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ここ一週間の日記(2020.3.28~4.5)

3月28日。

あっけらかんと生きてるようでめちゃくちゃ悩んでるし迷っている。


先週まではライブハウスにお客さんはまだ来ていたし、自分たちの大事な場所を守らなければという使命感を持ってライブを続けてきた。しかし、この一週間で新型コロナによる世界の流れはより深刻なものになっている。感染爆発によりロックダウンされたイタリアやアメリカの現状をSNSで知ってからはいよいよ外出するのも怖くなってきた。こんなウォーキングデッドみたいなディストピア…ほんの数ヶ月前まで誰も想像できなかった世界だ。

ゾンビ映画をたくさん見ている人なら分かると思うが、ゾンビを舐めてるヤツは最初に死ぬし、怖がりすぎてパニクってるヤツもすぐ死ぬ。最後まで生き残れるのは冷静に状況判断できるヤツ、守りたいものがあるヤツ、そしてあきらめないヤツのはずだが、これは映画の話ではない。

これから全世界はサバイバルに突入する、そんな合図の鐘が頭の中でカーンと鳴った。

今日は予定していたお花見ライブ「小さな音楽会」。しかし、心の奥から「ほんとうに今イベントを予定通り開催することは正しいのか?」という声が常に問いかけてくる。そもそもは数週間前に政府が発表したお花見自粛に対し反射的におれの中の天邪鬼が騒いで思いついた企画だった。しかし数週間前とはもうあきらかに状況が違う。

ギリギリまで中止すべきか悩んだが、その小さな宴会を心待ちにしてくれてる友達の顔が浮かび、心晴れぬまま当日を迎えた。雨により会場は公園の桜の木の下から、ザ・ガーデナーズ楢崎くん家のガレージへ変更した。

ガレージのシャッター開けっぱなしで換気もバッチリ、アルコール消毒液も万全。少しでも不安要素は拭い去りたい。楢﨑くんはずいぶん張り切って数日前からこの宴会のために料理を仕込んでくれており、牛すじ煮込み、おでん、山菜のナムル、そしてたくさんのお酒を並べてみんなをもてなしてくれた。

ひとりひとりにアルコール消毒してはアルコールで乾杯!やっぱり友達の顔を見るとホッとする。ボギー家族の演奏開始。子供たちは開放感いっぱいだし、とんでもなく盛り上がった。心の中で「これからしばらくはお客さんの前でライブやれなくなるだろう」という気持ちもあり、だからこそ、たまらなく愛おしいこの瞬間を噛みしめる。

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いつもライブ中は「このまま死んだって構わない!」と思えるほど最高の気分だが、コロナのせいで「家族や仲間を死なせたくない」という気持ちがどうしても伴ってしまうのが辛い。そうなのだ。守りたいものがあるからこそ迷うのだ。こんな気持ちのままライブをやるのは、やっぱり違う。

ゆれる精神状態で飲む酒はたちまち血中を巡り、この日のおれをハチャメチャに酔わせてしまった。ライブ終わってからの記憶がない。ネジがブッ飛んだように陽気にしゃべり倒し、飲み続けたらしい。

そのままガレージで寝潰れてしまったようだ。夜明けに寒さで目を覚ます。


3月29日。

青空と桜のコントラストが眩しい春の小道をゾンビみたいにふらふら歩いて朝帰り。家にたどり着くと昨夜のおれの泥酔ぶりにベイビー(奥さん)も子供たちも呆れ果てていた。あんなひどい酔い方は久しぶりかも…ごめんなさい。

落ち着いて、昨日決めたことをはじめる。まずは一週間後に控えていたフェス「アワハウス」の各関係者に中止延期を連絡。つらい決断ではあったけど、みんな「中止してくれてホッとした」と言ってくれたので心がふっと軽くなった。

夕方にエンジニアのヤマノウチくんを家に呼んで、ボギー家族の自宅レコーディング。部屋を毛布で囲い、マイクを立てて、即席レコーディングスタジオの完成。音楽に集中するのはとても楽しい。

