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冬子の呟き


冬がさようならというのが寂しいのだ
暖かいコートを脱いで薄い衣に、薄い色にみぐるみを変えよと
花びらが告げる。

愛校心も、地域愛も、愛国心も薄い。
私は何を愛しているのだろうと、自分の感情についてふと考え込んでしまった。憎しみを薄めるために、自己的な愛を薄める必要があると思っているからだろうか。
困ったことに憎悪と愛情には、理由がない。
私は理由なく絵を描く。ということは、作品は両者の境目を溶かしてくれているのだろうか。描いていない時は、欠落した気分になるのは仕方ないことなのかもしれない。

春眠に入らず

眼をはっきりと見開いたまま

夢は見ているか

いや、もう長く見ていないような気がするのだ

空が明るく青すぎる春の日に、ヘリの音が響く

もっと地面に這いつくばって身体を接して絵を描いてみようか

あるいは

背を伸ばしてぎりぎりのところに筆で一本線を引いてみようか

チューブからゆっくりと絵の具を絞る新入生の気分で。



©松井智惠          2023年3月20日筆

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