【毎週ショートショートnote】「男子」「宝石」
「男の子はね、宝石なのよ」
母さんは言った。貧しい家に産まれた男子はやがて女子に宝石として選ばれるらしい。だから僕は宝石として育てられた。誰よりも輝いているべきだと。
「男の子はね、宝石なのよ」
ママは言った。高貴な家に生まれた女子はやがて男子を宝石として選ぶらしい。だから私は持ち主として育てられた。誰よりも気高くあるべきだと。
18歳で迎える宝石品評会。より気高い女子が優先的に選び、より輝いている男子が優先的に選ばれる。はずだった。その年のいちばん気高い女子が選んだのは、いちばん輝いていない男子。品評会は大いにざわついた。
「なぜ僕を選んだのですか」
「宝石としての価値はどうでもいい。私は男子としての価値で君を選んだ」
「よくわかりません」
「鈍いわね。私は君と恋がしたいと言ったのよ」
「やっぱりよくわかりません」
それぞれの親から逃げ出した二人。これは気高いようでお転婆な女子に選ばれた男子が恋を知り、誰よりも輝くまでの物語。
(410字)
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前回のお題「バイリンガル」「ギョウザ」
次回のお題「穴の中の」「君に贈る」
以下、今回の本文作成に至るまでのアイディアめも。
アイディアの羅列
男子:男の子、悪ガキ、
宝石:煌めき、指輪、アクセサリー、カラット、貴重品、高級品、偽物、財宝、
アイディアの組み合わせ
運命に抗う男女の話:男は宝石として育てられてただ売られる。女の子は持ち主として育てられてただ与えられる。不自由な慣習からの脱脚。
頂いたサポートは、美味しいものを経て、私の血となり肉となり次の作品となる。