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【毎週ショートショートnote】「カフェ」「4分33秒」

カフェでの優雅なひととき。
店内に流れるクラシックを聴きながらオリジナルブレンドを啜るこの時間が大好きだ。

いつものように楽しんでいると、突然店内の空気がガラリと変わった。音楽が消えたのだ。
いつもは気にならない客の会話が耳に入る。
「阪神のアレは38年ぶり2度目やで」
「18年前の悪夢が再来しなくてよかったわね」
「その話はあかん」
通路を挟んで隣の客は野球ファンのようだ。

こんな空気も悪くはないが、いつもの優雅な時間を取り戻したい私は、通りかかった店員に声を掛けた。
「あの、なぜ音楽を止めたんですか?」
「あぁ、これは4分33秒という無音の楽曲なんです」
「33……4?」
数字を口にした瞬間、先の野球ファンが勢いよく立ち上がった。

「なんでや、阪神関係ないやろ!」

沈黙。
しばらく本当の無音の時間が流れたのち、次の曲が始まるといつものカフェに戻った。
18年前、阪神は日本シリーズで4試合あわせて33対4の大敗を喫し、アレを逃したらしい。

(410字)


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前回のお題「イライラする」「挨拶代わり」

以下、今回の本文作成に至るまでのアイディアめも。

アイディアの羅列
カフェ:コーヒー、落ち着く場所、ビジネスマン、
4分33秒:クラシック、無音、サイレント、33-4、な阪関、

アイディアの組み合わせ
静寂の中で阪神ファンが話す話:33-4ネタ。カフェのBGMが消える。阪神ファンの会話が聞こえてくる。音楽をつけてくれと店員に頼む。これはこれで音楽なのだと答えられる。4分33秒。なんでや阪神関係ないやろ。

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