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東京で展覧会巡り 其の一

夏休みは、作文が長いよっ。

八月の東京の展覧会駆け回り祭りは、大阪よりも涼しいことを予想していたが早朝から早くも汗がたら〜リたら〜り。
お盆の移動も終わった列車はとても空いていて、驚く。
そうだ、いつも朝一の会議に出るお勤めの人がいないんだ。

予定よりも早く東京に到着して、まずは初台から。
オペラシティーギャラリーの開館前に並ぶ。
『高田賢三 夢をかける』9月16日(月・祝)まで開催中
この前の宇野亜喜良さんの展覧会は、不調で観にいけず悔やんだので、オペラへリベンジ。

高田賢三さんは、ティーンエイジャーの頃から憧れだったファッションデザイナー。三宅一生と並んでファッション雑誌で「パリコレ」「プレタポルテ」と、遠い国にはこんなオシャレでかっこいい服を着てみんな歩いていると、信じていた。

独立店舗もまだなくて、心斎橋通りではTAMAYAやSUZUYAの紙袋がオシャレだった頃。一軒だけ、Kenzo Jungle Bookやイッセイをはじめ、ソニアリキエルなどパリコレでショーをしているデザイナーの服を少しづつ販売しているお店があった。
木製の両開きの扉で、店内の調度品もアンティークっぽい。カバンや靴もデザイナーが手がけたものしか置いていなかった。

私は、足繁くそのお店に通った。当時は私服はイズミヤで買っていたので、その店には観にいくだけ。観て触覚を確かめる。我が喪にできないことが、視覚の欲望を高めるトレーニングになっていたかもしれない。たまに試着をすれば、暗い高校生活が、いろんな色が施された贅沢な布を身に纏うことで、一瞬にして気持ちが変わって意識が変わるのだと驚いた。

今ほど美術展が沢山あったわけでもなく、絵については学校にあった全集の画集を見て、くどい肉体の盛り上がりに時々ついていけなくなっていた。キリスト教の話がわかっていなかったので、描かれている場面やものが何を象徴しているのかなど、何も考えていなかった。

美術部で使う絵の具の色とは異なる色彩の世界。
ファッション雑誌を片っ端から立ち読みしていた。人物のポーズも、表情もファッション雑誌を参考にしていたかもしれない。川久保玲の黒い圧縮ウールのカーディガンを、高校3年の時に買ってもらった。受験の時はそれをお守りがわりにずっと着ておかっぱ頭にしていた。

私にとっては、一度きりの試験。色彩構成の課題は、6色くらいだったか?色数が決まっていたが、幅は自由な縦ストライプで面を埋めるシンプルな課題だった。後から考えると、染織科の先生が出したに違いない。デッサンは鮒。これは日本画の先生かな?鮒は楽しく描けた。卵の透明パックよりずっと描く心が湧く。これも大好きなフジタを思い出しながら描いた。立体造形がとても苦手で、もちろん試験の点も悪かった。それを救ってくれたのが、この縦ストライプの色彩構成だった。この課題で、満点をもらったおかげで、私は大学へいくことができたのだった。

だから、高田賢三さんの展覧会は、お盆だし行かねばならない展覧会の一つだった。

続く

©️松井智惠                2024年8月14日筆

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