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いち視聴者が酒を飲みながら観た「M-1グランプリ」を語る2020。

毎年恒例のM-1グランプリが終わりました。優勝されたマヂカルラブリーさんおめでとうございます。その他の決勝参加者のみなさんもお疲れ様でした。家でお酒を飲みながらご機嫌に笑わせて頂きました。

公式からYouTubeにアップロードされているんですね。この類のものは無断転載が止まらないので公式で再生数回してもらった方がリターンが大きいのでしょう。せっかくなのでひとつずつ振り返ってみようかなと思った次第です。

最初に断っておきますが、私は特にお笑い専門家というわけでもなく、ただの酔っ払い視聴者のひとりです。

インディアンス

敗者復活戦からの即決勝。フリーダムトークボケをツッコミが捌きながら進行していくスタイル。ツッコミのあげ足をとるボケの腹立つ感じの塩梅が絶妙で、同時に愛おしくもあります。大小合わせて4分間に詰め込んだボケの数はいちばん多かったのではないでしょうか。ハモるところがめちゃくちゃ好みで何度か繰り返して再生しています。トップバッターでなければもう少し上位だったような気もします。面白かったです。

東京ホテイソン

淡々としたボケに独特のツッコミ。謎解きを使ったネタで謎解きのほうを真面目に考え始めてしまったために、序盤、集中を欠きました。「あ、これは考えなくてよくて勢いを楽しめばいいやつだ」と気がつけばハマれるので、都合のよい導入謎解きがあれば、より多くの人がついてきてくれたのかもしれません。「たぬき」の謎解きのツッコミが好きでした。これまで大声でツッコんでいた人が論理的にしゃべれなくなる仕掛けがたまらない。動から静へ。面白かったです。

ニューヨーク

王道のしゃべくり漫才。「このご時世舐めるなよ」というツッコミの通りで、犯罪を扱ったネタ自体がこのご時世どう捉えられるのかは好みが分かれそうでした。面白い話を3つする構成でしたが、2つ目があまりハマらず、3つ目が跳ねなかったので、盛り上がった最初の話の展開を転がしながら、4分間、使い切った方がまとまったような印象はなくもありません。「しゃべくり漫才は喫茶店で話す内容の延長線上くらいがいい」という旨の話もあり、まさにその立ち位置の漫才だったように思います。面白かったです。

見取り図

コント寄りの漫才。有名芸能人とポンコツ凄腕マネージャー。ツッコミの頭の回転の速さに感銘を受けました。ボケが噛んでもそれさえその場で活かせる技量は失敗を失敗にさせないわけで強いと思います。ボケが笑わせた後にツッコミが正しながら追加で笑いを呼び寄せるのは王道パターンのひとつで、ツッコミのワードセンスを使ってそれを実践されていました。全体の構成も綺麗で「無意識にやってしまいました」の回収は大変好みです。面白かったです。

おいでやすこが

歌ネタを勢いよくツッコんでいくスタイル。ツッコミのフレーズとしては基本的なことを言っているだけです。しかし序盤で「ツッコミが全力でブチ切れるだけで面白い」という空気をうまく作ってしまったので、あとは何を叫んでもバカ受けする入れ食い状態でした。強い。これで構成がめちゃくちゃだと煩く暴れているだけになってしまうところ、構成もそれなりに基本に忠実なので実は全体の体裁としては整っていた方だと思います。面白かったです。

マヂカルラブリー

ボケのパントマイムにツッコミを入れていくスタイル。問題作。やべぇボケにツッコむ形は先のおいでやすこがに通じるものがあり、順番としては決して恵まれていたとは思えませんが、独特の世界観で食らいつきました。めちゃくちゃ笑った一方で、漫才と言っていいものかは意見の別れるところであり、空気によっては点数が低かったと思います。今回はよい方向に転がりました。3年前に最悪の方向に転がった経緯も効いていたと思います。ネタ単独よりはそういう背景も含めた面白さと高得点であり、4分間の枠の外側も含めて戦えたのは強かったと思います。このネタの中の発明は「ナイフとフォークを斜めに置くと終わりの合図」という前振りです。この前振りのおかげでどんなに暴れ回ってもどんなにスベり散らかしても斜めに置けば強制的にまとめ上げることができるのです。最後のぐだぐだデモンのくだりでさえ斜めに置けば笑いが生まれていました。面白かったです。