ほぼみんなワンテイクでベストパフォーマンスをキメてくれた。とくに今ちゃんのメインボーカルは最高のテイクが録れたので大収穫。今ちゃんはまだ6歳だが、すぐれたソウルシンガーだと思う。おれだけミス連発で何十テイクもギター録りなおしてしまい恥ずかしい。

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録音してくれたヤマノウチくんありがとう。めっちゃ良いの録れたので早く発表したいけど、これは単発のお仕事レコーディング。そのうちきっとテレビで流れると思う。


3月30日。

ここんとこずっと悩んで迷ってきたその答えはすでに頭の中にあって、でも未練がましい自分もいた。要するにお金の話しだ。4月のライブ18本すべてをキャンセルしてしまえば当然わが家の収入は無くなる。だけど、大切なもの、守らなきゃならないものが何かを考えれば悩む必要なんてホントはないのだ。

朝起きて布団のなかで「4月はすべてキャンセルしよう」そう決断できたことで心のモヤが晴れた。

深呼吸して、そのまま全国ツアーのお店や主催者さんたちに延期の連絡をすると、みんな温かく励ましてくれてひとりでちょっと泣いた。その直後にテレビから流れる志村けんの悲報…うそだろ…。

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いまだ心のどこかで遠くに気がしていたコロナの怖さが志村けんを通していきなり我々の目の前にドスンと姿をあらわし牙を剥いたようだ。このショックはでかい、でかすぎて気持ちが追いつかない。心底悲しいが、悲しみより先に恐怖がある。

やはり、今朝の決断で間違ってはいなかったんだろう。

夕方、ブードゥーラウンジにも連絡して「ラウンジサウンズ」中止を伝え、出演者たちにも連絡を回す。15年間、何があっても休まずやり続けたイベントだ。

今日のことは絶対に忘れない。

その夜も志村けんのことを考えて眠れなかった。ベイビーも同じみたいで、深夜にチキンラーメンを作ってふたりで半分こして食べた。深夜のインスタントラーメンは気絶しそうなほどうまい。禁断の味だ。今夜は特別だと自分に言い聞かせる。こんなこと毎晩やってたらすぐ太るからね。

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夜中に円盤田口さんから「ボギーどうしてる?」ってメールがきてそれから長いやりとりを交わし、むくむくと元気がでる。そのあと深夜4時にセガールさんから電話、笑い話で元気がでる。ふたりとも伝えかたは違えど考えていることは自分とほぼ同じだった。電話でもメールでも人と触れることが心を保つ最良の手段だと思う。

家族やパートナーがいる人はまだ日常に会話があるから安心だけど、ひとりでSNSやテレビばっかり見てたらぜったい狂うよこれ。ネジが飛んで心のバランスとれなくなっちゃう。そんなときは友達や家族に電話しよう、メールや手紙もいいかも。それだけできっと心が落ち着くはず。

おれにくれてもいいからさ。暇なんで、話し相手にはいつでもなるよ。


3月31日。

久しぶりに元気な朝勃ちで目が覚めた。励ましてくれてありがとうちんこ!

志村けんの一件から人の心はあきらかに次のフェーズに突入している。テレビやSNSは蜂の巣をつついたようなヒステリックさ。もはや完全に狂ってるので必要な情報ひろうことと娯楽以外はなるべく見ないほうがいい。こっちまでおかしくなっちゃう。

ちょっと息抜きに近所の鹿子さん家に行き縁側で馬鹿話。ここにはとても書けないような不謹慎な話で盛り上がる。こんなときこそ大事だな、不謹慎な笑いでスカッとするのは。

しかし鹿子さんもホントはつらいだろう。3年半がかりで書き上げた本「ブードゥーラウンジ」がやっと発売されたばかりだというのに、日本中のライブハウスがこんな事態に巻き込まれるなんて…。でも考えようによってはライブハウスに行けないこの時期にこそ「ブードゥーラウンジ」は“読むライブハウス”として必要なんじゃないだろうか?

