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「100日後に死んだワニ」はいつ死ぬのか。

以下、じゃんじゃんネタバレ出てきますので、気になる方は回れ右をして頂いた方がよいかと思います。

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2020年3月20日19時20分、ひとりのワニが急逝しました。しかしながら、急逝というと語弊があるかもしれません。何故なら読者は理由こそよくわからないけれど、この日に亡くなるらしいことを知っていたからです。

4コマ100日連続投稿という徐々に積み重なる情報の出し方が絶妙で、様々な想いや考察が飛び交っていますが、読者に「しのせんこく(死の宣告)」の数字が見えていることを除けば、人生の紆余曲折を喜怒哀楽と共に過ごしていたひとりの人間(ワニ)がある日突然、交通事故で亡くなった。というそれだけの話だと私は理解しています。

警察庁が2020年1月6日に発表した2019年の交通事故死者数統計に拠れば、2019年の全国の交通事故死者数は3215人だったそうです。2016年に4000人を割ったくらいということなので、ここから一気に0人になる事はなく、2020年も残念ながら3000人程度の方々は交通事故で亡くなってしまうのでしょう。交通事故死という切り口だけでも毎年3000人くらいは365日以内に死ぬワニであるわけです。残念ながら現実世界では「しのせんこく(死の宣告)」が可視化されていません。私は今年、ワニにならずに済むのでしょうか。来年、ワニにならずに済むのでしょうか。あなたは? あなたの大切な人は? そんな事を考えさせられる作品でした。やりたい事は、やれる内に。推したい人は、推せる内に。

さて、ワニが急逝してから1時間40分後、お墓より先に公式ページが建てられ、様々な商業展開の告知がなされました。人によって受け取り方は賛否様々なようで、私の意見は「商業展開は全然構わないけどもう少しうまい見せ方はあったのかもしれないな」です。関連する好きな一説はnote運営にも携わる深津さんによるものです。

49日と言わずとも、もう少しばかり余韻に浸る時間はあってもよかったのではないかと思う一方で、ワニの霊圧がいつまで保つのかという疑問もあります。特にSNSで流行ったものは消費スピードが早い傾向にあり、今回選択された即時商業展開であっても発売時期、公開時期まで保つとは限りません。また、何日目あたりから大々的な商業展開が視野に入っていたのかも興味があります。状況的に死ぬ直前でないということは明確で、注目を浴び始めた中頃なのか、実は生まれる前からなのか、時期によっては読者に「掌の上で踊らされていた感」を強く意識させ、マイナスイメージを与えてしまいます(何れにせよ踊っている事にかわりはないので気持ちの問題でしかないけれど)。何をしても賛否飛び交う世の中ではありますが、諸々含めて出来るだけうまいこと商業展開するためにはどうするのがよかったのか、実は現行法が最適解なのか、未だ私の中では答えが出せていません。

最後にONE PIECEの16巻から好きな台詞をひとつ。

「人はいつ死ぬと思う?
心臓を銃で撃ち抜かれた時……違う
不治の病に侵された時……違う
猛毒のキノコのスープを飲んだ時……違う!!!
…人に忘れられた時さ…!!!」

ワニはいつ死ぬのでしょうか。
交通事故に遭った時でしょうか。
人に忘れられた時でしょうか。
商業展開の仕方を巡って炎上した時でしょうか。

「100日後に死んだワニ」が死ぬその時を、商業展開の成否を、n日後に死ぬ私が観測できるかどうかはわかりませんが、興味深い展開を試みた一例として、もう暫くワニの様子を伺ってみようと思います。賛否ありつつも母数が大きく、一定数の支持派が存在するので、このワニ、何だかんだ言ってそこそこ長生きするような気はしています。

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