者として、アーティストとして、活動されることになります。それを考えたときに「不完全な形で優木せつ菜であり続けること」は彼女にとってはもちろん、彼女が描く優木せつ菜にとっても本意ではなかったのでしょう。誰がこの決断に異議申し立てできるのか。もう、好きな仕事を選んで、やれる範囲で、やりたいことを、存分にやってくれ……!

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の一員としての活動期間は2023年の3月31日とされています。この知らせを受けてか、都内のお店から優木せつ菜の属するユニット「A・ZU・NA」の3rdシングル「Blue!」が消えたようです。恐らくは2023年2月4日に開催される「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 UNIT LIVE! ~A・ZU・NA LAGOON~」の最速先行抽選申込シリアルが目当てと思われます。これが楠木ともりさん演じる優木せつ菜のラストパフォーマンスになるかもしれません。一方で、楠木ともりさんがこのステージに立たない可能性もあるよなと私は思っています。病状がわかったこの期に及んで「もう少しだけラブライブのために身体を擦り減らしてくれないか」と打診できるかと言われたら私にはできないのと、かねてから楠木ともりさんが「不完全な優木せつ菜」を「あなた」に見せたがっていないからです。楠木ともりさんがいてもいなくても特別なユニットライブになることに変わりはなく、どちらに転んでも、行かなかったこと、行けなかったことを後悔するくらいなら、CDは積みまくるべきです。しかし浮き立つ周囲では楠木ともりさんがステージに立つことを前提とした言動が多いように見受けられる点だけ気になっていて、もし楠木ともりさんがステージに立たなかった(立てなかった)ときに「話が違う、立てよ(立たせろよ)」と荒れることがないといいなと思います。逆にもしステージに立ってくれるというのなら、それは身体を擦り減らしてでも、不完全であっても最後に「あなた」の前に立ちたいという楠木ともりさんの願いがあってのこと。ならばこの目で見届けたい。見届けたいけど倍率高そうだよなぁこれ。

追加で卒業公演的なものを期待している方もいるようですが、私は上記の立場なので、楠木ともりさんの意向が強くない限りはやらないだろうと思っています。やって全員集合の生放送くらいじゃないかしら。別の観点で、楠木ともりさんが演じる優木せつ菜を持ち上げ、神格化しすぎると、ただでさえプレッシャーの大きそうな後任キャストの精神負荷がさらに大きくなってしまうというのもあります。何かやるにしても少なくとも「やっぱり優木せつ菜は楠木ともりさんだよね!」という空気をわざわざ誘発することは避ける工夫をすべきです。後任キャストを受け入れられるかどうか問題は起こるか起こらないかで言えば、どうしても起こってしまうのでしょう。これは仕方のないことです。キャストの変更は既に決まっているのですが、そこに「優木せつ菜は楠木ともりさんじゃなきゃヤダ」という意見自体はあっていいと思います。この5年間の歩みは、2人の別離を数日ですんなりと受け入れるにはあまりにも長く、あまりにも濃厚でした。今はまだ心の整理がついていない人も多く、残された時間を使って、ひとりひとりが優木せつ菜との新しい距離感をそれぞれ掴んでいくことになるのでしょう。「誰かの大好きを大切に」は優木せつ菜として楠木ともりさんが口を酸っぱくして言っていたこと。後任キャストを受け入れられる人と受け入れられない人が共存……は難しくてもそれぞれの大好きを尊重して否定しない不干渉くらいで落ち着くといいなと思います。

実のところ私自身、まだ距離感を掴みかねています。それでも再び優木せつ菜がスタンドマイクを蹴っ飛ばしたり、ステージ上で暴れ回る姿が見られる可能性については大いに期待しているところです。それを「あなた」に見せたいというのが、楠木ともりさんの決断の理由のひとつでもあると思うから。これだけ多くの「あなた」がそれぞれ頭を抱えているのは、楠木ともりさんが真剣に優木せつ菜と向き合ってくれて、大好きが「あなた」に伝わっている証とも言えます。ここまで優木せつ菜という存在を大きなものにしてくれてありがとうございました。直近の主だった活動は「にじよん あにめーしょん」になるのかしら。残り5ヶ月、よろしくお願いいたします。

そして何より、ご自愛ください。

余談
この件については、他のメンバーからもメッセージが寄せられています。

最終出社日の寄せ書きかな? まだ5ヶ月ありますけど?? と思ったりもしましたが、制作側の動きは消費側の動きより早いですし、個別対応させると重すぎたり軽すぎたり文量やタイミングの違いから火のないところに煙を立てられたりするので、公表後に足並みをだいたい揃えておくことにいくらかメリットはありそうです。それにしても相良茉優さんの字は遠目に見てもクセが強い。

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