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【毎週ショートショートnote】「イライラする」「挨拶代わり」

「ご清聴ありがとうございました」
発表が終わり、会場の拍手を聞きながら胸を撫で下ろした。あとは質疑対応をするだけだ。

「それでは質問のある方は挙手を」
進行役が会場に話を振ると、初老の男がそっと手を挙げた。
「あの、素人質問で恐縮ですが……」
出た。この挨拶代わりの枕詞に騙されてはいけない。多くの場合、素人が知るわけのないマニアックな質問が飛んでくるのだ。
想像通りの鋭い質問はごもっともな指摘であったが、何とも腹立たしいものだ。
自分の持ち時間を無事に終え、他の演者の発表を聴講していると、先の男がすべての演題に対して手を挙げていることに気がついた。
「あの、素人質問で恐縮ですが……」
この失礼な男は一体何者なんだ。しかしすべての質問が的を射ており、侮れないのもまた事実。もしかしたら私が知らないだけでこの分野の権威なのだろうか。
気になり始めたら休憩時間に話しかけずにはいられなかった。

「あの、どちら様ですか。素人質問で恐縮ですが」

(410字)


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前回のお題「鳥獣戯画」「ノリ」

以下、今回の本文作成に至るまでのアイディアめも。

アイディアの羅列
イライラする:
挨拶代わり:攻撃する、口撃する、握手する、手を振る、

アイディアの組み合わせ
素人質問の話:

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