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歴史家ルトガー・ブレグマン、僧侶と語る

先日こちらのトークショーに行ってまいりました。

ベストセラー『Humankind 希望の歴史』の著者、ルトガー・ブレグマン氏が久々の来日。ダボス会議にも出席する僧侶・松本紹圭氏とのトークイベントを東京で開催。 会場: 光明寺(神谷町)
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登壇者

ルトガー・ブレグマン | Rutger Bregman

1988年生まれ。歴史学者、ノンフィクション作家。これまでに歴史、哲学、経済学に関する5冊の本を出版。著書『希望の歴史』(2020年)と『Utopia for Realists』(2017年)はいずれもニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーとなり、40カ国以上で翻訳されている。ブレグマンは、「ザ・コレスポンデント」での仕事により、権威あるヨーロッパ報道賞に2度ノミネートされている。オランダ在住。
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松本紹圭 | Shoukei Matsumoto

1979年生まれ。日本の東京神谷町・光明寺僧侶。武蔵野大学客員准教授。「未来の住職塾」塾長。「世界経済フォーラム(ダボス会議)」Young Global Leader(2013〜)及び Global Future Council Member(2019)。自らの寺は持たず、Post-religion時代における現代仏教の可能性を追求する「ひじり」的僧侶。
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運営

nl local オランダとつくる、私たちの未来 
特設ウェブサイト nllocal.net
主催: nl local 実行委員会
助成: 駐日オランダ王国大使館
協力: 文藝春秋

駐日オランダ王国大使館協力のもと、現在直面している社会問題の解決に向けてチャレンジする「nl local(エヌエル・ローカル)」これは東京都港区のSHIBAURA HOUSE、兵庫県神戸市六甲山のROKKONOMAD、福岡県うきは市のOmnicentによる共同プロジェクトになります。
https://nllocal.net

ROKONOMADO(ロコノマド)さんの無料滞在プログラム

SHIBAURA HOUSEさんは妹島和世さん建築の施設でいつも面白いプログラムをしているなとおもってました。できた当初に友人がらみ懇談会に一度だけ参加したことがあります。

ロコノマドさんは知らなかったのですがこれはいいな。クリエイターの方におすすめ。

ROKKONOMAD(ロコノマド)では、創作活動をする人たちが個室もしくはドミトリーに2〜4週間滞在して制作に専念していただくための無償滞在プログラム「ワーク・イン・レジデンス」を用意しています。
https://rokkonomad.org/programs

ルトガー・ブレグマン【TALK PICKUP】

科学、文化人類学からみて人間は本質的に競争に特化しているわけではない。善性、協力が本質。

1980年代に哲学者ピーターシンガーが提唱したThe expanding circle
まずは身近なところ(家族や友人)から円を広げる。権利、奴隷、女性、労働者問題は我々のもっている円は時代とともに大きくなってきた。円はこれからもひろがりつづけていく。その次は?

他者に優しくフレンドリーにやっていく。だがまったく知らない赤の他人にそうすることは難しくempathy(共感)思いやれる範囲には限界がある。人は自分と似通った人にはできるがそうでない人にはできにくい。ダークサイド。

学び
学びは初めの方がわかったような全能感があり、その後谷底におちるような長い期間がある。学びが多い人ほど謙虚。知ったように語っている人は山のてっぺんにいるようなもの。

両親は宣教師。キリスト教にはいい部分がいっぱいあるが動物の扱いは他の宗教のほうがいいかもね。教会での発言は素晴らしいがリスクをとっていない。

リスクを取る。
投資家のナシームニコラスは身銭を切る。文化人類学者は痛みを伴う体験を周りにシェア。本気度をしめし、儀式を体験し時には体の大事な一部を切り落とすことになったとしても。

歴史で立ち上がった人、革命を起こした人。その当時発言した人は周りの人に本当に嫌われていたが時間がたてば歴史の正しい側にたっている。

オランダ
オランダは週の労働時間が一番少ない国。だらける、怠ける→考える時間がある→クリエイティブでいられる。正直に生きるのは時に悪いことではない。他人と違うのは勇気がいる。人間の本質として仲間でいたい、嫌われるのが苦手。日本の人に宿題。週に1度は正直になって他者をイライラさせてみては?

