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TVアニメ「リコリス・リコイル」という銃弾を避けることができるか。

2022年夏アニメの「リコリス・リコイル」が面白いという話です。以下、「リコリス・リコイル」の第3話までのネタバレを含みますので、内容を知りたくない方は回れ右をしていただければと思います。

最新話のネタバレを含んでいない理由は、「アニメはニコニコ動画で木曜日の夜に見る」というマイルールにより最新回からざっくり1週間程度遅れているからと、私の筆が遅いからです。最新回を既に視聴している人が読むと今更感があるかもしれませんし、それはそれで面白いかもしれません。


まずは3ヶ月前に公開されたPV第1弾をご覧ください。ほぅほぅなるほど。これは喫茶店を舞台にした「ご注文はうさぎですか?」だったり、寂れた田舎を再興する「サクラクエスト」だったり、その手の美少女ほのぼのわくわくストーリーですな。

……と、思うじゃん。

次に1ヶ月前に公開されたPV第2弾をご覧ください。めっちゃドンパチしてますけど?? 完全にやられました。美少女ガンアクションでした。もう少し具体的に言うと、ワケあって組織本部を離脱した歴代最強の元気で明るい金髪の錦木千束(にしきぎちさと)とワケあって組織本部を追放された合理的で無駄を嫌う黒髪の井ノ上たきな(いのうえたきな)のバディを中心に、軽いのから重いのまで街を襲う様々なトラブルを解決するお話です、たぶん。学生に扮した組織がドンパチするところは「プリンセス・プリンシパル」に通ずるものがあります。

バディもののお約束に従い、第1話時点の二人の相性はよくありません。彼女たちの関係性を語るにはある程度の用語の理解が必要です。まずは「リコリス」について。

この動画からわかることは以下の通りです。
・タイトルの一部に含まれるリコリスとは組織に所属するエージェントの総称である。
・リコリスには階級があり錦木千束は井ノ上たきなより上である。
・錦木千束の絡みがともすればウザい。

ついでに「喫茶リコリコ」について。

この動画からわかることは以下の通りです。
・錦木千束はリコリコでの活動を気に入っている。
・井ノ上たきな左遷先のリコリコでの活動に納得いっていない。
・錦木千束の絡みがともすればウザい。

組織本部にしか居場所がないのに何をやっているのかよくわからない喫茶リコリコに左遷された井ノ上たきなと、彼女にウザ絡みする彼女より凄腕なのに組織本部を離れた錦木千束。水と油。錦木千束から井ノ上たきなへの片想いから二人の関係はスタートし、私が見たところの最新である第3話で、錦木千束が井ノ上たきなを口説き、井ノ上たきなが錦木千束への理解を示して二人の距離がぐっと縮まりました。

この第3話「More haste, less speed」がめちゃくちゃいい。2022年下半期よかったアニメ話数ベスト3にはランクインすると思います。絵、構成、芝居のどれを取ってもいうことなし。見ていてとても気持ちがよかったです。もう何回見直したかわかりません。「リコリス・リコイル」沼に誰かを突き落としたかったら「とりあえず第3話まで見てください!」とお願いすれば落ちるべき人は落ちてくれることでしょう。

第3話の見どころはと言われたらやっぱり噴水前で錦木千束が井ノ上たきなを口説いてからの摸擬戦のシーンです。組織本部に戻れるかもしれない希望が打ち砕かれて居場所を失った井ノ上たきなをぎゅっと抱きしめる錦木千束。井ノ上たきなを抱き上げて出会えたことを嬉しい嬉しいと連呼する錦木千束。井ノ上たきなに「喫茶リコリコという新しい居場所」はあるから「したいことを選べばいい」と提言しつつも強制はしません。