オズワルド

静かな王道しゃべくり漫才。名前の母音にまつわる話。場が荒らされまくった後だったのでやりにくかっただろうなと思います。ここにきての静かなツッコミが清涼剤のようでした。「雑魚寿司」や「魔のセキュリティー」といったワードセンスの光るネタでした。この部分を磨くとどんどん面白くなる予感がします。「はたなか」が「ひちにき」ではなく「ひきにき」になった理由がわからず集中を欠きました。謎解き脳の私が悪い。後半になるとツッコミが静から動へ。振れ幅がたまりません。ツッコミのテンションについては審査員の意見が割れていましたが、好みの問題だったり、ショーレースに向いている向いていないの問題だったりすると思うので、自分たちのスタイルを貫いてほしいです。面白かったです。

アキナ

コント寄りの漫才。残念ながらというかなんというかうまくハマりませんでした。準決勝ではバカ受けしていたらしく、事前予想でも優勝候補に名が上がっていたので、決勝の空気ひとつでこうなってしまうんだなという恐ろしさの体現でもあります。アキナのネタは太い幹1本での勝負でした。同じくコント寄りだった見取図の場合はそれなりの太さの幹に枝葉を散りばめたような構成になっていたので、たとえ導入で失敗しても途中から巻き返せる目がまだあったのですが、アキナの場合は導入で観客を掴めなかった時点でもう取り返すことができませんでした。ハマらなかっただけでネタそのものは面白かったです。

錦鯉

50手前のおじさんが頑張っているスタイル。正直に言えば芸歴20年で辿り着いたのがここなのかという気がしなくもなかったですが、一方で50手前で全力でバカしている姿が羨ましくもありました。インディアンスと同じくボケの立ち振る舞いに腹が立つのに対して、インディアンスと異なりボケの数はいちばん少なかったと思います。冷静に振り返ると中身がほとんどないのに、ボケの表情と動きだけで笑えるのでずるい。面白かったです。

ウエストランド

世の中に対する不満を撒き散らすスタイル。ボケがほとんどボケずに、ツッコミがツッコんだついでに暴れ回る風変わりな形でした。漫談に近いのかしら。観客が女性であることを考えると明らかにハマりにくい導入でそのまま乗り切れなかった印象です。男性なら乗れたのかと言われるとそれでも人を選びそうで難しいところ。少なくともショーレース向きではなかったように思います。面白かったです。

決勝

コマを進めたのは、

見取り図、

マヂカルラブリー、

おいでやすこがの3組。最終的に2対3対2の接戦でマヂカルラブリーの優勝でした。

見取り図はシンプルにうまい漫才でした。喋りで優劣を決めるのであれば彼らがいちばんでしたし、披露する順番が最後であればもしかしたらと思うところもあります。来年以降も決勝に食い込んでくれそうな地力の強さはあるのでさらに磨きをかけたネタを楽しみにしています。

マヂカルラブリーは、間違いなく現場をいちばん笑わせていました。ボケが文字通り暴れ回っていただけなのに……! 空気によってはどん引きされそうな小便を撒き散らすくだりで爆笑が起きた時点で、彼らの優勝がちらつきました。完全に空気が味方していました。何となくボケに注目が集まりがちですが、ツッコミの寄り添い方と差し込み方が絶妙で、そのあたりもポイントが高いです。

おいでやすこがは、1本目のほうが面白かったです。というか初見殺しタイプなので同じ方向性では面白さが目減りしてしまうのは必然です。全力でキレ散らかすこと自体には慣れてしまったんですね。加えて、歌ネタは歌に一定時間を割かなければならないので、限られたツッコミのワードセンスで笑いを取らなければなりません。偶然にも「Go To Hell」のくだりは見取り図の「細木数子」と、「無駄な抑揚」のくだりはマヂカルラブリーの「アップダウンの激しい路線」と、それぞれ関連づけることができたので、そのあたりを活かすことができればもしかしたらと思うところもあります。本番前に他のコンビのネタ見る余裕はないか。

まとめ

というわけで、ざざっと振り返りました。ショーレースなので順位はついてしまいますが、5081組から選ばれた10組なので、決勝で最下位だからどうということはありません。十人十色でみんな面白かったです。ファイナリストとしてここからテレビなどで活躍されていくのでしょう。忙しくなられるでしょうが、合間にネタの腕を磨くことで、2021年も笑わせてくれることを楽しみにしています。

余談
漫才でいつも思うのは最後の「もうええわ」に繋げるフレーズが雑なコンビが多いなということです。昨年の王者ミルクボーイですら思いました。尻すぼみというか尻切れというか。締め方の一点で言えば、おいでやすこがの決勝が好きでした。渾身の「ジュークボックス」からの前のネタを絡めた回収がお見事。

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