見出し画像

「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd SEASON -覚醒前夜-」~第7話のタイトル回収が秀逸すぎて~

「魔法少女まどか☆マギカ」は2011年に放送されたアニメ作品です。今年10周年なんですね。あれ10年前なんですね。「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」はその派生作品で、2017年に配信されたスマートフォンアプリです。2020年から全3部構成でアニメが進行中で、今期は第2期が放送中。毎週楽しみに見ています。

本項には1期および2期第7話までと元祖「魔法少女まどか☆マギカ」」のネタバレを含みますので、内容を知りたくない方は回れ右をしていただければと思います。

――――――――――

第7話がどういう話だったかというと、敵に乗っ取られているっぽい由比鶴乃を助けようという話です。助ける方法は「相手の人格をかなり具体的にイメージしながら特殊攻撃をして乗っ取っている人格だけを引き剝がすこと。但しイメージが甘いと乗っ取られている本体もダメージを負う」でした。この説明からもじわじわと伝わってくる失敗フラグ。想像通りにフラグは回収されました。

ボーっと見ていると「まぁそんなにうまくはいかないよなぁ」で終わってしまうのですが――実際のところ私も1度見ただけではすべてを飲み込めずにそんな感じだったのですが、教えられてあることに気がついてしまったら「意味がわかると怖い話」のような気持ち悪さがじわじわとこみ上げてきました。

大丈夫よ。あの子のことを私が誰よりもよく知っている。

と自信満々の七海やちよは、いつも一生懸命で明るくて誰よりも強かった鶴乃をイメージしながら特殊攻撃を仕掛けます。しかし失敗。血塗れになりながらゾンビのような、マリオネットのような、人ではない動きで立ち上がる鶴乃は、壊れたボイスで喋り始めました。

ツルノチャンハサイキョー
ダレヨリモツヨイ
ツヨイカラヘーキ
ワタシハサイキョー

サイキョーに重ねるようにサブタイトルがどーん。

「何も知らないじゃない」

あああああ!

視聴者目線で見ている限り、やちよによる鶴乃のイメージは決してズレたものではありませんでした。「教えられた条件がそもそも間違っていた」とか「条件が不足していた」とか、様々な失敗要因を考察する余地はあったのです。サブタイトルさえなければね!

やり方がうますぎませんか。作中だけでは断定されていないのに鶴乃のセリフになり得るサブタイトルを重ねただけで可能性が収束してしまいました。サブタイトルなのでもちろん第7話の再生ボタンを押す前から視聴者には提示されていたわけですよ。最大のネタバレをしていたわけですよ。しかし、中盤でそれっぽい話がひとつ解決したことで安心し、美しい戦闘作画に酔いしれている間にそんなことはすっかり忘れて、最後の最後に「え? 最初から言ってあったよね?」と言わんばかりにポンと表示される黒背景のサブタイトル。このサブタイトルによって「条件は間違ってなかったし不足もなかったけど、ただただ、やちよが鶴乃のことをまったく理解していなかった」という可能性のひとつが、たったひとつの真実に確定してしまったのです。

ツラい。ツラすぎる。いやしかし「魔法少女まどか☆マギカ」とはそういう作品でした。改めて見返してみると序盤にやちよと深月フェリシアが口喧嘩をしているシーンがあり、つまり鶴乃相手に限らずやちよは「相手のことを理解していると思い込んでいるだけ」であることがちゃんと示されています。やちよでは鶴乃を救うことができなかったのです。じゃあ誰なら救えたのか。これがまた恐ろしくて、おそらく「あの子のことを私が誰よりもよく知っている」こと自体は慢心でも何でもなく事実で、そんなやちよでも知らない鶴乃の本心を誰も知るわけがないので、誰も鶴乃を救えないということに繋がりかねないのです。

キレーションランドへようこそ
ここはもう頑張れない人の居場所なんだよ

という発言も、乗っ取られたが故のものだと思っていましたが、みんなのために頑張り続けて疲れてしまった彼女の本心の一部なのかもしれません。無茶……しやがって……。鶴乃を救える奇跡の一手はあるのでしょうか。いやしかし「魔法少女まどか☆マギカ」にそれを期待してはいけない。

やちよが悪いのかといえばそんなことはなく、誰しも相手のことを100%理解することなんてできないので「かなり具体的」の具体的な度合いによっては「相手の人格をかなり具体的にイメージしながら特殊攻撃をして乗っ取っている人格だけを引き剝がすこと」がそもそもの無理ゲー。「何も知らないじゃない」は誰しもが人生の中で1度くらいは相手に抱いたことのある人間味のある感情のひとつなのではないでしょうか。

久しぶりに衝撃を受けた秀逸なサブタイトルとタイトル回収でした。

余談
アプリ、リリース直後は遊んでいたんですが、育成の果てしなさとスマホ容量の圧迫で削除してしまったんですよね。PCでもできるようになったらしいのでストーリー目的でもう一度触ってみてもいいかもなぁ。

この記事が参加している募集

頂いたサポートは、美味しいものを経て、私の血となり肉となり次の作品となる。