【詩】5月の共鳴
梅雨の走りの雨が止み
僕は傘を畳んで家路を急ぐ
一刻も早く黒雲を払いのけようというのか風が騒ぎ
大きく張り出した木々の枝が震える
道には大きな水たまりができていて
靴を濡らしたくない僕は 途方に暮れる
すうっと傍らを通り抜けた風が木の葉から落としたのは
一粒の水滴
ぶわわわ
雲と風が押し合う空を映していた水たまりは
水滴を受け止めた個所を中心に 揺れる 揺れる
それは幾重にも重なる円を描いて 広がる
ぴちょん
肌にまとわりつくような湿った空気は
水滴が落ちた箇所を中心に 震える 震える
それは幾重にも重なる球を描いて 広がる
円が 球が 広がり 薄れ 消えた後
水たまりに映る空は 先ほどまでより明るくなり
道を通り抜ける風は 先ほどまでより乾いている
僕は 水たまりの空を壊さぬよう 注意深く歩いて
ゆっくりと家路を楽しむ
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