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【毎週ショートショートnote】「違法の」「健康」

「そこを動くな」
男は黙って両手を挙げた。
なぜ警察が私のところに来たのか身に覚えがないわけではない。押入れに隠してある「アレ」のせいだ。
路地裏で怪しげな商人から高額で買った白い粉。
「スベテヨクナルヨ」と言われて買った白い粉。
「習慣を変えないと長くは生きられません」と医者から余命を宣告されて自暴自棄になっていた頃だ。
酒もやめたしタバコもやめた。
それでもすぐには良くならなくて高額な「アレ」に手を出してしまったのだ。
金が尽きても幸せだ。「アレ」をひと舐めするだけですこぶる調子がよい。脳に血流が行き渡って万能感を与えてくれる。
何度も間食を貪る必要もなくなった。ウォーキングも始めたしジムも通うようになった。
もう「アレ」なしで私は生きていけないのだ。
「押入れを確認しないのかい?」
「何の話だ。ウォーキングシューズの窃盗とジム会員権の偽造で逮捕する」
男は捕まり、部屋にはなぜか単価がめちゃくちゃ高かった合法のブドウ糖が残された。
(410字)


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前回のお題「感想文」「部」

次回のお題「二重人格」「ごっこ」

以下、今回の本文作成に至るまでのアイディアめも。

アイディアの羅列
違法の:法律に反している、
健康:元気、病気じゃない、大事、第一、保険、療法、オーガニック、

アイディアの組み合わせ
健康維持の魔法の粉:違法なルートで入手した粉。逮捕される。粉自体は実は合法。罪状はしょうもない理由。

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