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おれたちはどこまでもめげないし、あきらめない。元々がハミ出し者だから。

夜は奥村靖幸バンドのリハ。きちんと殺菌されたスタジオでメンバー全員マスクしたまま2時間の練習。人と会い音を出すことが嬉しかった。しばらくリハもないのでこのまま飲みに行きたい気持ちだったがグッと堪えて帰宅。家で缶ビールとあたりめ。晩酌が増えた。


4月1日。

4月のスケジュール帳にバツ印を書き込むともう笑いが出るほどなんもない。今日はエイプリルフールだけど嘘じゃなく全て白紙だ。

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本格的に巣ごもり生活がはじまり、わが家の大事な収入源はヨコチン通販とモンドのネット似顔絵屋さんとなる。モンドは本当に孝行息子だな。頬ずりしてあげたいくらいだが、嫌がるに決まってるのでとりあえず毎日「モンドエライ!」と褒め称えてる。モンドもまんざらでもない笑みを浮かべ、黙々と絵を描いてくれている。

郵便局に描いた絵を出しに行ったらカシナポK(悪魔)とばったり。しばらく立ち話。たったそれだけのことだけど、嬉しかったなぁ。ちなみに悪魔もコロナは怖いらしい。

夜は志村けんの追悼特番を家族で見た。献花台のようなスタジオにバカ殿や変なおじさんの大きなパネルが飾られたセットがからすでにコントみたいで追悼なのにどうしても笑えてしまう。

子供の頃に何度も笑い殺されると思ったのがドリフの「威勢のいい銭湯」コントで、45歳になってもやっぱり笑い死にするほど面白い。もう志村もいかりやもこの世からいなくなったけど、「威勢のいい銭湯」だけで一生笑える自信はある。

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番組の最後に加藤茶が弔辞を。「俺たちももうすぐそっち行くからよ、5人が全員集合したらそっちのお客さんを大爆笑させようぜ」って、さすがに込み上げてくるものがある。ずっと黙ってた高木ブーが最後の最後に「志村は死なないの」って言ったのも目頭つーんとなった。

志村けん(尊敬と親しみを込めてあえて呼び捨て)、本当にお世話になりました。ありがとうございました。私も、あなたの数多くの作品の一つです。


4月2日。

しんぶん赤旗にコロナによる福岡市のライブハウスへの影響について先日受けた取材が掲載される。ライブハウスやミュージシャンの心配してくれるのは共産党くらいだなぁ。相変わらず安倍政権はバカな政策しか打ち出せていない。昨日発表された各家庭にマスク2枚はさすがに呆れ果てたが、SNSではマスク2枚ネタの大喜利が盛り上がりを見せていた。

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あー、早く選挙はじまらないかなぁ。もうウンザリだよ毎日あの顔見るの。


気分転換に家族で近所の公園にいき、桜の木の下でお弁当を食べた。去年の今頃は友達いっぱい集めてここで大宴会したけど、今年は家族だけでひっそりお花見だ。お日様が気持ちいい。

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4月3日。

近々オンライン飲み会「居酒屋ボギー」をやりたいと思ってネットで調べまくる。そういう知識が無さすぎて頭ショートしそうになりウキャー!!!と飲み屋に飛び出して行きたい衝動を全力で抑える。行きつけの居酒屋やバーたち、大丈夫かなぁ。

昼すぎ、folk enough井上さんから「あんた元気しとーね?」と久しぶりに電話。そろそろかかってきそうな予感してたから笑える。小屋敷さんやコヤナギシンジさんからもメールが来てやりとりをした。

酒飲みばかりだ。酒飲みはきまって寂しがり屋だ。

4月4日。

ヨコチンレーベルボギー名義でYouTubeチャンネルを作る。以前から「ボギーはYouTuberになったら稼げるよ!」って何度か言われたけど、おれ自身がYouTuber苦手だからまるでその気にならんかった。でも今までと違うドアも開かなきゃね。とりあえず今ちゃんと公園でSASUKEごっこやった時の動画をアップしてみたらたくさん反応あり、なんか楽しいかも。1000人越えたらスーパーチャットとか出来るらしいのでみなさんチャンネル登録お願いします。