松本紹圭【TALK PICKUP】

日本人の割合で1番多い浄土真宗
親鸞とは善と悪を考えた人。人間は善か悪かではじめなかった。私から始めた。私の本性善か悪かにフォーカス→私の中には悪人性しかない。何にもわかっていない。自分の中で判断軸そんなに信頼できるものなどない。自分のなかでわかったことなどほんの一部。わかった気になっている自分のあり様。愚かだと言える。寺は良き習慣の道場。うたがいなき心。疑うという姿勢から離れていく。

北海道の田舎の老人と「マインドフルネス瞑想」は結びつかないが、仏壇に毎朝拝むお経を唱える。それこそが日本のすさまじいマインドプラクティス。仏教とは自分自身の心身を整えるものでもあるが、9割5分先祖(Ancestor)のためのもの。まずはつながりがある人を思い、そこから生きとし生けるもの全てにむける2段階をふめる。

日本人の中で一番蔓延している宗教は努力教と我慢教これは一種の呪い。他人に迷惑をかけたくないという考えもひろがっているが、親鸞も頼らず迷惑をかけずに生きる事ができないといっている。日本は仕事仕事というわりに労働生産性が低い。その秘密は本当は働いていない。働いているふりをしている。ブルシットジョブが多い日本は頑張っているふりをするのが求められる。怠けていると言われたくないこの国は言い訳でなりたっている。

正直に生きるのがハードルが高い国。我慢してイライラして、私はこんなに我慢しているのにと周りを攻撃する人もいてややこしい。responsibilityの日本語訳は責任。常々いまいちな訳だと思っている。何かに応答できる能力(response ability)と考える方がもっと素敵。例えば道に倒れている人にかんがえずにはっと声をかける中からわいてくるようなこと。

状況を1人で超えられなければ仲間と。もし日本で難しければオランダに行くのもいいのでは。

私たちはよき祖先になれるか

こちらの本を翻訳された松本さんは、いろんな方にどうやったら私たちは良き祖先になれるのか聞いているそう。現在に生きる人にとって国境、宗教、民族を超える大事な問い。

How to be a Good Ancestor.
How can we turn a good Ancestor.

Stay in the Presence (今ここにあれ) 
マーク・ベニオフ|Marc Russell Benioff セールフォースCEO

未来の人により多くの選択肢を残す事。
未来の事は未来の人が決めたらいい。
オードーリータン|Audrey Tan

Q&Aの鋭い質問が面白かった

A:Rutger Bregman(R) / 松本紹圭(松)

Q:世界規模に円をひろげるのには気にしなくてはいけない事が多すぎる。情報過多にさらされてempathy(共感)も感じられない。思いやれない。

A:(R)バードランドラッセル「数字の羅列からその後ろにある悲しみをよみとる」それが市民性のある心持ち。文明的なあり方。500万人の子供が死ぬという数字ではなくその背後にある他者の気持ちを理解する事が他人を理解すること。他者に寄り添って自分も苦しむのは解決にいたらない。Compassion(思いやり・慈悲)は理解するけど一緒に考えていこうということ。

(松)共感はほどほどに。「本当の本当に他者にはなれない。」とどこかで思っておく。誰かの痛みを我が痛みと感じるのは人間の性質だがそこに信頼を置きすぎない。本当は別でどこまでいってもわからない。

サークルを広げていくというプラクティスはイメージでありこれはあくまでバーチャルにすぎない。頭の中であると理解しておく。一人一人のライフヒストリーを知る事なんてできない。SNSで何万人と繋がっていてもダンバー数では人間は150人しか認識できないという。本当に自分の一部と感じられる円。そこからひろげられるかやってみる。限界があるが自分の限界を知ることが大事。バーチャルに溺れてしまわないように。

Q:ジャーナリズムについて皮肉的ですね。悪いジャーナリズムもあるがリスクをとっている人もいる。なぜそんなに厳しいのですか?

