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やかたで暮らせば;220202_旧正月に入り、新月。

週に3日、会社づとめのわたくし。
リモート稼働日だった。
わたしの会社は8時50分が始業、毎日朝礼がある。リモートの人もオンラインでつないで参加することになっている。

6時半に目覚ましがなり(やっぱり、少し伸びた前髪をどうするかきく前に止めちゃう)、7時には起きていた。
わたくし的におせんたくデーだったので、まずは洗濯機を回す。

それから、月に一度の小型金属ごみ、月に二度の雑がみダンボール回収の日ということで、やかた内にためられていたダンボールをいくつかに分けて同じ大きさに揃えてビニール紐で縛る。
雑がみは、米袋も捨てたかった時にそれでチラシたちをくるんで出したら回収してもらえなかったので一度山を解き、米袋は一般ごみに移して、チラシだけで再び十字に縛る。

作業をしていたら、他の住人がきてくれた。縛るのはほぼ終わってたから一緒に出しに行く。
資源ごみは、どのごみ回収拠点でも回収してくれるわけじゃなくって限られているので注意が必要だということを前回知った。暗黙知が多い京都市のルール。でも京都が特別どうってわけでもなく、くらしって暗黙知ばっかりだ。

帰ってきて、朝ごはんをつくろうかと思ったらキッチンをほかの人が使っていた。するとタイミングよく洗濯が終わったメロディが聞こえてきたから、先に洗い物をほした。
これでだいたい8時20分。
あと30分。zoomにつなぐ時間を加味しても、朝ごはんを食べるには十分の時間がある。

なのに、なんか気が乗らない。

ひとまず白湯を飲もう、落ち着こう。
そう思って、湯沸かしポットからいくらかのお湯をマグに注ぎ、両手で持って暖を取りキッチンのイスに座る。窓にもたれ掛かりながら、庭を眺める。特にどこか一点に焦点が合うわけでもなく、朝日が差し込む庭を、庭全体としてぼんやり捉えていた。

「いってきます」と聞こえたので振り返って「いってらっしゃい」と答え、見送る。ふたたび庭に視線を落とす。
すると、また足音。
そちらをまた見やると、さっき見送った住人が戻って近づいてきて、わたしに言った。
「なんか、ソワソワしてる?昨日から今日にかけて、新月なんだって。だからそうなる人も多いみたいだよ。」

ああ、そうなんだ。

たったそれだけのことなんだけど胸のあたりで「ストン」と落ちるものがあった。ようやく、白湯が身体の内側を流れた。

8時50分、わたしは無事に画面に向かっていた。
朝礼の前のラジオ体操にも間に合った。
会社側のネットが調子悪いみたいで音楽が途切れ途切れだったけど、脳内で自動補完され、身体は勝手に動く。いつも同じ箇所で背中からバリバリと音が出る。挨拶を済ませ、会社の一日がはじまる。

やっぱり自宅での作業は捗るというもので。
否、会社の外…リモートでの作業は捗るというのが正しいのかもしれない。

『集中』モードに入るまでの阻害要因がやっぱり会社は多いのだ。
阻害、というと絶対悪に聞こえるがそうではなく、どうしても耳から目から、さまざまな情報が入ってきて気を張ってしまうし、場合によっては自ら声をかけてしまう。
それによって偶発的にアイデアが生まれたり、もっと単純な話、互いのことをさらり知れたり…同じ空間に身をおいているからこそのメリットって本当に大きいと思う。

ただ、ひとり『集中』モード…いわばゾーンに入って、黙々と作業を進めたり、アイデアを整理、洗練するには向いていない。
環境をがらりと変える方がわたしにはあっている。

というわけで午前中はあっという間に終わった。

やかたで、といっても自室ではなく2階共用部、カフェスペースと呼ばれているところ(この呼び方も個人的にしっくり来ていないんだけど、とりあえずいまの適当なのはこれな気がするのでこう呼ぶ)で仕事していたからかもしれない。
あそこはカウンターテーブルにイススタイルだから途中で寝転がってしまうこともなく、集中しやすい環境なのである。
おかげさまで、朝になって「時間ある?」とミーティングが発生し資料作成を依頼されたけれど、まさしくゾーンに入って取り掛かることができて、午前中じゅうに送った。

お昼をとろうとキッチンに降りると、おなかを空かせた男子住人が昼食を準備しているところだった。見れば、お昼から肉巻き野菜なんぞ作っているではないか。わたしは、数日前に食べたくて仕方なくて衝動的に買ったはずなのにタイミングを逸していた、ゆでるだけのきつねうどんセットを取り出す。
ようやく食べられるのに、火を通し始めた肉巻き野菜から発せられるぶたにくの匂いにうっとりしてしまう自分がいる。

数分後。
てりやき系で味付けされた肉巻き野菜を頬張る住人に、わたしのきつねうどんと一部交換しないか提案するも、全くその余地はないと言わんばかりに即答却下された。
「昨日どうしてもきつねうどん食べたくなって丸亀で食べたんですよ。たぶん冷蔵庫を開けるたびにそのきつねうどんセットを見てたからです。サブリミナルですよ、サブリミナル。」

とっとと食べておけばよかった。


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