ヨコチンレーベルボギーYouTubeチャンネル


昼すぎ、やおやーまんの八百屋で野菜とフルーツを買う。ホントは明日の「アワハウス」に出店してもらうはずだったんだけど延期なので仕方ない。立ち話しで頑張ろうと励まし合いつつ、芋とお花をおまけで貰う。人情人情!できるだけ個人商店で買いたい。

その夜は、スパイスに飢えてたのでカレーを作った。家族はスパイスカレー苦手なので自分が食べるためだけに作る。山ほどの玉ねぎを飴色になるまで煮詰め、8種類ほどのスパイスで仕上げるじっくり時間をかけたカレー。美味しいのは美味しいんだけど、やはりいちばん最初に作ったカレーの味を越えれないのはなぜだろう。半分食べたあと生卵をおとしてかき混ぜたら劇的に美味くなった。カレーは実験!カレーは宅録!

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今夜も志村けんがテレビで流れる。追悼特番ではあんな大笑いだったのに「志村どうぶつ園」で泣いてしまった。最後のパン君が志村けんを追いかけるシーンとか思い出してもまだ泣ける。

あー、ホントに死んじゃったんだなー、志村。

明日はアンベラシュウからボギー家族の無観客配信ライブなので、その準備に励む。やっぱりライブの準備してる時間はわくわくする。


4月5日。

ボギー家族の無観客配信ライブをアンベラシュウでやることに決めたのは2日前。ホントなら今日はここでヨコチンレーベル企画の初フェス「アワハウス」を開催しているはずだったのだ。

早めに会場入りし配信の準備を進めていたら、間違えてスズタク(鈴木拓也)が見にきた。いまだ実家の固定電話しか連絡手段がないスズタク、イベントが中止になったことを知らなかったのだ。可哀想だけど追い返した(笑)。でもおかげでめっちゃ笑えたよ、ありがとう!

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その夜「ボギー家族のアワハウス」配信スタート。オープニングは天国へ届けという思いを込めて志村けんの「だいじょぶだぁ~」から歌い始め、そのまま約一時間半の配信ライブは終了。たくさんの人たちが見てくれたようだ。

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想いは山ほどあるけど、おれは音楽家だから、できれば言葉より音楽で伝えたい。今だからやれるライブがやれたとは思う。これから状況が日々変われども、みんなの心に届くことをやりたい。

初めてで不慣れなもので途中止まったり音質が良くなかったり反省点も多かったけど、そこはこれから改善していこう。手伝ってくれたアンベラシュウの日高さんも、洋平もありがとう!!

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この夜のライブはアーカイブで見れます。

ボギー家族ライブ配信アーカイブ(後半)

ボギー家族のヨコチン通販テレショップ


コロナが収束してライブ活動ができるようになるまで、わが家の主な収入源はヨコチンレーベル通販とモンドの似顔絵屋さんなので、新しいグッズもなにか考えよう!時間なら山ほどあるのだし。曲を作ったり、新しく本を書こうと思ってる。「ライブハウスのはなし」という本だ。

【ボギー家族の通販商品コーナー】


みんなも心と体の健康にはくれぐれも気をつけて、もちろん生きていくためにお金のこと、お仕事のことは大事だけど、アイデアを出し合いとにかく楽しみを見つけながら生きよう!忙しくてほったらかしてた本や映画を見たり、美しい音楽を聴こう!おいしい料理を作って食べよう!いっぱい睡眠を取ろう!テレビやSNSには少しだけ距離を置いて、なにか新しいことを初めてみよう!

そして、遅れた春がやってきたら、そのときはライブハウスで思いっきり笑って騒いで祝杯をあげよう!!!


ヨコチンレーベルHP


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