「今は、たきなにヒドい事をいったアイツらをぶちのめしたいので――ちょっと行ってきますよ」

「リコリス・リコイル」
第3話「More haste, less speed」より

錦木千束はひとりで2対2仕様の摸擬戦に向かいます。対戦相手は井ノ上たきなの元相棒とその新しい相棒。2対1という圧倒的不利な状況にもかかわらず、錦木千束は余裕の表情。元上司曰く「卓越した洞察力」で銃弾を避けながら、相手をすぐに撃ち負かすことはせず、井ノ上たきなが来るのを信じて待っていました。そして現れた井ノ上たきなは全力ダッシュで背後から突っ込んできて元相棒の顔面にグーパンチ。その流れでめちゃくちゃカッコよく元相棒を撃ち負かして錦木千束と井ノ上たきなの大勝利。撃ち負かし方についても語れることは山ほどあるのですが、いくらか前提知識が必要となるのでここでは割愛します。伏線含めてその目で確かめてください。ポイントは無駄を嫌う井ノ上たきなが背後から撃たずにわざわざ詰め寄ってグーパンチをかましたことです。実は井ノ上たきなは第1話で元相棒にグーパンチされており、第3話の冒頭で殴られたところを気にしていました。錦木千束に言われた「したいことを選べばいい」の先に辿り着いた最初の答えが「合理性はさておきグーパンチで殴り返してやりたい」だったわけです。最高かよ。

行きは向かい合って座っていた電車も帰りは隣同士で。行きは受け取りを拒否したキャンディを帰りはちゃんと受け取って。

「スカっとしたなぁ」
「えぇ」

「リコリス・リコイル」
第3話「More haste, less speed」より

距離を縮めたこれからの2人の活躍に期待です。

このアツい展開を支えているのはキャストさんの素晴らしい演技です。キャストさんの感性がずば抜けているのか、音響監督のディレクションがしっかりしているのか、セリフの言い方ひとつひとつに拘りを感じます。先に引用したセリフにも、文字だけでは到底表現することのできない2人の感情や距離感などの情報がたっぷりと詰まっていました。そういえばキャストさん誰だっけと改めて調べてみたところ、錦木千束と井ノ上たきなを演じる安済知佳さんと若山詩音さんは「SSSS.DYNAZENON」で飛鳥川ちせと南夢芽を演じていました。なるほどなー! 言われてみると日常パートのセリフの空気感に近しいものを感じます。私は若山詩音さんの演じるちょっとめんどくさい性格の女子高生にまたしてもやられているということか……。安済知佳さんのともすればウザいギリギリのラインの演技も絶妙です。

さて、何となく井ノ上たきなの踏ん切りがついたところで、物語はどこへ向かっていくのか。電波塔事件を一人で解決した英雄と言われ、今は底抜けに明るく振舞っている錦木千束にも、悩みや葛藤があるのではないでしょうか。私の妄想の中で彼女の元相棒は死んでいます。彼女が命令に従って合理的に判断した結果、死なせてしまったのです、きっと。かつての自分に似ている井ノ上たきなが自分と同じ轍を踏まないように、また、もう二度と相棒を死なせないように、彼女は彼女のやり方で任務に当たっているのではと思っています、勝手に。今後、井ノ上たきながピンチに陥って判断を迫られる場面があるのかなーどうかなーあってくれー!

今回はメインヒロインの2人に絞って話を展開しましたが、他にも魅力的なキャラクターがたくさんいます。特に卓越しているわけでもない私の洞察力で深読みすればするほどに「リコリス・リコイル」のことが好きになっていく……。「リコリコ」という銃弾をまるで避けられる気がしません。ダイレクトヒットだよ! 今期アニメでいちばん楽しみにしています。

乗り遅れちゃったんだよなと悲しんでいるそこのアナタ! 2022年7月27日時点でABEMAならあと4日、まだ私も見ていない第4話まで無料で観られるようです。まだ間に合う! ご興味とご都合あえば是非。

余談
第3話でいちばん好きなセリフは、摸擬戦開始前の煽り合いで錦木千束がどこか楽しそうに放つ「ナンダットテメドコチュウダッゴルァ」です。目覚まし時計のボイスにしたい。下着で現れた井ノ上たきなに放つ「うおぉバカ服!」もよかったな……とにかく安済知佳さんのセリフの抑揚がよいです。何度も繰り返して再生したくなるクセになる。

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