つんどくの夜
ひとむかしまえだから、10年前のことです。
我が家に赤ん坊がやってきました。40歳にしてはじめての子育て。どうしてよいかわからないままに、毎日絵本をよみつづけました。
そのおちびさんが2歳になると、しろいくまさんのぬいぐるみをひざにおいて、絵本を読んでやるようになりました。字も読めないはずなのに、一字一句間違うことなく、読んでいるのです。自分が読んでもらった物語をすべて覚えていたのですね。こどものすばらしさにそのときこころから感動をおぼえました。
4歳の時にねむりながら読んでいて、顔におとしてしまった時の傷は、もうほとんどわからなくなりました。あのときはごめんね。
いつになっても、毎夜、絵本を5冊ほどかかえて、寝床につきます。
2年生くらいまで、ほぼ毎日5冊ほどの絵本をよみながら眠りました。いまおもいかえすと、ほんとうに幸せな時間だったと感じます。
いつのころからか、絵本を卒業し、自分の好きな本を枕元に積みあげておくようになりました。お父さんの分も、お母さんの分も、枕元にうずたかくつまれています。「読みたい本がある」という幸せにどっぷり浸っています。
絵本をよみつづけている間は、自分の読書はできていませんでした。それでも、来る日もくる日も絵本をよみつづけていると、その世界のなかに入り込み、空想の旅を楽しむことができることに気がつきました。こどもと一緒に夢の中で旅ができていたのですね。
いま、自分の読書の時間をとりもどしました。絵本をよみつづけたあとにおとずれた貴重な時間。むかしと読み方がかわっていることにも気がつきました。よみながら絵が目のまえに現れる感じとでもいいましょうか。ことばとイメージがここちよく音楽をかなでるように、言葉をよんでいきます。
あきの夜長にいまいちど。本を読む幸せをかみしめています。
言葉の世界と、ことばの宇宙。ああ、なんて素敵な夜でしょう。
あすもいいことがありますように。 おやすみなさい。
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