ビジネスとしてのシェア型書店
はじめに
こんにちは!
吉祥寺のシェア型書店「ブックマンション」で2001という屋号で棚主をしている者です。
9ヶ月ほど前にブックマンションでの活動の様子を描いた以下の記事を投稿しました。
計算の早い方はお分かりかと思いますが、今月7月でシェア型書店で棚主を始めて、1年が経ちました!👏
売り上げは相変わらず赤字ですが、それでもブックマンション関連の本のイベントに参加することで、お金以上の価値、機会を得られていると感じています。
とはいえ…シェア型書店も一応はビジネスですから、その金銭的な面が気になる方も多いと思います。
ということで今回はシェア型書店を「ビジネス」という側面で捉えてその特徴を考えてみたいと思います!
[基本的な語句の定義]
・シェア型書店
本屋のスペースの一部または全体を、金銭を媒介として貸し出している業態の書店のこと。書店の運営方針にもよるが、利用者は新本や中古本、自作本などの自分の好きな本を売ることができる。
CDやレコードの販売を認めているシェア型書店もある。
・ブックマンション
筆者の参加しているシェア型書店のこと。
・オーナー
シェア型書店のオーナーのこと。
・棚主
シェア型書店でスペースを借りている人のこと。
基本的な料金体系
ほとんどのシェア型書店では、利用者は入会金+月会費をオーナーに支払っています。
私の所属するブックマンションでは、入会時に1万円、月会費として毎月3850円を支払う必要があります。
入会費に関しては1万円前後のお店が多いと思いますが、月会費に関しては数千円から1万円以上まで様々です。
例えば、神保町にあるシェア型書店の「PASSAGE by ALL REVIEWS」では、棚の位置によって月会費が変動します。
ちなみに、ブックマンションでは、棚の位置による月会費の違いは設けていません。ただ、月会費が一律であるが故に、本が売れる機会を平等にするため、3ヶ月に1回の頻度で棚の配置替えを行っています。
察しの良い方はお分かりかと思いますが、シェア型書店のビジネスモデルは不動産経営に似ています。そのため、人さえ集めれば、多かれ少なかれ利益は出るのではないかと思います。(「ブックマンション」のネーミングはシェア型書店のビジネスモデルを的確に表していますね!)
事実として、先述した神保町のPASSAGE by ALL REVIEWSでは本屋としては異例の?速度で店舗展開が行われています。
シェア型書店の棚主は儲かるか?
基本的に儲かりませんwwww
一方で、シェア型書店の棚主は儲かるのでしょうか?
はい、もう見出しにあるように基本的に儲かりません!
具体的な赤字額については本記事の冒頭で紹介した「シェア型書店始めて3ヶ月経ったので経過をまとめてみた」という記事をご覧ください。
以前書いた記事では、3ヶ月やって、ひと月も黒字にならなかった(売上が3850円を超えなかった)のですが、さすがに1年間棚主をやっていると、黒字になる月がひと月くらいはありました…?かね。
まあ、棚主側は趣味としてやるべきであって、ビジネスとしてやるべきではないと思います。(毎月黒字にしてみるというチャレンジもマーケ的には面白いかもしれませんね。)
売上に繋がる要因
シェア型書店を研究されている方や棚主側で黒字にしたい!と思っている方向けに売上に繋がる要因を列挙してみたいと思います。ブックマンションにだけ当てはまるものもあると思いますが、その辺りはご容赦ください。
立地
シェア型書店自体の立地
シェア型書店内での立地
発信力
シェア型書店オーナーの発信力
シェア型書店棚主の発信力
棚へのこだわり(装飾、テーマなど)
自作の出版物を置いている
お店番の頻度
立地、発信力についてはお分かりいただけるかと思います。
棚へのこだわりというのは、書店に来たお客さんを自分の棚に惹きつけるために重要になってきます。また、その棚のテーマや並んでいる本がお客さんに刺されば、売上にも繋がります。
例えば、私の棚では「洞窟」をテーマに本を揃えています。(ニッチすぎて洞窟本は全然売れていないのですが…😅)
私はそんなに凝った装飾をしてはいないのですが、画像のようにかなり凝った装飾をされている方もいらっしゃいます。(他の面白い棚についても、前回書いた記事で紹介しています!)
