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あかるさとくらさ

18
どっちもあることをめざして作った詩
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2021年7月の記事一覧

上回る紺青

上回る紺青

さあ 天のほうへ
光をたくわえる朝のつゆたち
浴槽に近づいてはならない
きっとよわさが走りまわる
あつまってまとまる影
くぼみ 鬱血したえくぼ
絆のはしをつまむ
愛にかんしては口をつぐみ 微笑する
きみの蕾
そのいやらしく匂いたつ中身
ガラスをよごす気泡
雲のふわふわ
洗いたてのうぶ毛をむしる
忘れる 憂いに沿ってすすむ
わかっているのか
わかっていないのか
まなざしがぬれている
すべてがやさしく

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存在は分裂しうるか

存在は分裂しうるか

生命の山なす粒子、
そのための賭金、
それは毎日、毎日、
他の誰かの感受性を
奪いとろうとすること。
雨に濡れた土が放つ匂い。
葉の擦れる硬質な音、
その向こうに見え隠れする
きらめきをいつも胸元に置いておく。
それはけっして抜けない背骨。
だが、瞳の色は一様でなく、
血の密度は気分に基づく。
懐胎するのはふたりの人間が
肉の共鳴にとりさらわれたときだ。

吸い込む空虚、黄金色。
歪んでゆく今ここ

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クリア・アポリア

クリア・アポリア

重荷を引き摺る若者は叫ぶ。
美酒のための労働と同じぐらい
必要なことがある!それは、
生きる意味のための闘争!
重荷に繋がれた紐がちぎれる。

友情の終わり。
薬をすり潰して混ぜる。
エゴの動脈は須く膨らみ、
網膜を光が炸裂する。
もはやまともに眠れない。

考えること。考えて、
新しい問いを探し出すこと。
迷走者だけが世界の切り口を舐める。
そして、軽快なステップを踏む。

晦渋な歌を聴いた。

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ねじれ

ねじれ

下から光が降り注ぐ。
そのはじまりは好奇心の甘さ。
タブノキの美徳を持つ人々は
耐えがたい高温の中で逆上を抑えている。

余りは数々の熾烈を超えた。
木陰からは恐ろしい欲動がはみ出している。
破裂するか萎え萎むかを選びうる、
風船が不動であることを明証してみせよ。

所有は受難に他ならない。
しかし、喪失は運動を意味している。
バラの花は告示した、
我々の喜びが深刻であることを。

ポットの中身は

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皇帝になれ

皇帝になれ

言葉がない
黄色いバンが走りだす
ただ存在するだけでエネルギーがなくなる
ゆえに子供たちは
自転するものに頬を擦る
腰をくねらせたドーム型の器
なにかを溢すこともできない
駱駝が駆ける
すると穴に落ちる
海の沈黙を噛み切る
貫くのは風と光の中間体なのだが
それが見えないのはなぜだろうか
ついぞ困ったことのない壁を前にして
腹の内側を貶んではならない
受難せよ、だが旅をするな
風景がいやらしい音色の

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現代の病

現代の病

どうやら認めざるをえない瞞着が
海の一塊にはりついている
波打つほどに蔦は絡まるので
はばたくのを一度やめなくてはならない
黒い光がなにものもうつしだせずに
錆びの島をぐるぐる回っている

苔むした貝殻が都市をものがたる
そこかしこでぎょろぎょろしている瞼が
雲みたいにちりぢりになって 蒼白く
無関係を決め込んだ日の泡立ち

血みどろと養殖しかない海辺の
どの灯台を愛しうるだろう
枯れ木の歌は悲し

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絵空

絵空

霧のような孤独は
網に捕らえられ波を奪われる
どこからが自分かがわからない
朝のようにぶつかる左右の眼球が
青い空を象徴してゆく

水の切れ目
呼吸はなく白と藍の線を
分割する安らぎの音がする
愛を信仰する人たちの村落
神聖がなく、狂気もまたない

星々は嘘を囁く
永遠を誓い、時代を遮りつづける
蓄えが後ろめたさのうちでしぼむ
膨らみは夢のかたちをして
嵐を静かに待つ

空間の低さに呼応して
我々

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