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逢田梨香子さんの「フィクション」がノンフィクションになる日が待ち遠しい。

逢田梨香子さんの2nd EP「フィクション」をベタ褒めする話です。

私事ですが、先日2月24日は私の誕生日でした。おめでとう、私。そして「フィクション」の発売日でもありました。おめでとう、逢田さん。

この「フィクション」が作品としてめちゃくちゃ面白いのです。全曲トレーラーが公開されているので聴いてみて琴線に触れるようであればぜひ手に取っていただければと思います。

いかがでしょうか。まるで4つの物語から成る短編集のようです。起承転結。喜怒哀楽。極端に色分けされた、ともすれば振り回されてしまいそうな楽曲たちを、逢田さんは見事に歌い分けています。1曲ずつ振り返ってみましょう。

1: Dream hopper

こちらはフルサイズのMVがYouTubeで公開されています。起承転結の「起」のような喜怒哀楽の「喜」のような楽曲。満ち溢れるワクワク感。TVアニメ「装甲娘戦機」のオープニング曲です。「hopper」の名の通り曲全体が跳ねていて、途中から「勢い余って別のトラックに跳んじゃったんじゃないか」と勘違いするほど曲の印象がガラリと変わります。特にサビ周りの跳ねっぷりがすごい。この独特の展開は、良く言えば面白く、悪く言えば散らかっている印象を受けるので好みは分かれそうです。私はどちらかと言えば後者で、初めて聴いたときは違和感として捉えていましたが、聴き込むうちにだんだんとクセになってきました。不思議な魅力を持っています。

2: フィクション

起承転結の「承」のような喜怒哀楽の「怒」のような……いや「怒」ではない。消去法です。逢田さんには珍しくアグレッシブでカッコイイ楽曲になっています。1stシングル「for...」もカッコイイ曲ではありましたが、さらに吹っ切れています。「for...」から哀愁を引いて妖艶を足した感じ。妖艶で強い女性のイメージは、逢田さんの名を世に知らしめた「ラブライブ!サンシャイン!!」の桜内梨子役のイメージから大きく乖離しているので、「こんな引き出しもあるのか」と心底驚きました。アップテンポでジャズテイストなこの楽曲は怪盗やスパイを扱った作品のオープニングと親和性が高いです。「黒蜥蜴星の「プリンセス・プリンシパル」劇場版のオープニングテーマよ」と言われたらそのまま信じてしまいそう。目に浮かぶぜ、スタイリッシュスパイアクション! サーチライトに追われる深紅のドレスの逢田さん。曲調と音色がたいへん私好みのため、4曲の中でいちばん気に入っています。

3: 退屈が大好き

起承転結の「転」のような喜怒哀楽の「楽」のような楽曲。2曲目の「フィクション」との落差よ。再び「こんな引き出しもあるのか」と驚かされることになります。脱力系。ポカポカ陽気な昼下がりに学校や会社を抜け出して原っぱに仰向けに寝転がって嫌なこと全部忘れて雲の行方でも眺めながらぼんやりと聴いていたいです。積み上がったタスクに飛び蹴りを。アンニュイな感じはどこか塊魂のステージBGMを彷彿とさせるところがあり、この曲を流しながら塊を転がして無慈悲な破壊活動を行っても違和感がないと思います。伝われ。4曲の中でいちばん私の頭の中を占拠している楽曲で、油断すると脳内再生が始まります。退屈が大好きが大好き。

4: 花筵

「はなむしろ」と読みます。起承転結の「結」のような喜怒哀楽の「哀」のような楽曲。まさにエンディングテーマのようでラストトラックに相応しいです。ライブのセットリストを考えるならアンコール前の最後の曲にすると収まりがよいでしょう。逢田さん自身が作詞されていることもあり、私としては4曲の中でいちばん逢田さんらしい楽曲だと思っています(逢田さんらしくないフィクションもまた逢田さん作詞なのでそれはそれですごい)。インタビュー記事によればテーマは「自分の力ではどうしようもできない別離」だそうです。逢田さんの書かれる歌詞は「何事もポジディブに捉えてガンガン進もう」と無責任に励ますよりは「苦しみも悲しみも全てを受け入れてまず一歩踏み出そう」と親身に寄り添うメッセージ性を感じることが多いです。イベントMCやラジオトークでは破天荒な言動が目立ちますが、本質は夢を見過ぎることなく現実を堅実に生きていらっしゃるんだろうなということが伺えます。聴くと心が落ち着きます。

まとめ

かつて1st アルバムのCurtain raiseが色鮮やかだという話をしました。さらに色鮮やかさの増した2nd EP「フィクション」を聴いて「ソロアーティスト逢田梨香子」の行く末が楽しみです。ところで、この難しい楽曲たちを逢田さんはライブで生で歌いきることができるのでしょうか。少しばかり心配に思う一方で、2020年12月に開催された1st LIVE TOUR 2020「Curtain raise」の素晴らし過ぎるパフォーマンスを観てしまった今、「いやいや無理でしょ」と軽々しく言うことはできなくなりました。録り直しや修正の効かない「ノンフィクション」の「フィクション」が聴けるその日が待ち遠しくてしかたありません。お衣装は深紅のドレスがいいです!

余談
私が勧めて聴いてくれた方から「これが歌えるなら芸人しなくても食べていけるでしょ」という旨のコメントをいただいてじわじわきています。2021年2月14日に開催された「オダイバ!!超次元音楽祭」だけでも「電話していると知らずに電話している人としばらく会話をしていた」「誤って男子トイレに突撃した」「部屋から破裂しそうな豆腐が出てきた」と芸人的エピソードに事欠かない逢田さん。これからもなかなか真似できない個性を遺憾なく発揮しながらアーティストとして躍進していただければと思っています。結構、息は長いんじゃないでしょうか。何をやらかしても「逢田さんなら仕方ない」とある程度ゆるされ、むしろ好感度が向上する土壌ができてしまっているのは、芸能活動を続けていく上での大きな強みです。

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1stアルバムの「Curtain raise」も面白いという話。

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