また、自作の出版物を置いているというのも売上に繋がってきます。私の所属するブックマンションではオーナーさんの所有する印刷機を借りて「ZINE」と呼ばれる小冊子を作ることができるプランも存在します。
それほどまでにオーナーさんがZINEに力を入れているため、ZINEを求めて来店されるお客さんもいます。
私もそれにあやかって(?)、コンビニで印刷し製本した冊子を売っていますが、ちょこちょこ売れています。
お店番の頻度も重要になってきます。ブックマンションでは、棚主が持ち回りでお店番をしています。(シェア型書店では棚主が持ち回りでお店番をする形態のところが多い気がします。)
ブックマンションの規定では、お店のフリースペースをお店番の際に自由に使えるということになっているため、このスペースに自分の好きな本を置いたり、来店されたお客さんに売り込んだりすることで、売上を上げることができます。
事実として、私の棚に置いている洞窟本は普段ほとんど売れないのですが、お店番に入ってみると、お客さんとお話をしながら洞窟本を売り込むことが出来るので、お店番をした日はほぼ確実に1冊は洞窟本を売ることができています。
儲からないのに棚主を続ける理由
ほぼ毎月赤字なのに、何故棚主を続けるのでしょうか?
それは私がシェア型書店での活動を「趣味」として捉えているからです。
一般的にも、他のサブスクサービスに比べると値段の割には継続率が高いと思います。これはやはり他の人もお金以上の価値をシェア型書店に感じているからでしょう。
ちなみに、私が分かる範囲の数字を出しておくと、私と同時期にブックマンションに入居した方が私を含め、4人いるのですが、そのうちの3人はまだ継続されています。(辞められた方も半年くらいは継続していたと記憶しています。)
1ヶ月単位のサブスクの平均継続期間は
$$
平均継続期間 = \frac{1}{1-継続率}(継続率は一定)
$$
で求まります。(証明)
上記の式を基にすると、継続率75%のサブスクでは、平均継続期間は4ヶ月と求まりますが、ブックマンション同期の4人の平均継続期間は10.5ヶ月であるため、1ヶ月単位のサブスクの平均継続期間を大きく上回っていることが分かります。
それでは、具体的にどのような継続インセンティブがあるのでしょうか。3つほど紹介してみます。
①好きな本を売れる
個人的にはこれが一番あると思います。
周囲の人に自分の好きな本を紹介しても、手に取って読んでくれる、ましてやお金を出して買い取ってくれるということはほとんどないと思います。
しかし、シェア型書店では好きな本を紹介して手に取って読んでもらうこと、お金を出して買ってもらうことが可能です。
本好きにとっては自分の好きな本に興味を持ってもらえるというのは、とても喜ばしいことだと思います。
②本好きのコミュニティに入れる
シェア型書店では、オープンチャットやTwitterのコミュニティ機能を利用して、メンバー間の交流を図っているケースが多いです。
その中で、本に関する情報交換を行うことができます。
また、対面でのコミュニケーションが活発な書店もあります。
例えば、ブックマンションでは、定期的に読書会や食事会が開催されています。
③イベント参加がしやすい
これはブックマンション特有の理由だと思います。
ブックマンションのオーナーの中西さんはブックマンションの事業の他にもBOOK CAFE TERMINALで本に関するイベントを行ったり、全国各地でZINEに関するイベントを行うなど多角的に活動されています。
ブックマンションの繋がりでそういったイベントにも気軽に参加できます。
ちなみに、私はBOOK CAFE TERMINALで開催された「ノンフィクションの古本市」に出店したことがあります。
ブックマンションでお店番をしているときよりも、お客さんの数も多く、距離も近いので、自分の販売している本の良さをより正確に伝えながら、本を売ることが出来て楽しいです。(BOOK CAFE TERMINALでのイベントはブックマンションメンバーでなくとも参加出来ますよ!)
おわりに
今回は、シェア型書店という新しい書店の形態についてビジネス的な側面に着目して紹介してみました。
なんとなくシェア型書店の魅力を理解いただけたでしょうか?
赤字になる月がほとんどですが、「趣味」としてシェア型書店経営始めてみませんか?
ブックマンションへのご参加お待ちしております〜👋
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