A:(R)ニュースとジャーナリズムは違う。その日起きた事を垂れ流しその多くがネガティブなものなのがニュースであり有害。ジャーナリズムは世界のあり方を理解するためのもの。管理しているシステムを本当に調査してくれる立場の人達は重要。ジャーナリストはあまり批判される立場にないから言ってやろうとも思ったんです。

Q:前向き(optimist)にとらえているのは何なのか

A:(R)Hope希望を持ちそれに向かってアクションをおこしていく。日本語だとナイーブな責任を持たない。なんとかなるさという態度、楽観的でアクションをとらない言葉として捉えられるが、アクションを起こした人が歴史を変えてきた。

Q:日本では人と違う指摘は簡単に批判になりやすい。建設的に希望を持つために心掛けていることはありますか

A:(R)毎日歴史の本を読む。歴史をみていくと今ある状態が必然ではないと歴史が教えてくれる。他の可能性もあった。過去は他の国。ひょっとすると今の状態はそんなに悪くないのかも。誰かが変えてきた結果として今がある=物事は変えられる。日本でシルバーデモクラシーという状態にあるのはわかるが歴史が物事がかわると証明している。

A:(松)未来のために多くのものの見方、違った事に触れるのが大事。コミュニティは限られてしまうのでだからこそ沢山の依存先を持つ。宗教が反省しなくてはいけないのは唯一の依存先であろうとするところだが、その必要はない。沢山の依存先の一つになれれば嬉しい。コミュニティを大事にしながらひらかれていくと歴史の転換、選択肢どこかにHopeがある。

Q:まず自分をみつめなおすというが、自分が悪いという判断材料はどこで決めるのか。人間性とは人とのかかわりをもって良さ、悪さがわかっていくものではないのか?

A:(松)まずジャッジではなく私を見る事からはじめる。判断する軸がどこにあるか。DNA、関わり、教育、人間関係、今の自分を形作るオリジナルはあるのだろうか。深く私をみつめると世界にとけていく。自分の悪をみつめるわからなさにひらかれていく。

A:(R)自己を見つめるのは親や環境、他者に当てこむ時には判断材料は外的な要因。自由意志は存在しないという本を書く友人がいるが自分自身としては自分の意志で決めていると信じたいので話が合わない。

個人的まとめ

誰にも言われたわけでもないのに長い議事録をつくったような。でも忘れたくないとてもよいお話だったので。

何年も前まではスピリチュアルを大事にすることで自分と他者に優しくという考えがとても好きだったんですが、時に違和感を感じる事も増え、普通の学びしないとやばくないか何かないかと他に目をむけるようになった。

哲学や文化人類学は面白いが理解するのにはとても高い長い道筋がある。でも少しずつでもなにか生きていくヒントがあればよいなと。哲学者の名前や考えを理解していれば固有名詞でどの国の人とも理解し合えるので学ぶ必要は感じました。

よき祖先。
子供がいない自分のような人は次の未来へのつながりを感じづらく貢献ができないような気持になるが、広い視野でいれば私も誰かの祖先になれるし、誰かの祖先に影響を与えられる存在にもなれるかもね。と思うと気持ちがまた一つ軽くなった。

普段は軽い話くだらない話で笑いふわふわ楽しく生きていきたいが、個人としてはこういう事を考える時間も大事にしていきたい。

身近な人間だけに学びのヒントを得ようとすると醜悪な事になり、視野もせまいものになるような気がする。だから理解するのが難しい事でも興味が湧いたら足を運ぼうと思う。

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